くるりホールツアー2007「ふれあいコンサート」の東京公演、中野サンプラザ2デイズの1日目。このツアー、東京は2巡目であって、前回のNHKホール2デイズの模様もこのコーナーで7月19日に井上貴子がレポートしておりますので、どういう趣旨のツアーであるかとかどういう構成のライヴなのかとかどういうバンド編成でやってるのかとかはくり返しませんが、各地を回って東京に戻ってきたくるりの音は、さらに手に負えないほどにビルドアップされていた。 同業者や後輩は、くるりのライヴは観ない方がいい。やる気なくすから、「どうやったってかなわん」って。
というのが、数年前からの私の持論なのですが、それは演奏面とかグルーヴ面を指してそう言っていたわけですが、なんかもうそれ以前の、それぞれの楽器の出音からして「もうかなわん」という感じなのだ。ギターがちゃんとギターの音をしているのです。ベースはベースの音だし、ドラムはちゃんとハイハットとキックとスネアの音なのです。何それ。あたりまえじゃん。そうなんだけど、例えばほら、田舎でトマトかじって「ああ、トマトって昔はこういう味だったよなあ」みたいなのあるでしょ?そういう感じなのです、すべての楽器の音が。
本当にいい肉はちょっとあぶるだけで死ぬほど旨い、というのと同じような。違うか。高い寿司屋で握りを醤油じゃなく塩で食わせるとこあるでしょ?そういう感じ。もっと遠ざかった。とにかく、あたりまえのことしかやっていないしあたりまえの音しか出ていないんだけど、それだけでもう圧勝なのです。で、この本来あたりまえのことをできるロック・バンドがいかにいないかってことも立証しちゃっているのです。何度もこのバンドのライヴには圧倒されてきたけど、今日も圧倒された。(兵庫慎司)
くるり @ 中野サンプラザ
2007.09.04