今年で4回目の開催、くるりプレゼンツのフェス、「京都音博」、今年も大成功に終わりました。既に、昨日の私のブログにて、観ながらリアルタイムで全アクトの模様、レポートしました。ここから。→ http://ro69.jp/blog/hyogo/40548 全16回にわたって続いていますので、まだの方、ぜひご覧いただけると幸いです。
というわけなので、ここでは、各アクトに関して、その時書きもらしたことや、蛇足など。
1.くるり・ザ・セッション
「リバー」の途中でステージに登場し、ギターを提げ、すんごいソロをキメて場を一気に持っていった大村達身。曲が終わって、このメンバーでのライブを今観ることができている、その事実に感無量のお客さんたちの前で、岸田に「最近どうですか」ときかれ、「このシャツ(昔よく着ていた白い半袖Yシャツ)、この夏初めて着たんやけど、そしたら汗かいて、今乳首とかいろんなもんが透けてて……恥ずかしい」みたいなぐだぐだなお答えを返し、場のウェットな空気を壊す。偉い。
あと、シメに「ロックンロール」やったんだけど、考えたらこれ、ドラムがクリストファーだった頃の曲だから、もっくんが叩いている、というのはすんごいレアですね。終わってから気づいた。
2.andymori
ライブ、ほんっとによかった。なんていうか、ガイジンみたい。って、僕は別に洋楽至上主義者じゃないし、「洋楽みたい」とか「イギリスのバンドなら──」みたいな物言いって、むしろ抵抗があるほうなんだけど、今日は素直にそう思ってしまった。別に演奏が上手いわけじゃない。ただ、鳴りとか、3つの楽器と歌のからみかたとか、グルーヴそのものとかが、UKのバンドみたいなのです。なかなかいないと思う、こんな人たち。
小山田、MCで、くるりが大好きだと言っていました。
3.遠藤賢司
終始ひとりきりでのステージ。で、3曲目にやった「夜汽車のブルース」でのこと。ここ梅小路公園って、1分に1回くらいのペースで(30秒に1回かもしれないし2分に1回かもしれません。適当ですみません)、ポッポーってSLの汽笛の音が響くんだけど、この曲のブレイクの部分、エンケンさんが「♪しゅっしゅー、ぽっぽー……」って、歌とギターの音が消えた、まさにその瞬間。絶妙のタイミングで、「ポッポー」って、SLの汽笛が鳴ったのだ。見事でした、偶然とはいえ。客席、「おおーっ」て、どよめいた。そのあと、名曲「夢よ叫べ」でシメてくれました。
4.世武裕子
ステージ左、中央を向いてドラムを叩くもっくん、中央にキーボード鈴木ちひろ(吉田省念と三日月スープ)、右にピアノ&足踏みベース……というか、エレクトーンみたいに左足で鍵盤を踏む形のフットペダルがついたエレピを弾きながら歌う本人、というフォーメーション。なんにも奇をてらわない、ただただオーソドックスなのに、音が響くことで、この場の気温や湿度や風の向きや強さが変わるみたいな、そんなマジカルなものを持った歌とピアノでした。岸田もアコギで2曲参加。
5.京都魚山聲明研究会
今年の音博、一番のチャレンジでした。えー、ステージにはお坊さんが7人くらい横並び。で、たまに、金モノをチーンとか鳴らしながら、お経のように歌のようにホーミーのように声を発し続ける、そんな全7曲……曲っていうのかな、あれ。「聲明」(しょうみょう)という、音楽ジャンルというか、音楽スタイルだそうです。というか、今読み直して思ったけど、この説明、何も嘘は書いてないけど、あんまり伝わらないな、これだと。えーと、「京都魚山聲明研究会」で検索かけても京都音博関係のサイトしかひっかからなかったけど、「聲明」だと、Youtubeで若干ひっかかったので、見てみてください。この方たちの映像ではありませんが。
6.二階堂和美
昨日もくどいくらい書いたけど、ものすごいテンションの高さでした。怖いものすら感じるほどでした。MCのたびに息を切らしていて、心配になりました。昔、僕が中高生の頃に、踊る&走るの両方の行為をしながら歌う女性演歌歌手がいて、一時期人気が出てよくテレビとかで見かけたんだけど、その人のことを思い出しました。名前忘れた。でもすごいインパクトだった。
