UNISON SQUARE GARDEN @ 渋谷クラブクアトロ

斎藤宏介(Vo/G)は、昨日緊張して眠れなかったようで「3時半に寝て12時には目が覚めてしまったんです」と語っていたが、いやいやいや、目が覚めてしまったという割には8時間以上寝てるじゃないですか!と突っ込みたくなったのは僕だけじゃないはず。そんな一幕もあった今宵のライブは、12月11日よりスタートした東名阪クアトロツアー『UNISON SQUARE GARDEN ワンマンライブツアー2009‘冬“QUATTRO SQUARED”~テンポアップのクアトロ4DAYS~』を締めくくる、渋谷クラブクアトロ公演の2日目、ファイナルである。

いつものようにイズミカワソラの“絵の具”をSEに、鈴木貴雄(Dr)、田淵智也(B)、斎藤宏介が十分な間をとりながら1人ずつステージに登場する。今か今かと爆発の瞬間を伺っているオーディエンス、それをたしなめるようにゆっくりとチューニングするメンバー。その距離を一気に詰めるように爆音で鳴らされた今宵のオープニングは“マスターボリューム”だった。一瞬何が起こったわからないほどの大歓声が巻き起こり、今宵のクアトロは初っ端にしていきなりレッドゾーンに突入! 一曲目が終わるか終わらないかで「おまたせしました! UNISON SQUARE GARDENです!」と早口で斎藤があいさつを済ませ、間髪いれず2曲目の“カラクリカルカレ”へなだれ込めば、オーディエンスも力いっぱい拳を突き上げて応えていく。序盤からオーディエンスもバンドも心配になってしまうくらいの飛ばしようである。

相変わらず気がふれたみたいにヘッドバンキングしながらベースを弾きまくる田淵、その凄まじい手数とは裏腹に意外なほど一音一音のアタックが強い鈴木のドラミング、そして甘くも力強いボーカルと田淵に負けないキレのあるステージングでオーディエンスと真っ向から対峙する斎藤――3人はそのようにしてアンコールまでの全21曲を突っ走っていくのだけど、とにかく熱い。テンション、パフォーマンス、サウンド、どこを切ってもいちいち熱い。その熱さはライブを重ねるたびにどんどん増しているような気がする。音楽性で言えばエモでもパンクでもメロコアでもない、ストレートな王道ギター・ロックのはずなのに、そこらのエモやパンクバンドのどのライブよりも熱く、どのライブよりもストイックなのだ。

中盤には、来年2月リリースのシングル『cody beats』から2つの新曲を披露。彼らにしては珍しくノイジーな展開からぱっと空間が開けたようにギターアルペジオが鳴り響く“ギャクテンサヨナラ”、力強くもキャッチーな曲調をロックのグルーヴで加速させたような “cody beats”は過去の楽曲に劣らぬ盛り上がりだ。その後は、ツアータイトルと連動した“デイライ協奏楽団(年末なのでテンポアップしたいver.)”の曲終盤でどしゃめしゃにスピードアップした展開から、一気に“サンポサキマイライフ”と“MR.アンディ”をドラムソロでシームレスに繋いでゆくダンス・ナンバーの流れも見事だった。

ただ、いくらダンス・ナンバーだからといって手のひらを返したようにダンス・フロアにならないところが僕は好きだ。ロック・バンドの4つ打ちがすっかり当たり前のフォーマットとなった今、ダンス・フロア化するなんて珍しくもなんともない。だからこそ、ダンスに成りきれない、いや成りきらずにあくまでロックの中でダンスするという瞬間は逆に新鮮だった。ゆらゆらと横ノリになり、ダンス・ステップを踏むわけじゃなくて、オーディエンスは思い思いに体を投げ出していく。斎藤が序盤のMCで「自分たちの一番楽しめるやり方でライブを楽しんで!」と言っていたこと象徴する、今宵のライブのハイライトであった。

アンコールではお揃いのTシャツに着替えて登場した3人。「いろいろやって充実した1年でしたが、それを形にしたのがこのワンマンです。今年1年ありがとう!」と斎藤が感謝の言葉をオーディエンスに届け、前回のツアーから披露されていた“空の飛び方”(この曲も『cody beats』に収録される)、“水と雨について”、“箱庭ロック・ショー”を一気に畳み掛け、さらにダブルアンコールでもう一度“cody beats”を披露した全22曲、2時間のライブは終了。ステージ上の3人は最後の最後まで、待ったなしの真剣勝負で音をぶつけ合っていた。こんなにもまっすぐなライブ、こんなにもまっすぐなバンド、今年1年僕が見てきたライブ中でも彼らぐらいかもしれない。(古川純基)
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