SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 太田好治Photo by 太田好治

●セットリスト
1.Death Disco
2.Witch
3.眠り姫
4.Monsoon Night
5.ドッペルゲンガー
6.Goodbye
7.Food
8.Mr.Heartache
9.illusion(アコースティック)
10.スターゲイザー
11.LOVE SONG
12.Missing
13.蜜の月
14.Blue Flower
15.エデン
16.MAGIC
17.スターライトパレード
(アンコール)
EN1.Dragon Night
EN2.銀河街の悪夢
EN3.すべてが壊れた夜に


SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト
アナログテレビ風の四角形のディスプレイがたくさん並んだメインステージ。そこから始まる花道はアリーナエリアの中央付近まで伸びていて、その先端にはセンターステージがある。センターステージを囲うのは上下に動く透過型LEDで、曲によってはそこに映像演出やメンバーの姿が投影されていた。――つまり、ある時はアリーナの中にひとつの街を生みだし、ある時はステージに機関車や巨大樹を出現させた彼らにしてはシンプルな作りのステージだったということ。約4年ぶりのフルアルバム『Eye』、『Lip』のリリースに伴うSEKAI NO OWARIの全国ツアー「The Colors」。シンプルなステージを通して彼らが伝えたのは、時には矛盾を孕む人間の感情の難しさと、だからこその愛おしさだった。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 立脇卓Photo by 立脇卓
SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト

定刻になると、アリーナエリア中央付近にあるセンターステージにメンバーが登場(というかいつの間にかそこにいた)。Nakajin(G)/Saori(Piano)/Fukase(Vo・G)/DJ LOVE(DJ)が横一列に並び、DJ LOVEがドラムを鳴らすという布陣で届けた1曲目は“Death Disco”だった。映像オフ状態のLEDに囲まれたステージはまるで檻みたいで、その柵にしがみついて歌うFukaseは囚われの身のよう。彼の歌うフレーズはそれぞれ鋭い刃となり、こちらへ迫ってくるようだ。そしてアナログテレビの中で「NOT FOUND」の文字が点滅し、ツアーロゴが映されると、同期によるコーラスから魔女狩りを描いた“Witch”がスタート。「もしかして僕等が加害者?」(Nakajin)、「面白い事言うねぇ」(Fukase)という台詞の掛け合いには狂気が滲んでいて、客席から歓声が上がる。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト
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SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 鳥居洋介Photo by 鳥居洋介

Saoriが“眠り姫”のイントロを奏でると、そのフレーズひとつをきっかけに先ほどまでのダークな雰囲気は一変。“Monsoon Night”では全都道府県から集結した(!)オーディエンスによる「ヘイ!」という掛け声にFukaseが「いいね!」と表情を緩めた。最初のMCでマイクへ向かったのはNakajin。ここでは彼が、理想と現実のギャップを悔しく思い戦う日々が未だに続いている、しかしそうやって苦しんだ日々があるからこそ今の自分があるんだ、という話をしたあと、Nakajin/Saori/DJ LOVEの3人編成でNakajinボーカル曲=“ドッペルゲンガー”、“Goodbye”を演奏した。彼の実直な人柄そのもののようにまっすぐなボーカルに会場の空気も和やかになるが、その和やかさを打ち砕くようにFukaseが出現し、“Food”がスタートする流れ。Fukaseは彼の動きを捉えるカメラを煽ったり、間奏ではダンスを披露したりしながら、花道を練り歩いてパフォーマンスしていた。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 太田好治Photo by 太田好治
SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 立脇卓Photo by 立脇卓

束の間の嵐が去ると、二度目のMCではSaoriが、0歳児を育てながらのレコーディングとなった『Eye』、『Lip』制作過程を振り返る。(Saoriの)出産・育児を通じてよりお互いのことを知ることができた、いや、そういう環境をメンバーが作ってくれたんだ、という素敵なエピソードを経ての“Mr.Heartache”や、Fukaseの歌+Saoriのピアノの二重奏で届けられた“illusion”は一際温かな響きをしていたし、続く“スターゲイザー”は壮大なサウンドと光の演出のコラボレーションが非常に美しかった。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト
SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 鳥居洋介Photo by 鳥居洋介
SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 太田好治Photo by 太田好治

