andymori × 神聖かまってちゃん @ 渋谷クラブクアトロ

andymori × 神聖かまってちゃん @ 渋谷クラブクアトロ - 神聖かまってちゃん / pic by Ryota Mori神聖かまってちゃん / pic by Ryota Mori
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andymoriが、6月よりスタートした東名阪ツアー『結婚しようよ』。これはタイトルにかけて、女性メンバーが在籍する3バンドと対バンを行っていくというもので、19日大阪公演はのあのわ、20日名古屋公演はMASS OF THE FERMENTING DREGS、そして今宵はファイナル、渋谷クラブクアトロ公演。対するは、おそらくandymoriとの結婚には一番ほど遠いであろう神聖かまってちゃん。「立ち止まらないでお進みください!右の方にお詰めください!」と何度も何度も呼びかけるスタッフの声、開演時間を過ぎてもまだまだ入ってくる人、人。今宵のクアトロは、明らかに超満員なのである。

まずは神聖かまってちゃん。いつもの「クレヨンしんちゃん」のオープニング曲“夢のENDはいつも”をSEに登場した、の子(Vo/G)、mono(key)、ちばぎん(B)、みさ子(Dr)の4人は、パンパンに膨れ上がったフロアに熱狂的に迎えられる。神が降りてきたかのような凄まじい大歓声。まずの子がひとこと。「なんでこんなに元気あるかな。元気わけろ!」。今宵も、ののしり合いというよりは、ほぼ全編monoへの集中砲火(この日の砲火の対象はmonoが手に入れたiPhone 4、途中でキーボードの電池が切れたこと、横スクロール人生)だったが、以前にあったぐだぐだ感はあまり見られなかった。というかオーディエンスもライブの一部として楽しんでいたし、バンドが場数を踏んできたからか(対バンというのもあるのかもしれないが)、MCと曲のバランスが絶妙。ともすれば、彼らの「行き当たりばったり感」の魅力は失われそうなものだけど、そんなことはなかった。純粋にライブが素晴らしかったからだと思う。

アンセムになりつつある“ロックンロールは鳴りやまないっ”を筆頭に、かまってちゃんの楽曲は、YouTubeやニコニコ動画用に圧縮された安い音源で聴いた方がリアルを感じるし、あの「ざわっ」とするような独特の感覚は、CD音源では何故か得ることができない。しかし、ライブとなるとその感覚が少しずつ脳裏に蘇えってくる。どしゃめしゃなグルーヴを撒き散らしていくちばぎんとみさ子のリズム、度が過ぎるほどの美メロを執拗に鳴らし続けるmonoの鍵盤、それらを何度も何度も奈落の底に突き落とすように、チューニングが狂いまくったの子のディストーション・ギターが切り裂いていく。抑えが聴かない衝動と溢れるほどのセンチメンタリズムが交互に顔を出し、時に攻めぎあい、もみくちゃになりながら転がっていくロックンロール。ほんっとこのバンドはアウェー知らずだ。ラストの“いかれたneet”まで9曲、見事に自分達の世界へオーディエンスを引き込んでみせた。

15分程度の転換の後、青い光がライトアップしたステージに登場したandymori。いつものように横一列に並んだ三人は“CITY LIGHTS”でライブをスタートさせた。あっという間にフロア一面を埋め尽くすピース・サイン。この光景は何度観ても壮観である。続いて“僕が白人だったら”、“僕がハクビシンだったら”、“モンゴロイドブルース”と速射砲のように次々とアッパー・チューンを投下し、大揺れのフロアをひとり残らず熱狂の渦へ巻き込んでいく3人。藤原(B)と後藤(Dr)の前へ前へとつんのめっていくような音源より2割増しの高速ビート、しゃかりきなギターのコード・ストロークはもちろんだが、軽快に言葉を走らせ、メロディとともにロールしていく小山田(Vo/G)のリリックがやはり素晴らしい。

