椿屋四重奏 @ SHIBUYA-AX

椿屋四重奏 @ SHIBUYA-AX
椿屋四重奏 @ SHIBUYA-AX
椿屋四重奏 @ SHIBUYA-AX
椿屋四重奏 @ SHIBUYA-AX
今年2月、アルバム『CARNIVAL』のツアーを最後にギターの安高が脱退し、新たに3人体制となった椿屋四重奏。息つく間もなくフジテレビ系列の昼ドラ『娼婦と淑女』の主題歌となったニュー・シングル『いばらのみち』を5月にリリースし、前作から1年という椿屋史上最速のタイミングでニュー・アルバム『孤独のカンパネラを鳴らせ』を完成させ、まもなく発売というタイミングで今年も恒例の『熱視線』を開催! 8回目となる今回は『KICK START MY HEART』と題して、名古屋、大阪をまわり、本日 SHIBUYA-AXにて東京では半年ぶりとなるワンマンを行った。

場内が暗転すると「悲愴 第2楽章」のピアノの優しい音色が流れる。青い光に照らされる中、メンバーが一人ずつステージに現れると、フロアからはこの日を心待ちにしていたオーディエンスの割れんばかりの大歓声が沸き起こった。まず驚いたのは中田の衣装。紫のTシャツに黒のトップスを羽織り、細身の黒パンツ姿だ。セットアップでキメたイメージを見慣れているせいか、とてもシンプルに感じる。でも、それはスーツという鎧を脱ぎ捨てて肩の荷を下ろし、ありのままを差し出すような姿にも見えた。しかも、ライブのオープニングが“不時着”だったから、なおさらだ。≪ここがどこであろうと/僕はかまわない≫という言葉が突き刺さり、今ここからまた新たな椿屋が始まるということを教えてくれる。

ライブ初っ端から、昼ドラ『娼婦と淑女』の執事、藤堂さんが突如ステージに現れ、水をサーブするというサプライズが。会場がどよめく中、「藤堂さんも出たことだし、この曲行きますか」と“いばらのみち”をプレイ。中田はハンドマイクで力強くドラマティックに攻めていく。今回のツアーからサポートギタリストとして、中田の中学の頃からの幼馴染である手島氏が新たに参加しており、これまでどおり中田がハンドマイクで楽曲を披露していくというプレイスタイルは変わらない。

今日のライブを観ていて一番感じたのは、初めて椿屋四重奏のライブを観た時に感じたあの衝撃や高揚感を今の彼らにも同じように感じるということ。“一刹那”や“群青”といった初期の曲をやっていたからということもあるけれど、それだけでは説明のつかない、今の椿屋だから鳴らせる新鮮さが溢れていたのだ。特に“群青”から“ミス・アンダースタンド”への流れは結成10年という時の流れを感じさせながらも、決して変わらない椿屋の根底に流れる血のようなものを感じる。ぐっと前かがみでソリッドなギターをかき鳴らし、叫ぶように歌う中田。めまぐるしい展開を見せる小寺のリズムと折り重なるように疾走感を生みだす永田のベース。すべてがぶつかって激しい爆発を起こすような感覚はずっと変わらない。

今日のライブは、結成10周年のアニバーサリー的な位置づけを強調したものではないけれど、やはりセットリストはこの10年を踏襲していて、アコースティックギターで哀愁たっぷりの弾き語りから始まった“陽炎”や会場全員のコール&レスポンスから入った“熱病”など、久々に聴く曲も多かった。そんな中、8月4日に発売されるニュー・アルバム『孤独のカンパネラを鳴らせ』からの新曲も披露。加速度を増して突き進んでいくような“LOOK AROUND”、YANCYのオルガンと警笛を鳴らすようなギターのフレーズが軽快にドライブしていく横ノリの“思惑と罠”。来るアルバムへの漲る自信を見せ、私たちの期待を煽る。

後半、中田は終始ハンドマイクでステージを縦横無尽に歌い歩いた。“サイレンス”では狂ったように叫び、“恋わずらい”では艶やかに歌い上げ、“CRAZY ABOUT YOU”ではくるくると回りながら弾むようなポップを奏でる。どの曲を観てもやっぱり、今日は新鮮だ。中田も自ら「とても出来がいいです!」「新しい椿屋はどうですか?いいだろう?」と豪語していたけど、本当に今の椿屋四重奏はいいと思う。これまで重荷のように背負い込んでいたバンドの運命を良い意味ですべて下して、背伸びせずに、ありのままを表現している余裕すら感じられる。中田はニュー・アルバムについて「魂を削りました。全身全霊をかけました」と言っていたけど、本当にそういうことなのだと思う。孤独も迷いも喪失感もすべて内にあるものを飾らずに曝け出すことで、椿屋四重奏はまた新しいスタート地点に立ったのだ。

ニュー・アルバムのリリース後には全国ツアー『TOUR'10「BRIGHTEST DARKNESS」』が決まり、東京は10月16日(土)日比谷野外大音楽堂、12月26日(日)中野サンプラザにてライブが決定! 中田は「慣れないハンドマイクに初めて挑戦したけど格好悪かった5年前の野音」、「半分しか埋まらなかったカウントダウンライブ『中野サンライズ』」などと自虐気味に過去を振り返っていたけど、今の椿屋四重奏にはそれも全部リベンジできるだけの逞しさが備わっている。本当にこれからが楽しみだ。(阿部英理子)

1.不時着
2.手つかずの世界
3.舌足らず
4.いばらのみち
5.I SHADOW
6.トーキョー・イミテーション
7.LOOK AROUND
8.moonlight
9.陽炎
10.小春日和
11.一刹那
12.群青
13.ミス・アンダースタンド
14.熱病
15.思惑と罠
16.サイレンス
17.恋わずらい
18.CRAZY ABOUT YOU
19.螺旋階段

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