ギターウルフ @ 恵比寿リキッドルーム

ギターウルフ @ 恵比寿リキッドルーム
ギターウルフが「熟練」とか「洗練」とかいった要素を払いのけるように常に感電必至の初期衝動を体現し続けている唯一無二のロックンロール・バンドだ、ということは誰もが知っていることだ。が、昨年12月から続く全国ツアー『GUITAR WOLF ON STAGE』のファイナルであると同時に、「セイジの股関節を固定しているボルトを抜くため半年間ライブ活動休止」を発表したギターウルフの休止前最後のステージとなるこの日のアクトの、本編ノンストップ19曲+アンコール3回にわたってばりばりと鳴り響くジェットな爆音が、今のギターフルフのその「感電必至」度合いのすごさを雄弁に物語っていた。

もちろん、突然何か音楽的新機軸を導入しているわけでもなければ、ライブの展開が変わったわけでもない。というか、“仁義なき戦い”SEに乗ってセイジがビール一気する幕開けから、オーディエンスをステージに上げて自分のギターを弾かせてみたり、アンプをステージ最前面まで強引に運んできたり、観客で人間ピラミッドを築き上げたり、アンコールの最後の締めは“アイ・ラヴ・ユー、OK”だったり……という展開は、もはやミュージカルばりに繰り返し観たものばかりだ。が、ギターウルフの場合は何度観ても「初めて」の驚きと爽快感に満ちている。どんなに新しいテイストや機材を使っても既視感を拭えないアーティストは数多いるが、本来たった一度の初期衝動を鳴らすために執拗に同じパフォーマンスを繰り返し、それが紛れもなく「初めて」の衝撃に満ちている人たちはそういない。そして、「2007年9月以降、セイジの股関節損傷の治療のために1年半にわたってライブ活動休止」→「本人以上にトオル&UGが発狂寸前に悶々」→「昨年4月の日比谷野音で大復活!」というストーリーを経て以降、ギターウルフの初期衝動全身謳歌っぷりにはさらに拍車がかかっている。

序盤から“ジェット サティスファクション”“ミサイルミー”“ジェット ジェネレーション”連射と「エビス! リキッドルーム・ベイベー!」の咆哮でフロアの空気を真っ赤に染め上げると、“エジプトロック”“デビルクチビル”など新作の曲も含めて怒濤のロックンロール大進撃! 2007年の休止前最後のライブもここリキッドルームだったのだが、その時は股関節の痛みをこらえつつ渾身のジャンプをかますセイジにも、それを見守るオーディエンスにも「この先どうなるんだろう?」的な一抹の悲壮感が漂っていた。しかし、この日はそれは皆無。むしろ、100%完全体のロックンロール・ビーストとして復活するためのオーバーホール期間に突入するセイジを見送ろう、という思いっきりポジティヴなファンの熱気が、3人の爆裂アクトを後押ししていた。

アンコールで披露した“DEAD ROCK”“環七フィーバー”のチューニング狂いまくりのセイジの轟音ささくれギターに鳥肌が立ち、2度目のアンコールの“高校生アクション”で「大学生いる? 何科?」とオーディエンスに尋ねたり「お前、委員長!」「副委員長!」「書記!」「生き物係、鳥!」と観客を次々にステージに引っぱり上げて4段の人間ピラミッドを作り上げたりするセイジには笑いが止まらなかった。遠くさいたまスーパーアリーナでステージにオーディエンスを上げて大喝采を浴びていた世界のパンク・アイコン=グリーン・デイも、人間ピラミッドなど思いもよらなかったことだろう。最高のロックンロール・アクトだ。3度目のアンコールで“アイ・ラヴ・ユー、OK”を1人歌い終え、「ありがとう!」という言葉と無数の投げキッス(!)を残してステージを去ったセイジ。半年後の「完全体」セイジは、ギターウルフは、さらにすごいに違いない。(高橋智樹)
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