つしまみれ@下北沢SHELTER

つしまみれ@下北沢SHELTER
つしまみれ@下北沢SHELTER - pics by saito mayuminpics by saito mayumin
5月にドロップされた最新作『Sex on the Beach』のリリースツアー「Sex on the “Japan” tour」を終え、10月末には全米21カ所を25日で回る怒濤のUSツアー「Sex on the “USA” tour」を控えるガールズスリーピースつしまみれ。彼女達のブログによると、今後つしまみれが次なるステップ、つまり誰も行かない、珍しい道を歩んでいくために必要になるのは靴下! ということで開催されることになったツアー番外編、世界初のソックス付きツーマンライブ「Socks on the “Japan” 左足編」。会場は下北沢SHELTER。ちなみに右足編は対バン相手にアルカラを迎えて8月2日に同じくここ下北沢SHELTERで行われており、その日の来場者に配られた右足の靴下と、今日配られる左足の靴下で、晴れて1セットの靴下が完成、ということになる。

開演時間になり、照明が落ち、まずは今日のゲスト、HEREの登場。グラムロックを基調とした物語性の強い楽曲を、メンバー全員の大味なステージングで息つく間もなくたたみかけてくる5人組ロックバンドだ。このバンド、ライブバンドとしてのポテンシャルが恐ろしく高く、ハンドマイク片手に「ソックスを突き破るぐらいの勢いで行こうよ!」と、全身を使ってダイナミックなボーカルを発射する尾形回帰、これでもかと言うほどステージ前方に飛び出してきて、お互い一歩も引かずにソリッドなギターを執拗に絡ませ合う武田将幸(G)・三橋隼人(G)のフロント3人を中心に、キレのある派手なアジテートで序盤からフロアの熱気をグイグイ上昇させていく。

「交尾後にメスに捕食されたカマキリのオス視点」という一風変わった切り口のグラム歌謡“さらば、カマキリ夫人”では、原琢矢(B)の湿り気を帯びたエロティックなベースラインがオーディエンスの腰のあたりにズブズブと突き刺さる。“Amore Amore”では、尾形が曲の途中でフロアタムをステージ前方に持ち出し、尾形と宮野によるタムロール・セッションで、オーディエンスを大いに沸かせる。メンバー全員靴を脱ぎ、ソックスが見えた状態でプレイされた”Standard Lovers”では、イスをフロア中心に置き、そこに乗っかってコール&レスポンスを決める。尾形の周りを取り囲み、一心不乱に踊り狂うオーディエンスは本当に楽しそう。

圧巻だったのがラスト。全員が全員バラバラにものすごいテンションでめちゃくちゃに音を歪ませながらプレイしているのにも関わらず、全体としても驚くほど統一されたド迫力のグルーヴで最後までダイバー達を高く打ち上げて見せ、圧倒的な存在感を残し堂々とステージを後にした。

セットチェンジを挟み、レッド・ツェッペリン“移民の歌”をバックに現れたつしまみれ。まずはバキバキのアップ・チューン“Sex on the Beach”からスタート。序盤から異様なほど高かったフロアのテンションは、次の“おじいちゃんのおズボン”、“まつり”、“パンバスケット”で早くも最高潮を迎える。オーディエンスはぐしゃぐしゃになりながら拳を高く突き上げる。“ストロボ”で少しだけクールダウンした後で、まりのどこかシュールだけどひたすら真っ直ぐな言語感覚が炸裂する、グレープフルーツをモチーフにした甘酸っぱい新曲を披露する。

ライブが中盤にさしかかる頃から、等身大というにはあまりにも全てをさらけ出し過ぎの、彼女たちのえげつなくてブッ飛んだ感性が次第に暴走し始める。7曲目にプレイされた“マイクスメルくんくん”は、メンバー3人のマイクスタンドに靴下がくくりつけられた「Socks on the “Japan”」の特別ヴァージョン。靴下を「くんくん」するまりのパフォーマンスが最高にキマっている。やよいの極太ベースが重く唸りを上げる“なmellow”ではメンバー全員が千切れんばかりの強烈なヘドバンをかまし、フロアもつられてヘドバン、モッシュ、ダイブと、相当にカオスな方向に転がっていく。

「日本に素敵な、私たちのようなJ-POPがはびこりますように!!」というまりのMCからプレイされたのは『Sex on the Beach』からの“J-POP”。《何で買ったのかわからない無数のシングル達》だとか、《愛だ恋だ薄っぺら》といった攻撃的な歌詞を悪びれる様子もなく毒づくまりの姿は本当に頼もしい。続いては本日2曲目となる新曲。みずえのドラムが力強く疾走する、爽快感溢れる楽曲で、初披露にも関わらず、あちこちでモッシュ、ダイブが面白いぐらいに起きている。そのままハイテンションで雪崩れ込んだ“HYPER SWEET POWER”を、まりは時折笑みをこぼしながら高らかに歌い上げ、最後は8月に公開された映画「フローズン」のイメージソングに抜擢された“タイムラグ”でひとまず本編は終了。「We are 時代の最先端! 愛してるわベイベー!!」と、今日のライブへの確かな手応えを感じた様子でステージを後にした。

大音量の「ま!み!れ!」コールを受けて、再びステージに現れたつしまみれ。12月9日(まりの誕生日!)に行われるUSツアーから凱旋ワンマンの告知の後に披露されたアンコール曲は、言わずと知れたキラーチューン“脳みそショートケーキ”! 最前列の客にマイクを持たせて歌う「人間スタンドマイク」は今日も絶好調! しまいにはフロアにダイブして、前後左右、フロアのあちこちを移動しながら「人間スタンドマイク」を披露。当然オーディエンスは狂喜乱舞で、最後までもみくちゃになりながら彼女達の発するキュートでクレイジーな爆音に身を任せていた。

さて、いよいよお次はUSツアー。タフな日程でかなりハードなツアーになることが予想されるが、今日のライブの大盛況を見る限りでは、たとえ言葉の意味は通じずとも、3人で鳴らしているとは到底思えないほどの轟音のグルーヴで、アメリカのオーディエンスをノックアウトしてくれることだろう。(前島耕)
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