UNISON SQUARE GARDEN/大宮ソニックシティ

UNISON SQUARE GARDEN/大宮ソニックシティ - All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)

●セットリスト
1.リトルタイムストップ
2.セク×カラ×シソンズール
3.flat song
4.over driver
5.ピストルギャラクシー
6.ギャクテンサヨナラ
7.僕は君になりたい
8.スノウループ
9.ここで会ったがけもの道
10.ノンフィクションコンパス
11.三月物語
12.三日月の夜の真ん中
13.サンタクロースは渋滞中
14.スノウリバース
15.シグナルABC
16.ラディアルナイトチェイサー
17.I wanna believe、夜を行く
18.Micro Paradiso!
(アンコール)
EN1.5分後のスターダスト
EN2.さわれない歌
EN3.ラブソングは突然に〜What is the name of that mystery?〜


UNISON SQUARE GARDEN/大宮ソニックシティ
結成15周年を迎えた2019年を締め括るツアーは、カップリング・ベストアルバム『Bee side Sea side ~B-side Collection Album~』のリリースに伴うもので、その収録曲のみを演奏。つまり普段ライブにあまり登場しない曲ばかりという非常に珍しい内容だった。日程の前半はFC会員限定のライブハウス公演で、後半は誰でも参加できるホール公演。以下のテキストでは、後半の初日、11月14日・大宮公演の模様をレポートする。

スネア2発を合図にSEが止み、ステージにある柱型のライトが点灯。1曲目は“リトルタイムストップ”。静かなところからじわじわと熱を帯びていくタイプの演奏が、客席にいる私たちの内なる昂揚感と重なっていく。続く“セク×カラ×シソンズール”の冒頭を歌い終えたあと、斎藤宏介(Vo・G)が「ようこそ!」と一言。そのまま天を仰ぎ、ギターを鳴らす彼は心底気持ちが良さそうだ。終盤でクラッシュを連打していた鈴木貴雄(Dr)は勢いのまま立ち上がっている。ジャカジャーンというキメを音源より多めに鳴らして同曲を終えると、「今日は本当に最後までカップリングしかやらないので。どうかお気をつけて」と斎藤。深く息を吸い、“flat song”を歌い始める。

一転、今度は鋭いアッパーチューンを連投。うち、“over driver”は2011年リリースで、“ギャクテンサヨナラ”は2010年リリース。前者はギターにもベースにもドラムにも分かりやすい見せ場がある曲で、時を経て、それぞれが成長したことがダイレクトに表れていた。一方、田淵智也(B)がベースを掻き鳴らしてから始めた後者は、まだ青かった頃を彷彿とさせる剥き出しの熱量が出ていてそれもまたよかった。バラード群により再度空気が塗り替わると、照明も淡い色合いにチェンジ。特に“スノウループ”は、白色の光がステージの床に描く斑点模様が雪明かりのようで美しかった。

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“ここで会ったがけもの道”では、斎藤がタッピングからギターソロを始め、音源とは異なるアプローチに歓声が上がる。そしてこちらも音源にはない、田淵による曲間を繋ぐメロディから“ノンフィクションコンパス”へ。《ここどこ?わからないけど/世界の数ある片隅なんだろう》と始まり《全部がかけがえないエキストラ》、《このストーリー描けるのはただ一人だ》、《世界の真ん中はここだよ》と高らかに歌うこの曲は、脇役たちの祭典というべきこのツアーにぴったりだ。ドラム台に足をかける田淵と鈴木が楽しそうに音を合わせるなか、そちらに視線をやりつつふっと笑い、マイクへ向かう斎藤。軌道に乗った感情は、音になり歌になり、高く、遠くへ羽ばたいていく。

ファン投票企画「B side 総選挙」の結果を踏まえ、「31曲中30位に輝いた大人気曲」と紹介された“三月物語”のイントロが始まると、ステージ上空にまん丸の月が登場。アルバムアートワークのデザインを模した舞台装置だが、“三日月の夜の真ん中”演奏時には照明の当たり方によって月面が一部翳り、こちらからだと三日月のように見える。何とも粋な演出だ。ここで鈴木のソロがスタート。ドラムロールやリムショットを駆使したプレイで魅せると、田淵が“三日月の夜の真ん中”のリフを弾きながらそこに加わる。そのリフがいつの間にか“サンタクロースは渋滞中”のものに変化していて、そのまま曲に入る流れだ。

