ONE OK ROCK @ Zepp Tokyo

ONE OK ROCK @ Zepp Tokyo
ONE OK ROCK @ Zepp Tokyo
ダイナミックに轟く4ピースのバンド・サウンドの中で、Taka(Vo.)は演奏中にも執拗に「気合入れろ!」だの「お前らの元気は、そんなもんか!?」だのと煽り立てているのだが、はっきり言って、みっちりと埋まったZepp Tokyoは唐突に客電が落とされたオープニングの瞬間から、一面が黒く波打ち声を上げる沸騰ぶりを見せている。Takaは、それを更に引き上げようとしているのである。チケット代以上の満足感を得るまでは誰一人としてこの会場から帰さねえぞ、とでも言いたげな、貪欲なコミュニケーション願望を剥き出しにしていた。『ONE OK ROCK 2010 This is my own judgment TOUR』、長期に渡る全国ライブ・ツアーの序章を締めくくる、Zepp Tokyo2デイズの初日公演。ワンオクはこのあと各地のサマー・フェスを転戦し、9/27の宇都宮公演からツアーを再開することになる。11/28には、日本武道館のステージも控えている。

美麗なフレーズから硬質なリフまで、自由自在にギターを弾きこなすToru。ファンキーなダンス・ナンバーでは必殺のスラップ・ショットを繰り出していたベースのRyota。そして様々なリズム・パターンとともに披露される楽曲群を、余裕すら感じられる安定感で支え続けていたドラムスのTomoya。今のワンオクは、4ピースという編成から描き出されるダイナミックで重厚なアンサンブルと、テクニカルな展開を自由に乗りこなしてゆく身軽さを、同時に受け止めさせるパフォーマンスを見せてくれる。なぜボーカルとギターとベースとドラムスなのか。ロック・バンドはそういうものだから、ではなくて、この編成でやるとこういうこととか、こういうことが出来るからだという、極めて説明的で目から鱗が落ちるようなパフォーマンスになっているのである。

そしてフロントのTakaだ。シャウティング・ボーカルから穏やかな美声までを聴かせる表現力(作品で聴くよりも生のステージの方が、声が映える気がする)や、終始ステージ上をステップし跳ね回っていても疲労を感じさせない驚異的なバイタリティ(長いパンツを穿いているので見えはしないが、鍛え込まれた脹脛の躍動する筋肉が透かし見えるような足取りだ)、そして踊ったりするわけでもないのにちょっとした仕草で観る者の目を惹き付ける独特のスター性が凄い。4人が4人とも、テクニックをひけらかすというより、バンドで描き出す表現の幅を広げるために技術が磨き上げられているという、若くしてプロフェッショナルな意識が随所に感じられる演奏を見せている。

中盤、最新アルバム『Nicheシンドローム』の楽曲群が固め撃ちされる。シングル曲“完全感覚Dreamer”で大きなシンガロングを巻き起こすと、Takaが「大丈夫かー!? 苦しい人は手を挙げてください!」とフロアに向けて声を掛けるのだが、ここで軽く50人を越えるオーディエンスが一斉に挙手するので、直後に笑いも巻き起こっていた。「隣につらそうな人がいたら、助けてあげてください。次の曲は、大切な友人が結婚するときに作った曲です」と甘美な“Wherever you are”がプレイされる。海外のハード・ロックやメロディック・パンクのスタジアム級バンドが時折、メロウなバラードを披露すると特別な美しさが感じられることがあるが、それに似たスケール感を受け止めさせる一曲であった。ここからのドラマティックな展開を見せる“Yes I am”とワンオクのユニークな言語感覚がズバズバと飛び込んでくる“じぶんROCK”までの3曲は、今回のステージにおけるハイライトになっていた。

「今回、ONE OK ROCKのライブに初めて来た人って、どれぐらいいるの? ……ええっ!? こんなに!? 最初から一番前にいるんだ(笑)。本当かよ。ちなみに、明日も来る、っていう人はどれぐらいいるの?」とTaka。またもやオーディエンスの手が一斉に挙げられる。その光景に、思わずToruが「同じ人じゃん」と言葉を挟み込んでいた。「ほぼ同じ人ですね(笑)。マズイ、MC変えなきゃ! 急遽考えなきゃ!」。そして最近、Ryotaが英会話を習っているという話題へ。「じゃあ英語で自己紹介して」というフリに「マイ・ネーム・イズ・リョータ。アイ…フロム……ジャパン……いきなりはキツイ! 次までには何か喋れるようにしとくわ!」とギブアップしてしまう。オーディエンスとのやりとりによって、武道館公演で彼の実力が明かされることになった。更には、今回のステージの本番前にメンバーで学力テストを催したとか、ずいぶんと長いMCタイムが取られていたが、その中で最も気になったのは、Takaがこんなことを告げたときであった。

「対バンする先輩バンドとかが本当にカッコ良くて。もしかしたら今日、バンドのライブを初めて観る、っていう人もいるかも知れないけど、ぜひいろんなバンドの音楽を聴いて、ライブを観てみてください。そこには様々な、感情や、希望や、メッセージがあります」。

自分たちのワンマン公演で、こういうことをわざわざ言うパフォーマーはほとんどいない。でも若いバンドであるワンオクは、同じように若いオーディエンスにとって、自分たちがロックの世界の「入り口」となるバンドであるかも知れないということを、自覚しているのだ。共闘するバンドたちをリスペクトしながら、同時に自分たちの立ち位置を見据えた上での自信も汲み取れるような、そういう深みのある言葉だった。

長めのMCタイムで充分に体力を回復させたワンオクとオーディエンスは、怒濤の終盤戦へと突入していった。フロア一面にタオルが振り回され、歌詞がオーディエンスに丸投げされる。序盤からのTakaの執拗な煽り方がここにきて腑に落ちるような、「オーディエンスあってこそのライブ」が、目に見える形でそこにあった。ワンオクな健全なロックのライブを、徹底的に鍛え上げられたスキルによって、健全に描き出すことが出来るバンドである。切なさを巻いて爆走するデビュー・シングル“内秘心書”で、今回のステージはクライマックスを迎えた。

なお、開催が迫るROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010において、ONE OK ROCKは今日からちょうど2週間後の8/6(金)、WING TENTに登場する予定になっている。(小池宏和)
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