NUMBER GIRL/豊洲PIT

NUMBER GIRL/豊洲PIT - All photo by 菊池茂夫All photo by 菊池茂夫
※以下のテキストでは、演奏曲のタイトル及びセットリストを表記しています。ご了承の上、お読みください。

「年末、夕暮れ。銀座・並木通り。人混みかき分け、勝鬨橋のボルトの辺りに、今日も……今日も、鉄のように鋭い風が、吹いています」。
開演SEのテレヴィジョン“Marquee Moon”の時点から轟々と沸き起こる大歓声の中、向井秀徳(G・Vo)の講談師の如き名調子MCを受け、中尾憲太郎(B)の極太ベースラインが走り出し、“鉄風 鋭くなって”のスリリングなアンサンブルが満場の豊洲PITを歓喜と熱狂で揺らしていく――。

今年2月の電撃復活宣言から10ヶ月。7月の新宿LOFTワンマンとその後の「TOUR『NUMBER GIRL』」を経て、ここ東京・豊洲PITでの2Days公演を皮切りに2020年3月1日(日)・Zepp Tokyo(追加公演)まで全13公演に及ぶNUMBER GIRLの全国ツアー「NUMBER GIRL TOUR 2019-2020『逆噴射バンド』」。
解散前からのファンはもちろんのこと、キャパ3,000人超のフロアには「ナンバガ不在の時代」にその魅力に触れたであろう若い世代のファンも多く見られたこの日のアクトは、ロックの衝撃と切っ先そのものの唯一無二のサウンドが、紛れもなく今この時代の「現実」として轟いていることを、改めて厳然と突きつけてくるものだった。

NUMBER GIRL/豊洲PIT

赤黒く渦巻くキメから流れ込んだ“タッチ”の、殺伐とした違和感をロックの熱源へと位相変換したような圧巻のダイナミズム。そんな緊迫した空気感をそのまま引き連れての“ZEGEN VS UNDERCOVER”のイントロでは《ヤバイ さらにやばい バリヤバ》のシンガロングが巻き起こり、狂騒祝祭空間の温度と密度を1曲また1曲と高めていく。
“EIGHT BEATER”〜“IGGY POP FANCLUB”の8ビートの直球オルタナに身を任せて跳ね回るオーディエンスを、“裸足の季節”の田渕ひさ子(G)のアグレッシブなギターソロがさらなる歓声で沸き立たせる。そして、「気づいたら、夏だった、風景。あるいは、私がその時見たあの姿は……いや、確実にあの姿は、透明少女だった!」の向井のMCとともに、彼らのメジャーデビュー曲でもある鉄壁のアンセム“透明少女”が鳴り渡ると、広大な空間は雄叫びにも似た大歓声であふれ返り、向井の絶唱とデッドヒートを繰り広げるようなアヒト・イナザワ(Dr)の爆裂ビートが、会場丸ごと割れんばかりの歌声を呼び起こしてみせる。

NUMBER GIRL/豊洲PIT

7月の再始動初ワンマンの時にはやや垣間見えたフラジャイルなスリルはすでに微塵もなく、妖気と殺気に満ちた4人のアンサンブルと佇まいは17年間の「不在」すら忘れさせるほどのタフな凄味に満ちていた。
その一方で、“YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING”の前には向井が幽玄なテレキャスの響きとともに“夕焼け小焼け”をミステリアスにリハーモナイズしてみせたり、オルタナ×ダブ×ヒップホップの異次元ポップを描き出す“NUM-AMI-DABUTZ”の導入MCが「さて、5週勝ち抜きなるか? ショーパブ上がりの実力派、“NUM-AMI-DABUTZ”の登場だ!」だったり、「大五郎! これより冥府魔道に入るぞ」と『子連れ狼』ばりのMCから、鉄弦と太鼓と咆哮が斬り結ぶ激走ナンバー“SASU-YOU”へ雪崩れ込んでみせたり……といった具合に、向井独特の痛快にイカれたユーモアが随所で弾けていたのも印象的だった。

『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』、『SAPPUKEI』、『NUM-HEAVYMETALLIC』のアルバム3作品や“DESTRUCTION BABY”といったシングル曲など、東芝EMI(当時)時代の楽曲を中心に網羅しつつ、“水色革命”や“ウェイ?”(喂?)をはじめとしたインディーズ時代の楽曲も要所要所に盛り込んでいたこの日のアクト。往年のファンと新しいリスナーとのリアクションの違いを、他でもないバンド自身(特に向井)が楽しんでいるのだろう――という遊び心が窺えて、ライブが進むごとに抑え難く胸が弾んで仕方がない。そんな一夜だった。
個人的にも7月のLOFT、8月の日比谷野音、と復活後のライブを目の当たりにしてきたが、“転校生”や“桜のダンス”など今回のツアーで久々に披露された楽曲群からは、今この時代にリアルタイムでNUMBER GIRLが鳴っている実感がさらにくっきりと頭と心に迫ってきた。

「福岡市博多区から参りましたNUMBER GIRLです。ドラムス、アヒト・イナザワ!」のコールに続けて“OMOIDE IN MY HEAD”のイントロを叩き込むアヒト。迫力と涼やかさを備えた田渕ジャズマスター×向井テレキャスの響き。切迫感に満ちたサウンドのボトムに豪快なドライブ感を与える中尾のベースサウンド。17年間どのバンドにも上書きできなかった鋭利で獰猛なセンチメントの形が、会場一面のシンガロングとともに響き渡る。最高の風景だ。そして、本編を締め括った“I don’t know”の、目映いくらいにダイナミックに轟く清冽な狂気は、「17年前の続き」ではない「今だからこそ」の強靭さに満ちていた。

NUMBER GIRL/豊洲PIT

アンコールでは“桜のダンス”、“KU〜KI”に続けて「やっぱり結局、あの娘は透明少女!」とまさかの二度目の“透明少女”炸裂! 解散前の『NUM-HEAVYMETALLIC』ツアーでは“透明少女”をセットリストから外していたこともあることを考えると破格のサービスぶりと言えるだろう。何より、向井・田渕・中尾・アヒトの4人が「NUMBER GIRLという奇跡」を自身の演奏を通して全身で謳歌していることが、この日のアクトからは明快に伝わってきた。

ツアーはまだ序盤も序盤、ここからさらに研ぎ澄まされ鍛え上がっていくことだろう。そして、12月30日(月)にはCOUNTDOWN JAPAN 19/20のEARTH STAGEに初登場!(高橋智樹)

NUMBER GIRL/豊洲PIT


●セットリスト
01.鉄風 鋭くなって
02.タッチ
03.ZEGEN VS UNDERCOVER
04.EIGHT BEATER
05.IGGY POP FAN CLUB
06.裸足の季節
07.透明少女
08.YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING
09.NUM-AMI-DABUTZ
10.Sentimental girl’s violent joke
11.DESTRUCTION BABY
12.MANGA SICK
13.SASU-YOU
14.ウェイ?
15.U-REI
16.TATTOOあり
17.水色革命
18.日常に生きる少女
19.転校生
20.OMOIDE IN MY HEAD
21.I don’t know
(アンコール)
EN1.桜のダンス
EN2.KU~KI
EN3.透明少女


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