7.ジム・オルーク
2006年あたりから日本在住のジム・オルーク、だけあって、ベース、ドラム、キーボードのメンバー3人も、日本人。ベースがたぶんゴメス・ザ・ヒットマンの人じゃないっけ、とお見受けしました。彼が集めただけあって、3人ともえっらい優れたミュージシャンでした。
あと、ジム・オルークって、昔に比べると、音楽性がどんどん普通に、あたりまえになっている気がした。で、そうなればなるほど、さらに、どんどんすばらしいものになっている気がした。
8.ザ・ベンチャーズ
すんごいよかった、というかおもしろかったのは、昨日書いた通りですが、観ながら、「そういや俺、ベンチャーズのこと何にも知らないわ」と思い、プレステントでウィキペディアとかで調べたところ、いろんなことがわかりました。ギタリストのノーキー・エドワーズ、とっくにいないと思ってたし、今日のステージもいなかったけど、一回脱退したあと復帰して、毎年1月と8月に行っている来日ツアーのうち、1月のほうは毎年来ている、とか。あと、そのノーキー・エドワーズ、オリジナル・メンバーかと思っていたけど、実は違ってリード・ギタリストとしては2代目だとか。それから、曲によってギターとべースを持ち替えたりするのも、今日、ここで観るまで知りませんでした。おもしろいのでみなさんも調べてみるとよいと思います。あと、10曲目「Wipe Out」でセッション参加した岸田&佐藤、とにかくうれしそうでした。
9.くるり
こっちは岸田・佐藤・BoBo・ハンバートハンバート佐藤良成・フジファブリック山内総一郎の5人編成でのライブ。全員黒いワイシャツに黒いパンツ、といういでたち。私の昨日のブログに、出番直前の岸田&佐藤の写真が載っていますが、こういう感じです。くるり・ザ・セッションでは、過去の名曲たちをどんどんやりましたが、こちらは、ニュー・アルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』の曲が中心でした。
昨日も書いたけど、後半、「ばらの花」「坂道」「麦茶」の流れ、ほんとにやばかった。あと中盤の「魔法のじゅうたん」「さよならリグレット」「Baby I Love You」のパートもよかったし。アンコールの「東京レレレのレ」以外は、この日は全体に、「しっとりくるり」なライブだったのかもしれません。それが、大変によかった。
それから。ここ1,2年くらい、ライブを観るたびに思うし、ニューアルバムを聴いても思ったけど、岸田、ボーカリストとしてどんどんよくなっている。「うまくなっている」というより「よくなっている」感じ。歌唱技術の向上とかじゃなくて、歌から伝わってくる感情や意志の情報量と、そのリアルさが、ライブを観るたびに増えている感じ。
あと、くるり・ザ・セッション、世武裕子、ベンチャーズ、そしてこのくるりで、計4回出演したんですね、岸田くん。おつかれさまでした。
京都駅から徒歩15分、周囲にはマンションや民家が建ち並び、会場右手には走り抜ける新幹線が見える環境。同じ芝生の上で、ずっと1つのステージを観る。お酒、持ち込んで飲んでもいいけど、売ってはいない。そして、他のフェスとは明らかに異なる、というか、くるり以外絶対にやらないし思いつかない、このブッキング。いろんな意味で本当に独自なこのフェスだけど、4回目なので、参加者も、やる側も、ここでどう考えてどう行動すればいいか、みたいなことをよくわかっている、そんな成熟というか、余裕を感じました。楽しかった。
ただ、もしできるなら、ビールは売ってくれるとうれしいです。公共の公園だから難しいのかな。とりあえず、近所のコンビニで買ってきて、入り口でリユースカップに移し替えている間に、ライブを観逃してしまうので、今年は1杯でがまんしました。(兵庫慎司)