「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
04 Limited SazabysTHE ORAL CIGARETTESBLUE ENCOUNTという3バンドによるガチンコ対バンイベントが5年ぶりに開催。名古屋・日本ガイシホール、大阪・大阪城ホール、福岡・マリンメッセ福岡という、それぞれのバンドの地元エリアのアリーナクラスの会場を舞台に、前回から5年のあいだそれぞれの場所で積み上げてきたものを見せつけ合う「ONAKAMA 2021」、2公演目となる大阪でのライブを目撃した。当然といえば当然だが、5年前とはまったく違うモノがテンション高くぶつかり合う、しかし同時にこの3組にしか醸し出せない空気も存分に感じることのできる、熱い一夜だった。加えて緊急事態宣言下の状況でこれだけの大規模イベントを開催するということの覚悟と思いも、そのパフォーマンスからはひしひしと伝わってきた。3人のフロントマンは口々にこういう情勢のなかで会場に足を運んでくれたファンに感謝を伝えていたが、大げさに言うなら今ロックバンドがロックを鳴らす意味とは何なのかという命題に、彼らは必死に立ち向かっていたのだ。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
客入れ中の場内には、地元大阪のFM局・FM802のDJ落合健太郎によるトークと彼がセレクトしたBGMが流れる。感染対策が徹底された会場には一種異様な緊張感が流れている。そこにトップバッターとして登場したのはフォーリミだ。“swim”で大きな手拍子を巻き起こすと、一気に3曲を畳み掛ける。「みなさんようこそ、この状況のなか来てくださいました!」とGEN(B・Vo)。初日の名古屋公演で肩を脱臼したブルエン・田邊駿一(Vo・G)と足を捻挫した江口雄也(G)、同じく捻挫したというオーラル・あきらかにあきら(B・Cho)とこの日の本番前に火傷をしたという山中拓也(Vo・G)を「俺ら……歳なの? 俺らだけだよ、今のところ無傷なの」とイジると、「THE ORAL CIGARETTESふうに言うと、このあといわゆる『キラーチューン祭り』なんだけど、ついてこれますか?」と堂々の宣戦布告だ。それに続いてRYU-TA(G・Cho)が弾き始めたリフはどこかで聴きおぼえがある……そう、オーラル“BLACK MEMORY”だ。さわりだけやるネタかと思いきや、そのまままさかのフルコーラス完奏(GENは「あきらのベースがむずすぎてサボった」と言っていたけど)。粋なサプライズでオーディエンスを盛り上げていく。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
かぶっていたキャップを取ると金髪ボウズになっていたRYU-TAが客席を睨みつけながらシャウトを響かせた“Alien”などスリリングな楽曲を連発した中盤を経て、GENが再びMC。「ライブがないと精神衛生上よくない。観てくれるみなさんが必要です」と、思うようにライブができなかったこの1年を振り返る。それはもちろん観客のみんなにとっても同様。声は出せないが、その代わり熱い手拍子や拍手が、曲が鳴るごとにホールを覆っていった。「考えすぎるな、自分自身に生まれ変われ!」といういつものメッセージとともに鳴らされた“Squall”には、今こそ必要なポジティブなメッセージが詰まっていた。「時間が余ってるからもう1曲」と披露された“message”まで、セットリストにはしんどい時こそ効くフォーリミの音楽のエッセンスがぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
2組目としてステージに立ったのはBLUE ENCOUNT。フォーリミのMCにもあったとおり名古屋で肩を外した田邊だが、元気に登場である。「準備できてるー?」と客席に呼びかけると、ひときわ大きな拍手が上がる。“バッドパラドックス”の軽快なダンスビートで幕を開けたライブは頭からハンズクラップとジャンプの嵐に。この1年のあいだにぐっとクオリティを増したように思う田邊の力強い歌声がまたたく間に会場の空気を掌握していく。続けて突入した“Survivor”では、バッキバキの低音が鳴り響くなか、江口がキレキレのギターを聴かせる。「大阪、会いたかった! みんな肩外してない?」とさすがの自虐ネタを繰り出しながら、負傷して痛がっている時に「あいつら大笑いしてたからね」と「ONAKAMA」の面々にツッコミを入れる田邊。でも「笑い飛ばしてくれたからラクになれた」と素直な気持ちを口にするあたりからは、この3組が根っこのところで信頼し合っているところが伝わってきた。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 浜野カズシPhoto by 浜野カズシ
