マボロシ @ 赤坂BLITZ

マボロシ @ 赤坂BLITZ
「シーンとか音楽を楽しくするために一石を投じられたんじゃないかと思ってるんだよね」

坂間大介=Mummy-DもMCでそう語っていたけれど、まさにマボロシという唯一無比のユニットが成し遂げてきたことをひしひしと感じさせてくれるような、充実感たっぷりのステージだった。3枚目のアルバム『マボロシのシ』をリリースしたマボロシによるツアー『ラップ&ギター vol.2』。そのツアー・ファイナルがこの日の赤坂BLITZだ。ツアータイトル通り、坂間大介のスキルフルなラップと竹内朋康(a.k.a.セクシー)のファンキーなギターの化学反応から生まれるのがマボロシのサウンドである。そうしてヒップホップもロックもファンクもソウルもブルースも飲み込んで“新種の音楽”を作り上げてきた二人の集大成の姿が、ここにはあった。

杏里“オリビアを聴きながら”をまるまる一曲流し、「マボロシを愛したの」という歌詞の最後をループさせたSEで登場した二人。バックにはドラム、ベース、キーボード、DJからなる「マボロシバンド」の面々だ。初っ端から、“雑種犬”“ジェイラップ”“超ジェラス”とアグレッシブなナンバーを畳み掛けるように披露してどんどん温度を上げていく。

とはいえ、単にハード・コアで激しいばかりじゃないのもマボロシの魅力。竹内朋康がピックのかわりにしゃもじを持ってるという小芝居を挟んだ“今宵の晩ごはん”、「この会場の中に近々結婚するカップルはいますか!?」とお客さんに手を挙げさせ、その人達に捧げたプロポーズ・ソング“なんとかなんのさ”と、ときにコミカルな演出も見せながら、お客さんをどんどんハッピーな渦に巻き込んでいく。曲中ではメンバー一人一人のソロも挟み、全員の卓越したプレイヤビリティも見せつける。

この日はゲストの面々もかなり豪華だった。“記念日”ではさかいゆうがスウィート・ボイスを披露し、続く“Music Is Mine”ではCrystal Kayがパワフルな歌声を見せつける。そして1st『ワルダクミ』収録の“廻シ蹴リ”では、ライブでは初めて実現したというオリジナル・メンバーのMUROとDABOが参戦! さらに“日本の親父昭和の親父”では坂間大介の実弟・KOHEI JAPANが登場。竹内朋康がアコースティック・ギターに持ち替え、弾き語りのようなスタイルで披露したこの曲は、兄弟にとって父親がわりの存在だったという、亡くなった叔父に捧げた曲。MCでは忌野清志郎の死にも触れ、じんわりと感動的な空気がフロアを包んでいた。

本編ラストは坂間大介が「アルバムの中で一番魂を込めた曲なんです」と語った“ヒーロー”。坂間がオートチューン・エフェクトをかけた歌声で情感たっぷりに歌い上げ、竹内がこってりとしたギター・ソロをかぶせていく。歌モノを多数収録した新作アルバムを象徴する楽曲で、とにかく特濃のエンタテインメントだったこの日のステージをガッチリとしめくくる。

でも、ハイライトはまだまだあった。アンコールの“あまいやまい”では、なんと椎名林檎が登場!! 「最初に言っておきますけど、まさか、そんなことはないですよ!? 言えば言うほど前フリに聞こえちゃうけど、ホントに来ないからね!」とさんざんMCで釘をさしておいてのサプライズ・ゲストだ。そもそもフィーチャリングとしてステージに参加する機会すらほとんどない彼女。一瞬でフロア全員の視線を釘付けにする存在感は、とにかく圧倒的だった。

ラストはマボロシとして最初に作ったという曲“HARDCORE HIP HOP STAR”を披露し、名残惜しそうに客席にハイタッチしてから、去っていった二人。これでマボロシとしての活動は一旦お休みになるという。これからしばらくは個々の活動がメインになるそうだ。でも、竹内朋康もMCで「まだまだ挑戦できることは沢山ある」と言ってたし、きっと再びシーンの前線で自由な音楽を生み出すチャレンジを繰り広げてくれるだろう。贅沢な一夜の終わりには、そんな期待も抱かせた。(柴那典)

1.雑種犬
2.ジェイラップ
3.超ジェラス
4.今宵の晩ごはん
5.なんとかなんのさ
6.記念日
7.Music Is Mine
8.セクシー
9.You Gonna Get Yours
10.ワンモアヴァース
11.泥棒
12.THE ワルダクミ
13.廻シ蹴リ
14.続・男はまあまあつらいよ
15.日本の親父昭和の親父
16.キッチンくん
17.SLOW DOWN!
18.マボロシのほし(EARTH-GO-ROUND)
19.ヒーロー

アンコール
20.あまいやまい
21.HARDCORE HIP HOP STAR
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