ヒトリエ/恵比寿LIQUIDROOM

ヒトリエ/恵比寿LIQUIDROOM - All Photo by 西槇太一All Photo by 西槇太一

●セットリスト
01.センスレス・ワンダー
02.シャッタードール
03.日常と地球の額縁
04.Namid[A]me
05.伽藍如何前零番地
06.インパーフェクション
07.SLEEPWALK
08.Loveless
09.(W)HERE
10.劇場街
11.トーキーダンス
12.アンノウン・マザーグース
13.カラノワレモノ
14.リトルクライベイビー
15.青
16.ポラリス
(アンコール)
EN1.踊るマネキン、唄う阿呆
EN2.ローリンガール


ヒトリエ/恵比寿LIQUIDROOM
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「楽しんどる? 悲しんどる? 怒っとる? どんな感情でもいいから、120%で行こうな。お前らの喜怒哀楽で、このリキッドルーム、ぐちゃぐちゃにして帰ろうな!」
幕開けから圧巻の歓喜で覆い尽くされたフロアが、そんなシノダ(G・Vo)のコールでさらに熱く沸き返っていく――。

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最新アルバム『HOWLS』を携えたヒトリエの全国ツアー「TOUR 2019“Coyote Howling”」が、wowaka(Vo・G)の急逝により中止を余儀なくされたのは、今年の4月のことだった。
「Coyote Howling」ツアーのファイナル会場となるはずだった新木場STUDIO COASTでの追悼イベント(6月1日)では「先のことはわからないけど、どんな形でも解散はしない」(シノダ)の宣言とともに3人でライブを繰り広げていたヒトリエ。
そして――シノダ・イガラシ(B)・ゆーまお(Dr)の3人編成では初となる全国ワンマンツアー「HITORI-ESCAPE TOUR 2019」で彼らが響かせていたものは紛れもなく、ロックバンド=ヒトリエの奮い立つ存在証明そのものだった。

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当初は全15公演だったスケジュールが、11月6日のリキッドルーム含め東名阪の日程が加わって全18公演となった「HITORI-ESCAPE TOUR 2019」。この日の後に追加の名古屋(11月17日)・大阪(11月18日)の各公演が控えてはいたものの、3人を迎えるオーディエンスの期待感は「ツアーファイナル」としての濃密な熱量に満ちたものだった。

いきなり“センスレス・ワンダー”のソリッドな疾走感で会場丸ごとクラップの嵐へと巻き込むと、“シャッタードール”のタイトなビートでフロア一面のハイジャンプを呼び起こしてみせる。新たにギター/ベース/ドラムの3ピースへと変わったことで、ギター2本の4人編成とは当然ギターサウンドの厚みも異なってはくるのだが、辣腕メンバー3人の磨き抜かれたプレイアビリティが、「3人編成のヒトリエ」をまったく新しい表現として立ち昇らせていた。
むしろ、wowakaが自身の楽曲に重ね合わせ、3人のメンバーに託してきた性急なビート感が、スリリングなまでにくっきりと浮かび上がってくるのが印象的だった。

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「リキッドルーム、久しぶりだぜ! 久しぶりだぜ……何か文句あんのか?(笑)」と「8日ぶり」のリキッドルームを沸かせるシノダ。
“伽藍如何前零番地”ではシノダの絶唱とひずんだベースサウンドがせめぎ合い、“インパーフェクション”では警報音の如きギターフレーズとゆーまおの爆走ドラムが狂騒の果てへとデッドヒートを繰り広げる。音楽的な新機軸と進化に満ちた『HOWLS』の世界を、どこまでも伸びやかな肉体性をもって体現していく。

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特に、メインボーカルを担っているシノダの、フロントマンとしての存在感と使命感が表裏一体となって躍動している姿は、そのひとつひとつが感動的な名場面だった。
“SLEEPWALK”や“Loveless”ではギターを降ろしてハンドマイクでリズムに身を委ね、痺れるようなフィードバックノイズから流れ込んだ“劇場街”では戦慄必至の轟音オルタナ爆走感をリードしてみせる……シノダの覚醒感に満ちた歌とギタープレイは、この日のライブの中でもひときわ強烈な輝きを放っていた。

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「7年という歳月がございます。僕が入って、バンド名が『ヒトリアトリエ』から『ヒトリエ』に変わって、今年で7年目です。ビートルズが解散する年。BOØWYが、NUMBER GIRLが解散する歳月。それが7年でございます」
ライブ後半、シノダはそんな言葉で「ヒトリエとの時間」を振り返っていた。加入前に名古屋にいたシノダは、リーダー=wowakaとは東京でスタジオに入った時に初めて会ったこと。そして、「俺はこのバンドでこういう曲をやりたいんだ」とwowakaがチャットに放り込んできたMP3のデモ音源に、「『頭ん中にビリビリッと電気が走る』ってこういうことを言うんだなあ」というくらいの衝撃を受けたこと――むせ返るような熱気に満ちたフロアが、シノダの言葉に静かに聞き入っていく。

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「『間違いなくでけえ革命を起こせる! その革命の一員に俺はなれる!』って思って、めちゃめちゃワクワクしました。そんなワクワクから7年経ちました。今だにワクワクしっ放しです! そんな俺のワクワクを――あの瞬間に頭の中にビリビリッと走った電気を、今からお前らにお裾分けします!」
そんなふうに呼びかけて披露したのは、インディーズ時代からの名曲“カラノワレモノ”。センチメントと孤独と哀しさを丹念に織り重ねてロックへ昇華した名曲が、今この場所で再び響き渡る。wowakaの音楽と感情が生き続ける場所が、確かにここにある……そんな実感を誰もが改めてリアルに手にした瞬間だった。

“リトルクライベイビー”に続けて本編のラストを飾ったのは、『HOWLS』からの2曲――珠玉のグランジバラード“青”、そしてシングル曲“ポラリス”だった。
《忘れられるはずもないだろう/君の声が今も聞こえる/泣き笑い踊り歌う未来の向こう側まで行こう》(“ポラリス”)――wowakaが綴ったフレーズがそのまま、メンバー3人とこの場に集まった僕らすべてがwowakaを想う言葉となって、フロアを熱く震わせていった。

アンコールではシノダ&ゆーまおを軸にツアーの思い出を振り返っていた3人。「言いたいことはいっぱいあるし、何を言おうかなっていっぱい考えてきたけど。ひと言にまとめると……『ロックバンドなめんなよ!』ってことですね」。そんなシノダの言葉に、高らかな拍手喝采が巻き起こっていく。
フロア一面にクラップが広がった“踊るマネキン、唄う阿呆”から、“ローリンガール”で会場一丸のシンガロングを呼び起こしてライブを締め括ったヒトリエ。
「オン・ベース、イガラシ! ドラムス、ゆーまお! ギター・ボーカル、シノダ! そして、作詞作曲、wowaka! ヒトリエでした!」というシノダのコールが、惜しみない拍手と突き抜けるような余韻とともに熱く胸に刻まれた。

名古屋&大阪で国内ツアーを終えた後、2020年2月にはバンド史上3回目となるアジアツアー「HITORI-ESCAPE TOUR 2020」の開催が決定しているヒトリエ。そして、2010年代最後を飾るライブは12月31日(火)、COUNTDOWN JAPAN 19/20のCOSMO STAGEにて!(高橋智樹)

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