ホフディラン @ 渋谷O-EAST

ホフディラン @ 渋谷O-EAST
ホフディラン @ 渋谷O-EAST
ホフディラン @ 渋谷O-EAST
ホフディラン @ 渋谷O-EAST
賑々しいスウィング・ジャズのオープニングSEに乗って、バック・バンドのBEST 3、そしてトランペットにサックスのホーン隊と、女性コーラス・メンバーがステージ上に現れる。大所帯のサポート陣が先行して演奏をスタートさせ、ようやくベイビーとユウヒが2人で肩を組んで登場した。ホフディランの最新アルバム東名阪ツアー、その名も『95%のお客さんがまた来たい!と言っているツアー』ファイナルの幕開けである。一度聴いただけでメロディのフックが脳内をぐるぐると回り続けるような、即効性・中毒性ともに高い楽曲がずらりと並んだ最新アルバム『ブランニューピース』。そのツアーが東名阪だけというのは、正直ちょっと勿体ないような残念なような感じがしてしまうのだが、新作収録曲も含めてキラー・チューン連打になること必至のステージであり、オープニングから期待が高まって仕方がない。まずは順当に“ホフディランのテーマ”。「オー、イエー!」のコール&レスポンスを繰り出し、フロアを温めてゆく。

2曲目にはさっそく、『ブランニューピース』からのベイビー作“恋はハチャメチャ”だ。《夜が明けたのもわからないような ロクでもない恋をしたい/空気なんか読んでるヒマはない!》というガムシャラでエネルギッシュな必殺コーラスを搭載したナンバー。このフレーズを生み出したアラフォー・渡辺慎のアーティスト・パワーはマジですごい。頭が下がる。“SUPER DRY”でユウヒがハンド・マイクを手に更に煽り立てると、今度はユウヒ作の新曲“悩める球体”へ。彼特有の、まるで複数曲分のメロディーを繋ぎ合わせてミラクルな1曲を生み出すような、アイデアの資源貯蔵量に対してはまるでエコじゃない贅沢なソング・ライティングが炸裂している。豪華バンドによるダイナミックな展開も、CDの数倍のスケール感で迫るようだ。なのだが、どうもさっきからベイビーがそわそわとしている。実は、この次に演奏する曲の歌詞を足元に用意してもらう手筈だったのだが、それが無くて困っているのだそうだ。「じゃあどの曲なら歌えるの!?」とユウヒが問う。急遽予定を変更して“サッポロちゃん”を歌い始めるベイビーであった。はっはっは。なんせこの曲は短い。あっという間に歌い終えてしまって、それでもまだ歌詞は彼の元に届かないのである。ということでボーナス枠がもう一曲。またもやデビュー期の曲“サガラミドリさん”だ。昔の曲はちゃんと覚えてるんだなあ。ここでマネージャー氏がささっとベイビーの側にやってきて、足元の紙を拾い上げてはモニターに貼付ける。あるじゃないか、歌詞! ユウヒのツッコミとオーディエンスの笑い声がベイビーに浴びせかけられる。もう、なんというか、間違いなく本物のワタナベイビーである。そうしてようやく、“フラット”が歌われるのであった。この曲も、今のホフの反則気味にキャッチーな作曲傾向がもろに反映した曲だ。でもこの手のキャッチーさは、恐らくホフの2人が若い頃に聴き馴染んできた無数のポップ・ソングのエッセンスを咀嚼した結果生み出されたものであり、その世代感覚を引き受ける感じが頼もしさと新鮮さをもたらしてくれる構造になっていて、とてもいい。

この後には、新旧のシングル曲が立て続けに披露される展開へ。デビュー・シングルのカップリング“こんな僕ですが”では、ステージ向かって右側のカーテンの奥にサブ・ステージが用意してあり、そこでベイビーが独壇場というか隔離というか、そういう形で歌うというシャレの効いた趣向もあった。「やっぱりホフの顔と言えば渡辺くんじゃないですか」と執拗に言い続けていたユウヒの、気遣いなんだか悪巧みなんだかよくわからない態度も結局のところ謎である。かと思えばユウヒ、名曲“欲望”を沸々としたエモーションとともにじっくりと歌い上げたりもする。この曲もすでにリリースから10年以上が経過しているが、まったく古びない。生々しい情感込みでエバーグリーンを獲得してしまうホフは、やっぱりすごいチームだなあ、と感嘆しきりであった。ベイビーが言うところの「oiパンク・ナンバー」“恋カモン!”を、そしてアルバムどおりに“HI POWER”“LOW POWER”をメドレー風に披露して、終盤はまた名曲群で畳み掛けるという新曲→名曲→新曲→名曲のミルフィーユ仕立てなセット・リスト。“遠距離恋愛は続く”のブレイクはますます時間が長くなってベイビーの写真撮影タイムになったりしているが、それにしてもこういう並びで聴いてみると、やはり『ブランニューピース』の曲群は過去の名曲群とも堂々拮抗する、ナチュラル・ボーン・クラシック揃いである。もっともっと、アルバム単位で聴かれるべきだ。

アンコールでは、まずベイビーが1人で登場し、やはり故・忌野清志郎についての話を切り出した。ベイビーの傍らには、清志郎宅の絵の具でお互いを描き合ったという、つまりベイビーの筆による清志郎像が、立てかけられている。さらりと「2週間ぐらい経って、気持ちが落ち着いてきた」とか言うものだから、余計に感傷が掻き立てられてしまった。ここで披露されたのは、ベイビーが清志郎と共作した“坂道”である。本編中にバラしてしまったアンコールのデビュー曲“スマイル”を披露し、ラストは大所帯バンドのアンサンブルが映える華やかな演奏でステージを終えたホフ。思えば、新作アルバムのツアーなのになぜかデビュー・シングルの収録曲3曲をすべてプレイしてしまったりもしていたが、それでも、名作ポップの手持ちカードが更に増えたことが明らかになったステージであった。すでに彼らのホーム・ページでも告知されているが、7月3日にはデビュー13年ジャストを記念するライブ『13年の金曜日』が、C.C.Lemonホールで行われるそうだ。今回のツアーを見逃してしまった人も、ぜひ今のホフのポップ・マエストロぶりを見届けて欲しい。(小池宏和)

1.ホフディランのテーマ
2.恋はハチャメチャ
3.SUPER DRY
4.悩める球体
5.サッポロちゃん
6.サガラミドリさん
7.フラット
8.カミさま カミさま ホトケさま
9.恋はいつも幻のように
10.こんな僕ですが
11.はじまりの恋
12.キミのカオ
13.欲望
14.恋カモン!
15.HI POWER
16.LOW POWER
17.FREE STYLER
18.遠距離恋愛は続く
19.ニューピース
20.Tokyo Curry Life〜邦題・東京カレー物語〜

アンコール1
21.坂道
22.MY THING
23.スマイル

アンコール2
24.カジディラン≡
25.HAPPY
26.極楽はどこだ
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする