会場で目の前でバンドの演奏を目撃し、音を360度から浴びることで得られる生々しいエネルギーの交換。その尊さを確認する一方、配信映像では、画面を通してこそ全貌が伝わる総合芸術のようなライブ演出にうっとりと引き込まれた。双方の鑑賞方法において、新しいライブの形が創造されていた画期的なライブであった。
横浜アリーナの巨大な空間の中央に、大きな楕円形のライブステージを設置し、そのステージ全体にプロジェクションマッピングによる様々な映像や画像が映し出される。ステージいっぱいに銀河が映し出され、その上でメンバーが演奏した“グランドエスケープ”。宇宙空間から、あの壮大で伸びやかな音が奏でられ、野田の《行こう》という号令が発せられることで、本当にどこまでも遠くに行ける感覚になった。“G行為”では50人以上のダンサーが登場し、歌い踊る野田の周りをゾンビのような動きで囲み、演劇のようなパフォーマンスが展開された。
中盤のアコースティックセットは、ステージエリア裏に作られた部屋のようなセットで演奏された。実際に場内にいるお客さんもステージ上のビジョンでもって、野田洋次郎、桑原彰(G)、武田祐介(B)の3人の演奏を見守るというスタイルだ。客席から頭上の画面を見つめるという構図により、3人がいる部屋をのぞき見しているような不思議な感覚になった。
初めてライブで演奏された“大丈夫”や、久々の“バグッバイ”だったり、かなりレアなセットリスト。さらに、アンコールでは各日Aimerとハナレグミがゲストとして登場した。アニバーサリーライブだからといって、ベスト盤的でも、懐古的でもない、これまで観たことのない全く新しいRADのライブ。世界は一変し、未だどこに向かうか誰にもわからない。コロナ禍において、多くのアーティストがそれぞれのやり方で、新たなライブの形を模索している。
困難の最中、停滞せずに、どう進化して人々にエンターテインメントの力を与えるか。2020年11月現在、どんな曲をどんな形で奏でることが一番の希望と成り得るのか──。野田はライブ中、「世界も時代も変わってくけど、ミュージシャンってこうだよなって当たり前のことを気付かされた。僕らはその時々の時代、人間、空気に反応しながら、きっとこれからも音楽を作っていくと思います」と口にしていた。RADWIMPSが出したひとつの答えがそこにはあったのだ。
この画期的なライブの模様は、『ROCKIN'ON JAPAN』2月号(12月28日発売)で詳しくレポートする。(小松香里)
●セットリスト
11月22日day1
SE
1 タユタ
2 グランドエスケープ
3 ギミギミック
4 新世界
5 シュプレヒコール
6 パーフェクトベイビー
7 NEVER EVER ENDER
8 おしゃかしゃま
9 G行為
10 大丈夫
11 やどかり
12 棒人間
13 螢
14 告白
15 トレモロ
16 ます。
17 ふたりごと
18 25コ目の染色体
(アンコール)
EN1 蝶々結び
EN2 いいんですか?
EN3 DADA
11月23日day2
SE
1 タユタ
2 グランドエスケープ
3 DARMA GRAND PRIX
4 新世界
5 シュプレヒコール
6 パーフェクトベイビー
7 NEVER EVER ENDER
8 おしゃかしゃま
9 G行為
10 お風呂あがりの
11 やどかり
12 棒人間
13 螢
14 告白
15 トレモロ
16 有心論
17 ます。
18 バグッバイ
(アンコール)
EN1 おあいこ
EN2 いいんですか?
EN3 スパークル
EN4 DADA
『ROCKIN'ON JAPAN』1月号は11月30日発売!
●主なラインナップ
・Mr.Children
・別冊 JAPAN特製カレンダー2021
・SEKAI NO OWARI
・back number
・ヌーミレパーク(仮)潜入レポ
・ほかラインナップはこちら
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