●w.o.d. セットリスト
01. イカロス
02. Kill your idols, Kiss me baby
03. 馬鹿と虎馬
04. バニラ・スカイ
05. 1994
06. オレンジ
07. モーニング・グローリー
08. Mayday
●フレンズ セットリスト
01. 夜にダンス
02. NIGHT TOWN
03. cruising memories
04. U.L.K.
05. いいんじゃない?
06. 朝が来た
07. 海のSHE
●ALI セットリスト
01. 仁義なき戦いのテーマ
02. Dance You, Matilda
03. I Want A Chance For Romance
04. Vim
05. TEENAGE CITY RIOT
06. FEELIN’GOOD feat. KAZUO
07. KEEP YOUR HEAD UP feat. KAZUO
08. FIGHT DUB CLUB feat. KAZUO
09. One Step Beyond
10. Funky Nassau
(アンコール)
EN1. LOST IN PARADISE feat. KAZUO
10月13日、「DR. MARTENS PRESENTS - LIVE IN TOKYO 2022」が渋谷・WWW Xで行われ、注目すべき魅力的な3バンドがステージに立った。ALI、フレンズ、w.o.d.という、個性も音楽性もバラバラなこの3バンドの組みあわせに驚いた人も多かったかもしれない。しかし、すべてのアクトを観終えた時、この異種格闘技戦的なブッキングの意味を明確に理解することとなる。音楽文化と密接につながり、そのフットウェア自体が音楽カルチャーの一端を形成してきたという歴史を持つドクターマーチン。そうしたルーツをあたため続けながら新たな文化も生み出していく姿勢に共鳴するように、この日の3アクトは濃密なライブを繰り広げた。
1番手で登場したのはw.o.d.。ヴァニラ・ファッジバージョンのサイケデリックな“涙の乗車券”をSEに登場し、ヘヴィにうねるベースラインが響くと強烈なロックサウンドの“イカロス”でライブがスタート。90年代グランジサウンド直系の荒々しくも内省的な音世界に一気に引き込まれる。フロントに立つサイトウタクヤ(Vo・G)は1994年生まれで、奇しくもカート・コバーンが早逝したのと同じ年の生まれだ。そんな彼らがその時代の音を真っ向から受け継ぎ、現代の音楽としてエモーショナルに響かせている様を観て、まさしくこの夜のイベントの幕開けにふさわしいと感じた。
“馬鹿と虎馬”ではさらに強烈な3ピースのロックサウンドを叩きつけ、フロアでは多くの拳が力強く上がる。そして「最近出したアルバムから、もう1曲めちゃくちゃいい曲やります」と言って“オレンジ”を披露。どこかノスタルジックであたたかなメロディが胸に沁みるギターサウンドとサイトウのやさしい歌声が、w.o.d.のまた違った魅力を映し出していく。そしてソリッドなギターソロから16ビートのグルーヴィなバンドサウンドへと展開し、否応無しに体を揺らす“モーニング・グローリー”、そして彼らのルーツがさらに色濃く滲む“Mayday”へ。w.o.d.の魅力が凝縮された見事なパフォーマンスだった。
続いて登場したのは自ら「神泉系バンド」を標榜し、シティポップやソフトロックの系譜で独自のポップを生み出しているフレンズ。1曲目の“夜にダンス”からフロアではハンドクラップが起こり、えみそん(Vo)の伸びやかでキレのある歌声が響き渡る。フレンズはとにかくライブ巧者。2曲目へ移行する合間には「さっそくですがメンバー紹介を」と小気味よいテンポで各メンバーを紹介していくという、フレンズ初体験のオーディエンスにもやさしいライブ運び。そのフリがあるからこそ“NIGHT TOWN”での三浦太郎(G・Vo・Cho)とのツインボーカル、絶妙な掛け合いがより効いてくる。“U.L.K.”では、「みんなで踊ろう」と、えみそんが丁寧にハンドサインと振り付けをレクチャー。軽快なポップファンクサウンドと歌声が文句なしに気持ちいい。えみそんもMCでこの日のイベントのことを「3者3様のバンドが集まった」と表していたが、w.o.d.では強烈なロックサウンドに魅了されたオーディエンスがフレンズのポップワールドで自然に楽しく体を揺らす。この振れ幅を違和感なくつなぐのが「ドクターマーチン」のアイデンティティだろう。それがオーディエンスにも伝わっているように感じた。
えみそんがエレクトリックギターを手にし、繰り出したのは“朝が来た”。ミドルスローのバラードでその歌声の美しさを響かせ、ラスト“海のSHE”でもギターを弾きながら歌う姿に引き込まれる。ポップさの中にどこかオルタナティブを感じさせるロックサウンドにフレンズの懐の深さを感じた。