後ろを振り返っている暇なんて全くない、初期衝動の塊のようなロックンロール。それに、笑顔に溢れたモッシュとありったけのハンドクラップで応戦するオーディエンス。しかし、初期衝動と疾走感がこのバンドの全てではなく、ゆっくりと高揚感を焚きつけるミディアム・ナンバー“1984”、モータウン調のベースラインで幕を明ける“ビューティフルセレブリティー”など、時には立ち止まって周りを見渡す余裕も感じられる。

そして、彼らが和製リバティーンズと呼ばれるようにそこからの影響は伺えるのに、何故かコピーには聴こえない。むしろリバティーンズに人生の一部をもっていかれた僕のような人間にとってもリアルに、強烈に響いてくる。R&Bやブルースといったブラック・ミュージックのルーツを自らのものとしていることも大きいのだろうけど、やはり小山田が発する言葉の力にどうしようもなく心が揺さぶられてしまう。彼は、うだつの上がらない日常に嘆き、それに何ら対抗できない自分にいらついている。そこから吐き出される言葉の数々は、3人の紡ぎだすバンド・アンサンブルに選ばれたかのようにメロディの上を転げまわり、ノスタルジーの波となってこちら側に押し寄せてくる。このバンドの描く物語は、驚くほどリアルな輝きをもってオーディエンスに響くのである。

終盤では“スーパーマンになりたい”“Weapons of mass distruction”という新曲も披露された。特に“Weapons of mass distruction”は本当に素晴らしい。地鳴りのようなキック、微かにメロディを奏でるベースライン、ざらついたギター・リフ。それぞれの楽器の音が強靭ながらも、今までの楽曲にはないクリアな形で描き出され、小山田のエモーションたっぷり含んだ歌声に乗ってまっすぐ突き刺さってくる。彼のブログによれば、タイトルは大量破壊兵器という意味だが「人間は放っておいても全員死ぬ。宇宙の運命に殺される。つまりWeapons of mass distructionは人類全体にむけてすでに発動している。太陽の光のように常に降り注いでくる」ということらしい。

本編のセットリストは、これまでリリースされた2枚のアルバムからほぼ半々に選ばれた全19曲。アンコールでは「みんなと一緒に夢の中に行きたいと思います」、そして「神聖かまってちゃん、の子以外!」とmono、ちばぎん、みさ子を呼び込み、大学時代の親友だというマロンがサックスで参加し、井上陽水の“夢の中へ”をカバー。ツアータイトルの通り、小山田&みさ子のデュエットである。これがまた、それぞれのライブの熱狂をリセットしてしまうような奇妙な幸福感があったのだけど…ともかく。神聖かまってちゃんの子、andymori小山田という二人のフロントマンからは驚くほど作為的な部分が感じられず、手法は異なるにせよありったけの衝動性を音楽へぶつけ、こちらの全く予想のつかない展開で世の中の本質を描くセンスがある。本編中盤小山田のMC「神聖かまってちゃんってMC(で話していること)の意味わかってんのかな。意味わからなかったってスタッフに言ったら、けっこう壮平くんもそうなっている時があると言われた」には思わず笑ってしまったが、この二人にはどこか共通点があるような気がする。(古川純基)

神聖かまってちゃん
1.ゆーれいみマン
2.いくつになったら
3.23才の夏休み
4.スピード
5.ロックンロールは鳴り止まないっ
6.夕方のピアノ
7.自分らしく
8.怒鳴るゆめ
9.いかれたneet

andymori
1.CITY LIGHTS
2.僕が白人だったら
3.僕がハクビシンだったら
4.モンゴロイドブルース
5.ナツメグ
6.everything is my guitar
7.すごい速さ
8.ずっとグルーピー
9.グロリアス軽トラ
10.1984
11.ビューティフルセレブリティー
12.スーパーマンになりたい
13.Transit in Thailand
14.クレイジークレーマー
15.サンセットクルージング
16.Weapons of mass distruction
17.ベンガルトラとウィスキー
18.FOLLOW ME
19.SAWASDEECLAP YOUR HANDS

アンコール
20.夢の中へ
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