ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター

ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター - Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)


●セットリスト(昼公演)
01.We are
02.Bombs away
03.カラス
04.The Beginning
05.Deeper Deeper
06.Wherever you are
07.Broken Heart of Gold
08.Mighty Long Fall
09.First Love
10.Taking Off
11.Renegades
12.Stand Out Fit In
13.Wasted Nights


ONE OK ROCKの約1年半ぶりとなる有観客ライブが河口湖ステラシアターで開催された。「ONE OK ROCK 2021 "Day to Night Acoustic Sessions" at STELLAR THEATER」というタイトルで表現されているとおり今回は全編アコースティックセットでのライブであり、この試みそのものがバンド史上初となる。プラチナチケットを握りしめたファンが集まった会場は、開演前から静かな熱気を帯びていた。

ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター - Photo by Kazushi HamanoPhoto by Kazushi Hamano

「アコースティック」と聞くと最小限の音数でしっとり、というのをイメージしがちだが、今回のライブは編成からして非常に豪華。ギター、キーボード、パーカッション、2人のコーラス、4人のストリングスという9人のサポート隊が、メンバー4人を取り囲む鉄壁の布陣である。まずオープナーである“We are”、そして続く“Bombs away”で、今日のライブの世界観はきちんと確定したように思う。すなわちそれは「アレンジや音飾で冒険はするものの、ロックバンドとしての熱量は絶対に落とさない」というものだ。これは観に来たファンとしては相当嬉しかったに違いない。その証拠に、オープニング直後は少し様子を伺う瞬間もあったものの、2曲目からいきなり大きなハンドクラップが沸き起こった。つまりメンバーから放たれるライブの鼓動を全力で受け止めようとするオーディエンスで、この日は埋め尽くされていたのである。

ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター - Photo by Kazushi HamanoPhoto by Kazushi Hamano

その一方で、やはりこのアコースティック編成はTakaの歌唱力を存分に引き立たせたることにも成功した。それが最も顕著に表れていたのが、前半パートに披露された“カラス”だろう。Toruが弾く美しいアコギのイントロに呼応する形でTakaのボーカルが一気に解き放たれるのであるが、あまりの歌の迫力に客席全体が思わず息をのんでしまった。ピッチの取り方、声の伸び具合、そして歌詞の心情を表現した完璧な抑揚など、彼のボーカリストとしての実力をいかんなく発揮したこの場面はライブのハイライトのひとつと言ってよい。また音楽的なチャレンジという意味では、5曲目の“Deeper Deeper”に触れないわけにはいかない。Takaの熱烈なリクエストに応える形でRyotaがウッドベースを弾き、原曲を完全に解体したジャジーなアレンジに様変わりした本ナンバーは、こうした形態だからこそ垣間見えたONE OK ROCKの新しい表情のひとつだろう。

ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター - Photo by Kazushi HamanoPhoto by Kazushi Hamano

途中TakaがONE OK ROCKのライブに初めて来たというオーディエンスに向かって「普段こんなにメロウじゃないですからねー。もうちょっと激しめにやってますからねー。次来る時びっくりしないでくださいねー」と冗談交じりに語りかけたのには笑ったが、仮に初体験がこのライブであってもそれはそれで贅沢な経験であることは間違いない。ライブの心臓部にあたるセトリ中盤では、“Broken Heart of Gold”と“Mighty Long Fall”の2曲が配置され、ここでは一気にドラマチックなモードへと突入。R&B畑でも活躍するコーラス隊の声量をバックに“Mighty Long Fall”はゴスペル調にリアレンジされ、まるで教会に足を踏み入れたと錯覚するほどの荘厳な空気で会場を包み込んだ。このR&Bテイストを引き継ぐ形で選曲されたのかは不明だが、続く“First Love”のカバーは文句なしに素晴らしかった。宇多田ヒカルの曲をONE OK ROCKがカバーするって、そんなものが最高にならないはずがない。バンドからファンに対しての、半ばギフトに近い選曲だったと思う。

ONE OK ROCK/河口湖ステラシアター - Photo by Kazushi HamanoPhoto by Kazushi Hamano

ジャズ、ラテン、そしてゴスペルといった具合に、いつもとは違った角度から自分たちの音楽的な可能性を広げていったONE OK ROCKであるが、終盤に突入するとやはり自分たちの根城であるロックへのシンパシーもしっかりと表現。ここまではどちらかと言えば繊細さや柔軟さに比重が置かれていたTomoyaのドラムだが、“Renegades”では攻撃の口火を切り、重く力強いビートを遠慮なく叩き出す。バンドのテンションは最高潮に達し、続く“Stand Out Fit In”では「ジャンプしちゃってください!」というTakaの呼びかけとともに跳ねるようなビートが一気に炸裂。思い思いに飛び跳ねるオーディエンスを前に、規模こそ違うが彼らのスタジアムライブで何度も見てきたエキサイティングな光景がよみがえる。

ラストの“Wasted Nights”に入る前、Takaは満面の笑みを浮かべて会場にいる全員にこう語りかけた。「俺らは年がら年中夏休みです。こうやってたまに皆さんの顔を見る時だけ、ちょっとした偉人に変われる瞬間があります。それ以外はただのポンコツです(笑)。またこのスーパーサイヤ人みたいになれる瞬間を僕らも心から楽しみにしてます。そしてお互い成長して、僕らの『普通の』ライブでお会いしましょう!」。このコロナ禍の「先」を見据え、そこに踏み出そうとする意志がこの言葉には込められていたと思うし、その希望を表現する曲としてこの“Wasted Nights”ほどふさわしいナンバーはないだろう。全13曲という彼らのワンマンとしては比較的コンパクトな曲数でまとめられた今回のライブであるが、とにかく音楽的な探求心と好奇心に満ち溢れた濃密な時間だった。「ピンチをチャンスに」とはよく言ったものだが、この制限下にあってもONE OK ROCKはさらなる高みを目指し、そして着実に歩を進めていることがわかるライブでもあった。(徳山弘基)

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