14曲目に「B side 総選挙」で1位を獲得した曲=“スノウリバース”が登場。そして“シグナルABC”、生で聴くとこんなにグッとくる曲だなんて知らなかった。「ユニゾンらしい」としか形容しようのない多展開で要素満載の曲調を、3ピースサウンドがまっすぐに鳴らしていく。世間の異端を自らの王道として鳴らし貫くバンドの姿を観ていると、熱い気持ちにならざるを得なかった。“I wanna believe、夜を行く”は斎藤がサビのフレーズを歌ってから始まるアレンジ。音源の祝祭感溢れるサウンドもいいが、シンプルな音像により歌本来の旨味が引き出されているため、言葉が深く入ってくる。客席を見てみると、身体を動かして目一杯喜んでいる人もいれば噛み締めるようにじっと聴き入っている人もいた。

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斎藤の「ラスト!」により、いつの間にかライブが終盤に入っていたことに気づかさせられる。本編最後は“Micro Paradiso!”。《馬が合った諸君》というワードが、斎藤から「(今日はアニメの)主題歌をやりません!」と言われて喜ぶような物好きたちの姿を連想させた。間奏では演奏の停止/再開を繰り返し、だるまさんがころんだ的な動きをし始める斎藤と田淵に、鈴木が「ちゃんとやるならやろうよ!」と謎の角度からツッコミを入れる。斎藤はラストフレーズを歌い終えるとそこから息もつかずに「バイバイ!」と告げ、3人がステージを去っていった。

暖色系の照明が壇上を落ち葉の道に変えるなか、アンコールではまず、メジャーデビューシングル『センチメンタルピリオド』カップリング曲“5分後のスターダスト”を演奏。これが素晴らしかった。当時はどこか尖ろうとしていたのか、今の方が明らかに素直に歌えている斎藤をはじめ、歳を重ねた今の彼らだからこそ表現できるようになったことが確かにあるはず。『Bee side~』収録曲にはバラードが多いが、セットリストのバランスを鑑みてか、この日演奏されなかった曲も多い。今年でしばらく封印とは言わず、もっと聴きたいのが本音だ。

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ここでMC。斎藤曰く、ツアー前半最終日からこの日までの期間はスタジオにこもって新曲を制作していたらしく、「すごいフラストレーションがたまってました、早くライブしたいって。だから今日めちゃくちゃ楽しいです」とのこと。とはいえツアー前後半の間は10日しか空いておらず、やはりこの人たちはライブが好きでしょうがないんだなと微笑ましくなる。

この1年を「自分たちにとって楽しいことをやっているのに喜んでもらえている実感があって。バンドにとって大切な時間を過ごしているなと実感してます」と振り返り、「その経験を経てまたいつものUNISON SQUARE GARDENに戻ったとき、もっとカッコいいUNISON SQUARE GARDENになれてると期待してます」と展望を語ったあと、“さわれない歌”を通じて謳われるバンドの変わらぬスタンス。レア曲ばかりを演奏した今回のツアーには「なるほど、ライブだとそういうアレンジで来るのか」、「この曲にはこういう立ち位置を担わせるのか」という新鮮さがあった。しかし突き詰めると、いい曲・いい演奏・いい曲順がもたらす喜びや驚きとはユニゾンのライブの本質であり、そこがブレていないという意味ではいつもと同じライブであった。普段ならばおおよそやらない企画が盛りだくさんだった、斎藤が「変なことをたくさんやった」と言い表した今年も相変わらず大事なことは守られていたのだ。一番に自分たちが楽しみ、そのうえで聴き手をしっかり満足させるものを作るという高水準の「当たり前」。それは簡単に平然とできることではない。だからこそ今年は、これまでの日々を祝い、ここまでやってきた自分たちのことを認めてあげられる初めてのアニバーサリーだった。そんなの、こっちだって嬉しいに決まっているじゃないか。

ライブ定番曲“ガリレオのショーケース”はやっていないし、「B side 総選挙」で10位以内=ファンに人気があると分かっているにもかかわらずやらなかった曲もあった。そういうところにこのバンド特有の天邪鬼さを感じるが、ライブとして物足りなさはなく、むしろ充足感すらあった。演奏力の高さ、曲の力、曲順・アレンジの妙によってバンドとしての地力が改めて示されたツアーだったように思う。アニバーサリーが終わるのが寂しいなんて気持ちはもうとっくに吹き飛ばされている。来年以降のユニゾンも、きっとどうせカッコいいのだから。(蜂須賀ちなみ)

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