Fear, and Loathing in Las Vegas/Zepp DiverCity(TOKYO)
2019.09.23
●セットリスト
1.Acceleration
2.Rave-up Tonight
3.Power of Life and Death
4.Return to Zero
5.SHINE
6.The Gong of Knockout
7.LLLD
8.Keep the Heat and Fire Yourself Up
9.Let Me Hear
10.Short but Seems Long, Time of Our Life
11.Meaning of Existence
12.Scream Hard as You Can
13.Evolution~Entering the New World~
14.Crossover
15.Party Boys
16.Twilight
17.Virtue and Vice
18.Love at First Sight
Fear,and Loathing in Las Vegas(以下ラスベガス)、完全復活である。
新体制によるワンマンツアー「Carry on FaLiLV」は東名阪の3ヶ所で行われ、その東京公演にあたるZepp DiverCity(TOKYO)公演を観てきた。6月末にTetsuya(B)を迎え、5人体制で再出発を誓ったラスベガスを目撃しようと、会場は大勢の観客でぎっちぎちに埋め尽くされていた。
開演18時ジャストにSEが流れると、So(Vo)、Minami(Vo・Key)、Taiki(G)、Tetsuya、Tomonori(Dr)が姿を見せ、2ndアルバム『All That We Have Now』収録の“Acceleration”で本編開始。冒頭から「東京、最高の笑顔にするからな!」とSoは元気一杯に呼びかけ、この言葉にどれだけ多くの人がホッと胸を撫で下ろしたことだろう。その刹那、あのラスベガスの爆発的な演奏が全ベクトルに放出されるや、観客も封印していた感情を解き放つように暴れ回る。僕は2階席で観ていたけれど、早くも会場の振動が伝わり、体が左右に揺れ動いた。すっさまじい盛り上がりだ。
Soの突き抜けるようなキャッチーな歌声、Minamiの極悪野獣スクリームによる掛け合いも切れ味抜群。黄金のツートップが牙を剥けば、脇を固める楽器陣もブルドーザー並みの破壊力で進撃する。次の“Rave-up Tonight”に入ると、メモが取れなくなるほど2階席は揺れ、船酔いならぬ会場酔いしそうな途轍もない活気が渦巻く。2曲目を終えた時点で、新5人体制で以前よりもパワーアップを遂げているではないか。その思いは曲が進むにつれて確信へと変わっていった。
ミラーボールが煌々と回る中、“SHINE”は目まぐるしいジェットコースター的展開でラスベガスの真骨頂をこれでもかと発揮。蛍光色のライトも飛び交い、ド派手な視覚効果もラスベガスのライブには欠かせない。他の追随を許さない、極彩色のラウド&パーティーサウンドは現場でしか体感できないものである。
「ガンガンにブチ上げていくんで、準備はいいか?」とSoは煽り、“The Gong of Knockout”へ。新加入のTetsuyaによるスラップベースも飛び出し、自身の存在も積極的にアピール。結果的にメンバー5人の演奏やキャラも立体度が増し、今のバンドの形が強烈に押し出されているように感じた。それから歌メロが際立った“LLLD”、オリエンタルな要素を配した“Keep the Heat and Fire Yourself Up”と繫いだ後、ここであの出来事に触れる。
「『Carry on』というツアー名にはいろんなことを乗り越えて、ラスベガスはこれからも続けていくという意味を込めてる。Kei(B)が亡くなって(*今年1月12日に急性心不全で死去)、悲しくて、半年動けなくて……。悲しいことは誰しもあると思うけど、絶対に乗り越えてやると思えば道を拓ける」と語るSo。その言葉を受け、観客から熱くも温かい声援が上がり、その流れで聴いた“Let Me Hear”はこれまでとは違う輝きを帯びていた。気付けばラスベガスも10年選手に到達している。デビュー時からエネルギッシュなライブで多くの観客を魅了していたけれど、そこに新たな意味が加わったように思う。自分たちの音楽や活動が、誰かを勇気づけて鼓舞する。バンドと観客が肝胆相照らす関係性を築き上げ、ライブの熱は雪ダルマ式に膨れ上がっていく。そんな事実を目の当たりする狂熱的な景色が広がっていた。
「後半戦、全員でひとつに!」という掛け声と共に“Meaning of Existence”をプレイ。その後の“Scream Hard as You Can”においては「もっと行けるやろ、お前らかかって来い!」、「声出せ!」と煽りを入れ、フロアを容赦なく焚き付ける。その振っ切れた攻撃力には息を飲む迫力さえも感じた。
Minamiのスクリーム押しで突き進む漆黒ナンバー“Crossover”で地獄絵図を作り上げると、ゲーム音をイントロに用いたアッパー曲“Party Boys”へと畳み掛ける。まさに地獄から天国へと急上昇するサウンドに観客の興奮は頂点に達していた。
“Twilight”を挟み、「あと2曲、アンコールないから。行けるところまで行って!」と告げると、“Virtue and Vice”、“Love at First Sight”の2連発でショウを締め括った。特に後者では大合唱が巻き起こり、この日最大級の盛り上がりを記録して、全18曲1時間20分を全速力で駆け抜けて終了。
そして、ファン待望とも言える新体制での初のニューアルバム『HYPERTOUGHNESS』を12月4日(水)に発売、来年1月からその新作を引っ提げた全国ツアーも発表した彼ら。今日のパフォーマンスを観ても、肉体と精神の両面において、より一層逞しくなったラスベガスの勇姿に胸が熱くなるばかりであった。苦難を乗り越えて、止まらない進化と深化を魅せ続ける彼らからますます目が離せない。(荒金良介)