DOPING PANDA@赤坂BLITZ

DOPING PANDA@赤坂BLITZ
今年、自主イベント・シリーズ『DP SUMMIT』を展開していたDOPING PANDAが、夏のヨーロッパ・ツアーを経て久々に国内のステージを踏むことになった『DP SUMMIT SHORT TOUR』。今回レポートする東京公演を皮切りに、9/23に京都、9/24に神戸、9/26に名古屋とショウを繰り広げてゆく予定になっている。『DP SUMMIT』は、4月のプレイベントがワンマンで行われた後、対バン企画として展開されてきたことも特徴だが、今回のショート・ツアーではすべての公演においてチェコ出身のロック・バンド=Vipsana Fixa(ヴィプサナ・フィクサ)が帯同する。このヴィプサナ・フィクサは、7月にチェコで開催されたロック・フォー・ピープル・フェスティバルでドーパンと共演を果たしたことが縁となって互いに親交を深め、今回のツアーのゲストに招待されたということらしい。この初日公演から早速、そのヴィプサナ・フィクサの先攻パフォーマンスによって、ステージの幕が切って落とされたのだった。

男性4人組のバンドであるヴィプサナ・フィクサは、長髪ブロンドのVo./G.によるまくしたてるようなチェコ語のボーカルを核として、パンキッシュに転がるロックンロールや大振りなギター・リフが決まるグルーヴ・ロック、美しいギター残響音を描き出すポスト・ハードコア風のナンバーなど、幅広いスタイルの中で感情からのめりこんでゆくような熱いステージを構築していった。ヨーロッパ・バンドらしいマーチング・ビートを駆使したアッパーな楽曲も盛り上がる。正直言って個人的にはまったく知らないバンドだったし、チェコ語の歌もさっぱり聴き取り不可能なのだが、ワイルドで思い切りの良いパフォーマンスがガツンと胸に訴えかけてくる。ドーパメイニア達のレスポンスも上々で、25分ほどの短いパフォーマンスながら終盤にはフロアから拳の突き上げられるシンガロングまで巻き起こしていた。後のFurukawaの弁によると、「マジでめちゃくちゃ人気あるからね」とのこと。

そして19:42、一際大きな歓声に包まれてドーパンがステージに登場。チェックのシャツを着たカジュアルな装いのFurukawaはともかく、MacBookとともにステージ上手に控えたHoujou、なんとスッキリの坊主頭になっている(理由は「暑かったから」らしいのだが、知人の結婚式のことをすっかり忘れていて、坊主頭にスーツというコワモテ具合になってしまったそう)。さて、まずは“anthem”のノスタルジックな、浮遊感のある歌とギターのメロディにゆったりとオーディエンスを巻き込んでゆく3人である。まあ次の瞬間にはけたたましいダンス・ビートと眩いストロボによってフロアは揉みくちゃになってしまうわけだが、このドーパン流の歌心をいの一番にバシッと提示してしまうスタイルはとても良いと思う。華やかなシンセ音のリフレインも加わって、徐々に激しくアクロバティックなコンビネーションを披露してゆくドーパン。“Lost & Found”の最後には、早くもがっつりとOIコールを巻き起こしていった。

「おかえりおかえりって、俺たちどこにも行ってないよ? ずっと世田谷にいたよ? むしろ世田谷にしかいなかった、俺。今日は久しぶりに赤坂に来ました、DOPING PANDAです! あまり人前に出てなかったから、俺様でもMCでしどろもどろになったりすんのかな、と思ってたんだけど、きのっぴー(木下理樹)とラジオやってたせいか意外と喋れて自分でもびっくりしてます。…まあ、弓でもバネでもそうじゃん? 引っ張れば引っ張るほど飛ぶわけで、俺たちは力を溜めながら爆発する瞬間を待っていただけだからさ。今日が爆発する日かも知れないぜ? 最後までよろしく!」と、久々でもスター全開なFurukawaである。さて、ここからは今年、配信でリリースされていた新曲を交えてのパフォーマンスとなったのだが、やはりこの辺りも、情感のこもった歌心を見せつけてゆく曲になっているのがいい。アゲまくるダンス・ロック文法はもちろんドーパンにとって大きな武器なのだけれど、ソング・ライティングの豊かさやアレンジの巧みさといった、あの手この手でバンドのポテンシャルを改めて知らしめる感じが、とてもワクワクさせる展開になっているのだ。

そして「ここからノンストップだー!」と切り出されたファンキーな“YA-YA”からの、問答無用のダンス・ロック・チューン連打である。フロアに一面のスウェイを巻き起こしながら、「お待たせしましたー! お前らこれを待ってたんだろう!」と更に火に油を注ぐFurukawaが心憎い。「ムゲンダイ・ダンス・タイム」というコンピューター・ボイスに似せたたった一言の肉声も、ドーパメイニアにとっては絶好の燃料である。2階席からは、オーディエンスの余りの盛り上がりぶりに驚いたのか、ヴィプサナ・フィクサの面々が身を乗り出してステージとフロアを見つめている。必殺のギター・リフの中にもFurukawaは、しっかり恒例の開脚跳びプレイを決めていた。余りにも激しい展開に、最後にはファルセットを効かせる喉がちょっとつらそうでもあったけれど、七色の照明が煌めくステージでのダンス・タイムをきっちり完遂してみせたのであった。

「本物でいるのもしんどいわ! 俺、今日、分かると思うけどめちゃめちゃ自信があったの。本物のミュージシャンになるために日々ストラグルしてるんだけど、研究とか練習を越えたところでの、体力の衰え? やっぱライブは間を空けちゃだめだー。体力配分まちがえた!」とアンコール時に少々の反省を吐き出すスター。でも、多様性と意外性に満ちた前半と、ダンス・ロックつるべ撃ちモードな後半という構成は、確かに本人たちにとってはしんどいはずだが面白かった。ここで改めてヴィプサナ・フィクサが紹介され、一斉に2階席を見上げるオーディエンスからも拍手が贈られる。いい感じだ。今回のツアーに京都公演が盛り込まれているのは、「たぶん(ヴィプサナ・フィクサが)京都に行ってみたいだろうから」という配慮が盛り込まれているらしい。なるほど。気が利いている。京都の夜を楽しみにしてもらいたい。

なお、今後の『DP SUMMIT』についても、新たな発表があった。10/30(土)の新代田FEVERにて、YOUR SONG IS GOODとの2マン決定である。今後も更にスケジュールが書き加えられる予定ということなので、随時彼らのオフィシャル・サイトをチェックして頂きたい。(小池宏和)
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