ザ・クロマニヨンズ @ 新木場スタジオコースト

ザ・クロマニヨンズ @ 新木場スタジオコースト - pic by 柴田恵理pic by 柴田恵理
昨年11月11日にスタートしたザ・クロマニヨンズの『TOUR MONDO ROCCIA ’09-‘10』。とにかく、長い。もう丸々4か月以上やっているのに、まだ終わらない。RO69ではツアー2日目のSHIBUYA-AX公演(11月12日)がすでにレポートされているのだけれど、今回のスタジオコースト公演で終わるわけではない。まだ続く。バンドのキャリア最多公演記録を更新する今回のツアー、絶賛爆走中のクロマニヨンズなのである。

でも、何かがおかしい。例えば新人バンドが、次第に多くのファンの支持を獲得するようになって、名作と言われるような作品を生み出したりもして、ツアー日程やライブ会場の規模を拡大するのは変じゃない。でも、クロマニヨンズの場合は他でもなくデビューした瞬間から、もっと言えばFM802 MEET THE BEAT 2006に突然その姿を現した瞬間から、国民的な大人気バンドだったのであり、以来ずっと、あの名人芸のような真っ直ぐなロックンロールをプレイしているだけである。ちょっと嫌らしい見方をするならば、今よりもデビュー時の方が話題性は大きかったかも知れないのである。しかし現在、4作目のアルバム『MONDO ROCCIA』を携えキャリア最大規模のツアーを行っている。国内のあちこちの会場で、二日間の連続公演を行っていたりもする。一体なんなのだろうか、この常識はずれな感じは。

まだツアー日程を残しているのでセットリストの詳細は控えるが、すでに初日SHIBUYA-AX公演のDVD化が決定していて、その収録曲も発表されているわけで、今回のセットリストも大筋はそれと変わらないものと考えて頂いて差し支えない。つまり、新作アルバム・ツアーかくあるべし、という具合に『MONDO ROCCIA』収録曲が畳み掛けられる形なのだが、これも、おかしい。しつこいようだが、クロマニヨンズは別に『MONDO ROCCIA』でブレイクしたバンドではないし、『MONDO ROCCIA』が彼らのキャリアにおいて大きなターニング・ポイント(たとえばそこから大きく作風が変わった、とか)になったわけでもない。はっきり言って、披露されるべき過去の人気ナンバーはたくさんある。でも、ざっくりとそれらを切り捨ててまで『MONDO ROCCIA』の曲をやるのである。

“酒じじい”途中の桐田による太鼓ブレイクだったり、“恋に落ちたら”ではミラクルな歌詞とディスコ・ビートに合わせてミラーボールが回り出したり、ロックンロールが野放しにされているような極めて自由闊達なクロマニヨンズの表現に対して、オーディエンスはそれを一欠片も逃すまいと食らいついてゆく。バンドは新しい曲をプレイするのが楽しくて仕方がないし、ファンはそれを受け止めて歌ったり騒いだりするのが楽しくて仕方がないのだ。“グリセリン・クイーン”の歌詞になぞらえて言えば、《毎秒が伝説》そのものを地でいく活動であり、ライブなのだ。理想的と言えば理想的なのだけれど、やろうと思ってやれることではない。もちろん『MONDO MOCCIA』より前の楽曲もプレイされるのだが、ヒロトは歌詞をド忘れして飛ばしてしまったり、それをファンが冷やかしたり、ヒロトが笑いながら「うるせー!」と言い返したりしている。

「『MONDO ROCCIA』の中で割と有名になった曲があるんで、それをやります。“レット・イット・ビー”」やら、「おお、もうこんなにやったのか、えーと、今のが“地獄のハイウェイ”でしょ」やら、今度は曲タイトルで嘘までついて『MONDO ROCCIA』の曲をひたすらにやり続けるのである。あ、その“地獄のハイウェイ”のくだりでヒロトは「あっちは今日、休演日だから、あいつらが本当にロックンロール好きなら、ここに来てるはずです」とも言っていた。そして“鉄カブト”で遂に『MONDO ROCCIA』収録曲をすべて披露してしまった。個人的にはこの曲が新作で最も好きなナンバーなので、大変嬉しい。曲調は何の変哲もないロックンロールなのだけど、こういう歌を生み出してしまうから、僕は彼らから目が離せないのだと思う。

或いは、歌詞そのものがロックンロールの取扱説明書のようになってしまうことも多いクロマニヨンズの場合は、キャリアのあらゆる瞬間がロックンロール・ライフの入り口となってしまうのだ。若いファンもいれば、小さな娘さんと一緒に腕を振り上げるパパもいる。常に全年齢対応型であり続けるロックンロール・バンドなのである。『TOUR MONDO ROCCIA ’09-‘10』は今後更に、大阪での2公演、そしていよいよ沖縄での最終日に向かう予定だ。(小池宏和)
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