真っ赤な照明に塗り潰された“Blue Flower”では各旋律によるミステリアスな雰囲気だけでなく、Fukaseがベースを引きずり歩くシーンで鮮烈な衝撃を残した一方、「昔はロボットとのラブソングばかり書いていた僕でしたが、体温のある曲ができたので聴いてください」と紹介された“エデン”はFukaseの歌とNakajinのアコギのみの柔らかなアレンジで演奏され……と、ライブが進むにつれて、それぞれの曲で表現されている明と暗のコントラストは一層激しくなっていき、観る者は自身の内面を激しく揺さぶられることになる。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 立脇卓Photo by 立脇卓
SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 立脇卓Photo by 立脇卓

“エデン”演奏前の三度目のMCで、Fukaseが「この4年間は子どもと接する機会が多かった」という話をしながら、「子どもは純粋ゆえに誰かを傷つけることもある」、「それに対し大人として叱らなければいけない時もあって悩むこともある」、「だけど、考え悩む時間自体が愛なのだとこの4年間で分かった」と言っていたのが印象に残っている。子どもに悪影響を与えるかもしれないから、と表現が誰かの手によって規制されたり、あるいは同じ理由で表現者自身が躊躇ったり委縮したりすることもあるようなこの時代。しかし受け取り手から考える余地を奪い取り、翼をもぎ取るようなその行為ははたして本当に正しいのか。世界のやさしさのみならず、残酷さも含めたすべてを詳らかにしようとすることが表現者として――もっと言うといち人間として――最も真摯な在り方ではないのだろうか。SEKAI NO OWARIが今回のツアーで目指した表現とはおそらくそういうものなのだろう。そしてそれはメンバー個々人のパーソナルな変化はもちろん、(「INSOMNIA TRAIN」から見られた)Fukaseのフロントマンとしての才気の開花、『Eye』、『Lip』にも存分に発揮されていたここ4年間での音楽的進化があったからこそ挑めた領域でもある。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト
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大合唱を巻き起こした本編ラストの“スターライトパレード”、アコースティック編成(Nakajinがアコギ、Saoriがアコーディオン、DJ LOVEがスネアドラム)に切り替えた4人が客席の通路を歩きながら演奏した“Dragon Night”を経て、アンコールの2曲目として演奏されたのは“銀河街の悪夢”。元々今回のツアーで演奏する予定はなかったが、ツアー中急遽セットリストに追加されたというこの曲には、「内容が内容だけにテレビやラジオでオンエアしづらいため、Fukaseは歌詞を書き換えようか悩んでいた」、「しかし他のメンバーが『書き直す必要ない、だってこれがこのメロディに合う言葉だと思ったんでしょ?』と背を押してくれたため、そのままの歌詞になった」という背景がある。Fukaseの表現にメンバーが寄り添うことにより、「SEKAI NO OWARIの曲」として生を享けたこの曲が、ドラマティックなサウンドと結びつき、希望の曲としてアリーナを満たす人々の元に届けられていく光景は感動的であった。

SEKAI NO OWARI/さいたまスーパーアリーナ - Photo by 横山マサトPhoto by 横山マサト
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そのあとは“すべてが壊れた夜に”を会場みんなで歌い鳴らして演奏が終了。このままハッピーエンドかと思いきや、去り際、PCで「WHAT A BEAUTIFUL WORLD」という文字を打ち込むFukaseは不敵な笑みを浮かべていて、何とも言い難い余韻を残していった。予定調和を覆していくこの感じはあっと驚くアイデアとともにエンターテインメントを志向し続けてきた彼ららしいし、「世界は、それでも美しいのだ」と言い切る強さにはこの4年間での成長が感じられる。SEKAI NO OWARIはSEKAI NO OWARIのまま、新しいSEKAI NO OWARIになったのだと端的に語るような、良いラストシーンだった。(蜂須賀ちなみ)

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