いつものコール&レスポンスも観客の声はないが、辻村勇太(B)は「聞こえてるぞ!」と客席に語りかける。お祭りビートが楽しい“VS”でさらにオーディエンスを高みに連れて行くと、次の曲に行く前に田邊が語り始めた。「ルールができた。できないことも増えたね。この居場所も例外じゃない。でもだからって『はい、わかりました』って簡単に終わるのは寂しくねえか? ルールを守りながら、やれることを探して、自信を持ってそれやり続けるのがいちばんいいんじゃないかなって思います。何よりもあなたがそこで生きてそこにいるっていう事実が、俺たちが忘れてたライブの本来の意味。俺はそれを信じたい」。そんな必死の言葉が万雷の拍手を巻き起こすなか、「かかってこいや!」の一言とともに繰り出されたのは、5年前の新木場スタジオコーストでもフロアに鳴り響いていた曲、“DAY×DAY”だった。BPM195の手拍子がバンドをますます熱くさせていく。「勇気を持って来てくれてありがとな」。息を切らした田邊が客席に笑顔を向ける。「俺たちはバンドシーンのなかで天下取ろうと思っているわけじゃないし、エンターテインメント業界の希望の星になろうとしているわけでもない。今の時代に物申すとかそういうことでもない。あなたがキツいなって思った時に、あなたのイヤホンから鳴る音楽が俺たちの音楽だったらいいって思ってるだけです」。今だからこそ、そして「ONAKAMA」のステージだからこそ言える言葉が胸にぶっ刺さる。そうして最後に鳴らされたのは全力の希望を歌った“灯せ”。この日のセットリストのなかでもひときわシンプルなロックアンサンブルと観客の手拍子が、ロックの底力を体現しているようだった。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
そしてこの日のトリを務めたのは地元関西出身のオーラルだ。ヘビーなSEに乗せてステージに登場した4人。「全員の手、見せてくれ!」と観客にハンズアップを要求し、「トリな。とんでもない、いい空気になるやろな、だって我々のホームタウンやもん!」と不敵な笑みを浮かべる山中。その言葉どおり、“容姿端麗な嘘”の怒涛のオーラルワールドがすべてを巻き込んで膨張していく。あきらの太いベースラインがフロアを震わせ、「地面抜けるくらいジャンプしてみようか!」という山中の言葉に一面のジャンプが巻き起こる。「今日、仲良しこよし? いやいや、戦争でしょ!」。挑発的な言葉を繰り出しながら、それを自ら証明するかのように攻撃的な曲を次々披露。この5年で進化したオーラルの現在位置をこれでもかと見せつけていく。“Dream In Drive”では山中が歌詞を飛ばして最初からやり直すというハプニングもありつつ轟音とポップなサビメロのコントラストを鮮やかに描き出すと、「大阪でしかやらない曲」と“リコリス”を披露。ピンクのライトに照らし出されたステージが美しい。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ
フォーリミとブルエン、それぞれの戦い方をリスペクトし、だからこそ自分たちは挑戦ができる、と山中は語っていた。そして観客への感謝を告げてメンバー一同、長い長いお辞儀をすると、「それぞれの正義を貫いてほしいと思います」と一言。自分たちの道を切り開き、何を言われようとも戦い続けてきたオーラルだからこそ、その言葉が説得力を持つ。コロナ禍で自身も精神的なダメージを食らっていたことを告白しながらも、前を向いて生きることを説くその目には、仲間に背中を押されていることの安心感が宿っていたように見えた。そしていよいよライブは終盤戦。“カンタンナコト”で全力のヘドバンに手拍子、そしてジャンプで応えた客席が、「本家かましまーす!」(山中)という叫びとともに繰り出された“BLACK MEMORY”で一気にぶち上がる。フォーリミの“BLACK MEMORY”も最高だったけど、やっぱりこの尖った音は最高だ。メンバー全員、汗まみれの笑顔を浮かべながら轟音をぶん回している。「ONAKAMA」の3バンドのなかではいちばん世代が若く、末っ子的なキャラでもあったオーラルだが、自分たちの居場所を自分たちの手で築き上げてきた今、その音と佇まいには静かな自信が溢れている。

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by 日吉“JP”純平Photo by 日吉“JP”純平
ラスト、「呼びたいよね」と山中がGENと田邊をステージに招き入れる。ステージに登場した途端、ふたりで歌詞を飛ばした山中をイジり倒す流れはなかばお約束で、そんなシーンも全員とても楽しそうだ。特にいつまで経っても喋り続ける田邊を制して、ボーカリスト3人のコラボレーションで披露されたのは、オーラルにとってもとても大事な1曲“ReI”だ。この曲はもともと、オーラルが東日本大震災の被災地を訪れたことをきっかけに生まれた楽曲だが、そこに込めた思いとメッセージは、今コロナ禍で苦しむ世界にとっても大切なものを持っていると思う。そんな曲がこうしてバンドの枠を超えた形で演奏されるということ自体がこの「ONAKAMA 2021」というプロジェクトの意味を物語る。3人の声とオーラルの強固な演奏が重なった力強いサウンドが美しいフィナーレを描き出し、大阪公演は幕を下ろしたのだった。(小川智宏)

「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール - Photo by ハタサトシPhoto by ハタサトシ




「ONAKAMA 2021」/大阪城ホール

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする