スピッツ @ ZEPP TOKYO

スピッツ @ ZEPP TOKYO  - pic by 内藤順司pic by 内藤順司
“Spitz JAMBOREE TOUR 2010”のZEPP TOKYO、2デイズの2日目。スピッツが『JAMBOREE TOUR』と銘打つ時って、ニュー・アルバムをひっさげてのツアーじゃないよ、っていう意味合いなわけで(ですよね?)、代表曲と過去のレアな曲や珍しい曲を取り混ぜて、あと新しいシングルがあればそれも入れて、セットリストを作る、という感じだったが、今回は違った。いや、セットリストだけでなく、もういろんな意味で、これまでの『JAMBOREE TOUR』とは違った。というか、これまでのスピッツと違った、とまで言ってもいい。
でもまずは、そのセットリストから。

1 僕の天使マリ
2 8823
3 君は太陽
4 ビギナー
5 愛のしるし
6 群青
7 つぐみ
8 日なたの窓に憧れて
9 スターゲイザー
10 海とピンク
11 新曲
12 ナイフ
13 愛のことば
14 恋する凡人
15 チェリー
16 スパイダー
17 放浪カモメはどこまでも
18 メモリーズ・カスタム
19 俺のすべて
20 ヒバリのこころ

アンコール
21 けもの道
22 花の写真
23 夢追い虫


さて。では、どう違うか、箇条書きにします。

・1曲目“僕の天使マリ”で始まり、本編が“ヒバリのこころ”で終わる、この流れというか、ノリというか、ムード自体。いや、どっちの曲も普通にライブでやる曲だけど、それが頭とケツに来ているあたりや、いつもなら後半の「はい、ここから田村が大暴れし始めます」タイミングでプレイされる“8823”が、2曲目に置かれているところや、4~7曲目の並びの感じや、14~16曲目の並びのこの感じ、なんかこれまでと違いません?

・新曲が多い。こないだのシングル『つぐみ』から3曲(7と14と22)、7月7日に配信でリリースされる“ビギナー”(4曲目。ゆうちょ銀行のCMで流れてるあれです)、そして11曲目の発表予定未定の新曲、つまり計5曲。アルバム・ツアーならわかるが、『JAMBOREE TOUR』でこの新曲の多さは、ちょっと前例がないのではないか。

・で、古い曲や懐かしい曲のセレクトも、なんかいつもとノリが違った。前述の“天使マリ”や“ヒバリのこころ”はある意味定番だけど、“海とピンク”では「おっ!」ってなったし、“日なたの窓に憧れて”には「ええーっ!?」ってなりました。

・そして、何よりも。じゃあ、それら以外の曲、つまりライブで定番になっている曲たちは、いつも通りだったのかというと、これも違ったのだ。何が。「鳴りが」とか「ノリが」とか、そういうことが。
強い。太い。響きが、堂々としていて、グルーヴィーだ。たとえば僕はこの日、さんざんライブで観慣れてきた“8823”で、「あ、この曲の崎ちゃんのドラムって、ポリスのスチュワート・コープランドなんだ」と、初めて気づいた。そういうことだ。どういうことだ。
いや、なんか、全体に、僕が知っているスピッツとは違ったのです。もっとこう、淡々とした、簡素な音のバンドじゃなかったっけ。アレンジは特に変わっていないのに、何でこうも違うんだろう。
言っておくが、にわかファンではない。1991年以降は、つまり1stアルバムのやつ以外は、すべてのアルバムのツアーを観ていると思う。何かがあったとしか思えない。どうしたんだ。何があったんだ、スピッツ。

って、実はこれには前フリがあったのを、観ていて思い出した。
もう何度も何度も書いたことだが、そもそもスピッツは、「ツアー1本目はボロボロ→1本ごとにだんだんよくなっていく→ツアー前半戦のラスト頃にはもうすばらしいライブ・バンドになっている→でも、しばらく置いて後半戦の1本目になると、またボロボロになっていて1からやり直し」ということを、20年以上くり返してきたバンドだ。理由は知らないしわからない。ただ、そういうバンドだ、としか言いようがない。
そんなスピッツが、昨年12月に渋谷O-EASTで行われたフラワーカンパニーズ20周年ライブに、ゲストで出た。本来ならライブをやっている時期ではないので、この1本きりなわけだ。「あっちゃあ。ボロボロだろうなあ、これは」と思った。で、観て「あれ?」ってなった。
ボロボロじゃなかったのだ。ツアー後半の時期みたいな、すばらしいライブだったのだ。不思議だった。つまり、その、昨年末の時点でスピッツは、既に何かが変わっていた、ということになる。

そういえば。スピッツは基本的に長いツアーをやるバンドなので、いつも「ツアーが終わるまではセットリストを書かないでください」って方針でやってきたけど、今回は「スペシャルサイトで本日の演奏曲を即日公開!」という企画をやっている。だから僕も初めて、こうして平気で書いている。というのも、これまでとは大きく違う。

「いろいろ変わっていくけどスピッツは変わらないねえ」って言われたい。というようなことを、後半、マサムネはMCで言っていた。確かにそういうスタンスのバンドだけど、でも、この日のライブは、その「いつも変わらないスピッツ」を、大きく裏切っていた。そして、それはものすごく、いい裏切りだった。とにかく楽しかったです、新鮮で。


おまけ。あと、MCもなんか違った。というか、おもしろかった。
ワールドカップを何度もネタにしていたのは、パラグアイ戦3時間前だったのでわかるが、それ以外も。
昔、ローリング・ストーンズが初来日した時に、テツヤが「ストーンズのバック・ダンサー募集」というオーディションに行こう、と言いだして、マサムネは逃げたけど田村とテツヤは行ったという話をしたり。マサムネが、筒美京平トリビュートアルバムに参加した時に歌った“木綿のハンカチーフ”をちょっと披露したり。その流れで、「あの時、筒美さんに『草野くんは“よろしく哀愁”(郷ひろみ)が合うんじゃないかな』と言われた」という話をして、その曲もちょっと歌ってみせたり。そしたら微妙にものまねが入っていて、メンバーもお客さんも大笑いになったり。

特に、ハイライトは、9曲目“スターゲイザー”の「♪あしたきみがいなーきゃーこまーるー」のところで「♪……たきみがいなきゃーこまーるー」って「あし」を消して歌ってしまい、曲が終わったあとにひとりでそこだけ歌い直したシーンでした。「歌詞がとんだんじゃないんです、一瞬コードがわかんなくなっちゃって」と言っておられました。満員のZEPP、大ウケでした。(兵庫慎司)
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