この夜のトリはALI。ソウル、ファンク、ジャズ、ラテン、ロック……ルーツは多岐にわたり、そのすべてを飲み込んだ究極にフィジカルな音楽性が彼らの武器だ。この日、ドクターマーチンの「多彩なジャンルの音楽に親和し寄り添ってきた歴史」を、最後にしっかり体現したのがALIだった。サポートメンバーやフィーチャリングを含め総勢10人に及んだバンド編成は、ブラスサウンドを交えた獰猛な生音のグルーヴを携えて、ひと時も体を休める間を与えなかった。サウンドチェックからごく自然に“仁義なき戦いのテーマ”でライブに突入し、ダークにスウィングするサウンドが一瞬にしてオーディエンスの心を捉える。そしてラテンソウルの名曲、エクトル・リべラの“I Want A Chance For Romance”のカバーではルーツへのリスペクトたっぷりに、メンバー全員のサイドステップが完璧にキマる。その演奏にはALI独自のロックのフィールも加味され“Vim”、そして“TEENAGE CITY RIOT”でのアップテンポでエキセントリックなサウンドへと続く。ラッパーのKAZUOをフィーチャリングした“FEELIN’GOOD feat. KAZUO”ではキレッキレのラップがさらにフロアを煽り、オーディエンスのジャンプは後方にまで伝播していった。
LEOは「俺たちのメッセージは常にひとつだけ。音楽は最高だってこと」とフロアに語りかけた。「性別も国籍も年齢も職業も関係ない。俺は音楽の力を信じています」。その言葉から始まった“FIGHT DUB CLUB feat. KAZUO”の爆発力は凄まじかった。ALIはメンバーの出自や音楽性からもごく自然に多様性を体現するバンドであるが、この日は特に「すべてのボーダーを越える」「時代も越える」というメッセージを念頭にセットリストを組んできたような気がする。「俺の愛する音楽を、ドクターマーチンを愛するロッカーたちに捧げます」と言って、マッドネス“One Step Beyond”のカバーを披露。そしてレアグルーヴ・クラシックの名曲、ビギニング・オブ・ジ・エンドの“Funky Nassau”で超絶ファンキーに締めくくるという大団円。鳴り止まぬ拍手がアンコールを促し、「最後1曲。渋谷の曲を!」と、“LOST IN PARADISE feat. KAZUO”。「音楽は最高」のメッセージが、その音と歌とに存分に宿っていた。
ドクターマーチンの「1460」 8ホールブーツがイギリスで初めて誕生したのが1960年。当初はワーキングブーツとしての機能性に訴求したフットウェアだったが、その履き心地の快適さとシンプルながらスタイリッシュなデザインがステージパフォーマンスにも適すると注目され、多くのミュージシャンが愛用。特にザ・フーのピート・タウンゼントが「1460」 8ホールブーツを愛用したのをきっかけに、モッズファッションのアイコニックなアイテムとして定着したり、ザ・クラッシュやセックス・ピストルズをはじめ、時代を越えて多くのパンクロッカーたちに愛されてきた歴史を持つ。そこには音楽ジャンルの垣根も時代の垣根も存在せず、ドクターマーチンのフットウェアは現在に至るまで多くの音楽愛好家に支持されてきた。それはルーツを大切にしながらも、常に新たなモデルを生み出していく革新性も兼ね備えているからこそだ。そうした背景を思えば、まさに今回の「DR. MARTENS PRESENTS - LIVE IN TOKYO 2022」は、ドクターマーチンが発信し続けるメッセージをとても色濃く体現したイベントだったと言える。
3者はそれぞれ音楽性もファッションもまったく異なるバンドである。しかしそれぞれのメンバーの足元にドクターマーチンのフットウェアは違和感なくフィットする。たとえばこの日、サイトウタクヤ(w.o.d.)はラフなグランジファッションにオーセンティックな「1461」3ホールシューズを、えみそん(フレンズ)はガーリーでクラシカルなワンピースに厚底の「AUDRICK 20i」20ホールブーツを、そしてLEO(ALI)は不良っぽいジャケットのスタイリングにMADE IN ENGLAND 「1460」8ホールブーツ(OXBLOOD)を合わせていた。それぞれ強烈な個性を放つスタイリングにドクターマーチンのデザインはナチュラルに寄り添う。
ALI、フレンズ、w.o.d.。この3バンドに共通するのは、ルーツを愛し独自の音楽を追求する姿勢であった。そしてその思想がドクターマーチンの思想とも共鳴するものだということを、この日のライブで感じ取ることができた。これからもドクターマーチンは世界中の音楽カルチャーに寄り添いながら、新たな歴史を築いていくのだと思う。(杉浦美恵)
提供:ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部