ダーティー・プロジェクターズ @ 渋谷クラブクアトロ

ダーティー・プロジェクターズ @ 渋谷クラブクアトロ
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ダーティー・プロジェクターズ @ 渋谷クラブクアトロ - pic by Teppeipic by Teppei
まずは、このサイトで行いました、今回の来日公演チケットプレゼント、たくさんのご応募をいただきありがとうございました! 無事、当選者1組2名様をご招待しました(当選された方、会場には行ってますよね?)。

以上、お礼と報告。

ついに実現したダーティー・プロジェクターズ(以下DP)来日公演。渋谷クラブクアトロは祝ソールド・アウト! よかったよかった、と思わず顔が緩んでしまう。しまうのだけど、ここに詰め掛けている観客の顔つきもなんだかそんな風に見える。なんだろう、このウォームフルな空気。オープニングを飾ってくれたMt.Eerieの素朴な弾き語りフォークの1曲1曲にも温かい拍手が起こる。

そして19時45分。いよいよDPがステージに登場。というか、転換の際、ずっとデイヴ・ロングストレス君がステージ上でサウンドチェックをしていたのだけど。特に観客も沸くでもなく、淡々と出音を確認するデイヴを見ていて、で、デイヴはいったんソデに引っ込んで、で、出てきたという。申し訳ないが彼にロック・スター的オーラはない、ということなのだろうけど、そんなことはまったくまったく関係がない。ということが、最初の音が会場に轟いた瞬間に直感。

なんだ、この音! デイヴの左利きのギターから放たれる、それ自体が生き物のように実体化していくとでもいうのか、強烈に肉感的な響き。一音一音が曲終わりのシメでブっ叩かれる最後の爆音みたくドでかいドラム。そして、声、声、声。フロントに陣取った3トップ、つまりは下手から赤いニットキャップがまあなんとも可愛いすぎるエンジェル、センターにニワトリのように首を前後に振りながら歩き回るデイヴ、上手にブロンドが腹が立つほど愛らしいアンバーという布陣の声(歌、なんだけど、声といいたい)がもう、凄まじいのだ。

現在のDPの基調パターンを簡潔に1曲にした1曲目「Ascending Melody」から「No Intention」、「Remade Horizon」、そして師匠とでも呼ぶべきデヴィッド・バーンと共作した「Knotty Pine」までの冒頭だけで、『ビッテ・オルカ』で提出された彼らの新しい「音楽によるエネルギー発電方法」が嫌というほど体感。なんて気持ちいいのだ!

新しい「音楽によるエネルギー発電方法」。これがDPというものだ。それは、今この時代に必要とされる肯定的なエネルギーを、これまでとは違った、できるだけエントロピーのでないやり方で生み出すことは可能かといったトライアルだ。変則的なリズム・パターン、短くカット・オフされたギターのフレーズ、演劇の発声練習のような声の掛け合い、360度の空間をめまぐるしく自在に駆け巡るメロディ、そして突如として沸き起こる爆発! それらのすべては、できるだけ身体を使った音として表れる。お腹からの声、指先の強弱、腕の振り下ろし。だから身体は、原初に立ち返って取り戻されたものというよりも、知性や感情のその先にあるものとして要請されたものだ。インテリジェンスやエモーションに出生地を持つ音楽よりももっと先にある、今この現代において発見されるべき手持ちの身体から導き出される音楽。デイヴ・ロングストレスによる、そのような身体たちのオーケストラとでも呼びたいDPは、すっかすかの要素しかないにもかかわらず、どんな理知的な構造をもったエレクトロニカよりも多弁的で、どんなディストーション・ギターのノイズよりも激情をたたえ、しかもポジティヴなパワーをわれわれに浴びせるのだ。

初期EPなどからの曲も交えながら、キャリアを経巡る選曲でライブは進行。デイヴとエンジェルの2人だけでプレイされた「Two Doves」でこの夜何度目かの昇天。さらには昨年、ビョークと共演するために書かれた楽曲の中から「When The World Comes To An End」も披露! あ、今書いていて、そうか、そういうところがビョークと通じるのかと納得。

そのへんにいる小ぎれいなお兄ちゃんお姉ちゃんたちがまるで満天の宇宙に放り投げるように次々と繰り出す音の軌跡は、アクション・ペインティングのように、これまでに見たことのない絵を描いては消し描いては消していく。観客の動きを見ると、全員がまったく違うリズムの取り方で揺れているのが楽しい。アンバーとエンジェルの至高のハーモニー「Stillness Is The Move」から、ビッテ・オルカ!!!!の「Useful Chamber」で本編終了。音の消えた会場で観客がどよどよとどよめいているその気持ち、同じです。

アンコールは『ビッテ・オルカ』の冒頭を飾った「Cannibal Resource」から、予定では「Fluorescent Half Dome」だったみたいだけど、エンジェルに機材のトラブル。客席から「Rise Above!」とリクエストがかかり、「Rise Above」へ(半年くらい演ってなかったので楽しかったとデイヴ後日談)。そして、最後はボブ・ディランのカバー。半世紀前にレベル・ミュージックとして屹立したフォーク・ソングを、DPは、同様に現代の戦時下へのレベル・ミュージックとして、そしてソウル・ミュージックとして提出する。レディー・ガガがシンボライズする人工美の氾濫した2010年代のアメリカにおいて、DPの非武装なラジカリズムは凄まじい強度を発現していた。

最後に、ライブの翌日、デイヴから送られた日本のオーディエンスへのメッセージを紹介。
「日本のオーディエンスはすごくユニークで、他の世界のどことも違うエナジーがあると感じたよ。昨晩はすごく楽しかった! また戻ってこれるのを楽しみにしてるよ」

セットリストは以下の通り。

1. Ascending Melody
2. No Intention
3. Remade Horizon
4. Knotty Pine(from『DARK WAS THE NIGHT』)
5. Fucked Up For Life
6. Gimmie Gimmie Gimmie/Thirsty And Miserable
7. Two Doves
8. Spray Paint(The Walls)
9. D Henley’s Dream
10. Temecula Sunrise
11. When The World Comes To An End(from 『Mount Wittenberg Orca』)
12. Stillness Is The Move
13. Useful Chamber
encore
14. Cannibal Resource
15. Rise Above
16. I Dreamed I Saw St.Augustine(BOB DYLAN cover)
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