10月21日に待望の1stアルバム『拝啓。皆さま』をリリースしたplentyが、彼らのホームでもある吉祥寺WARPにて2度目のワンマンライブを行った。
彼らが初めてのワンマンを行ったのは今年の5月、同じく吉祥寺WARPにて。その時は『30分一本勝負』と題して、タイトルどおりたった30分間のアクトをいつもどおりの彼らのやり方で展開していったライブだった。たった30分とは言えど本当に濃密な時間で、いろんなものを受け取った気がする。そして、終演後、一人ひとりに「拝啓。皆さま」と書かれた手紙が配られた。今思えば、この時からplentyの策謀は始まっていたのだ。
待望のアルバム『拝啓。皆さま』をリリースし、その発売記念で行われた今日のライブは「発売記念」という表向きの意味以上に濃くて、心の奥深くをひと突きするような衝撃を真正面からくらったような、ただただ茫然と立ち尽くしてしまうライブだった。前回に比べて時間が長かったということもあるけど、それ以上に今のplentyが伝えたいこと、感じていることを受け取れた。
青いライトに包まれたステージを静かに登場する3人。拍手ひとつ起こらず、ステージをじっと見つめるフロア。張り詰めた静寂の空間を裂くように江沼(Vo/G)が“理由”を歌いだした。前回のワンマンから比べたら、圧倒的に歌の表現力がアップしているし、演奏もタイトになっている。一つひとつの言葉と音がきちんと耳に届いて、その度に脳を刺激する。
《もうねぇよここはなにもねぇよ くだらねぇよ全部くだらねぇ 終わらねぇよなにも終わらねぇよ 壊してよ》と叫ぶ“ボクのために歌う吟”や、無邪気な子どもたちのたわいもない笑い声が響く中、演奏された“よわむし”も、《悪くないな…悪くないな…》と執拗に繰り返される“後悔”も、江沼は思っていることをオブラートに包むことなく吐き出す。曖昧で答えがなくて、もやもやした思いを自らへの問題提起として投げかける。本当は見たくない部分とか、見ないですむなら見ないでおきたい部分とか、そういう感情や思いもすべて吐露する。しかもそれだけで終わらない。自分も含めてオーディエンスに向けて「想像する」ということを与えるから、plentyの音楽と向き合うことはものすごく力がいるのだ。相変わらずMCはほとんどなかったのだけど、曲間はそんな「想像」で頭がいっぱいになって、MCすら必要とさせない。
最後に彼らはアルバムのタイトルでもある“拝啓。皆さま”を演奏した。《拝啓、皆さま。僕らはつくづく馬鹿なものですね。学習しない。》と叫び、この世の中の混沌とした状況を壊しにかかるようなラスト。最後を締めるこの言葉はplentyが出した明白な答えだ。だったら学習すればいいだけということ。『拝啓。皆さま』から始まる手紙はここからが始まりで、決して終わりではないこと。これからも続いていくということ。
アルバム収録の7曲以外に今日初めて聴いた曲が何曲かあって、それが新曲なのか、未発表曲なのかは分からないが、そのどれもがメロディーと言葉に力があり、さらに、江沼の特徴ある高音ボーカルが脳内に絡みついて消えない素晴らしいものだった。本当にこれからが楽しみで仕方がないと思うのと同時に、plentyの音楽と向き合う以上、逃れられない真実と向き合う覚悟をしていかなければならない、とも思う。今日この場にいた人は、きっとそんな覚悟とともにplentyのこれからを追っていきたいと思ったはずだ。(阿部英理子)
1.理由
2.ボクのために歌う吟
3.栄光にはとどきそうもない
4.からっぽ
5.よわむし
6.後悔
7.はずれた天気予報
8.(新曲)
9.ゆれて…
10.明日から王様
11.東京
12.拝啓。皆さま
plenty @ 吉祥寺WARP
2009.10.24