暗転とともにコロシアム調のセットが組まれたステージに姿をみせたのは、なんとジョン・カビラ。(もちろんあのテンションで)「全国5万人が酔いしれたKREFA CUP、次は皆さんの番です!! 選手入場〜〜!!」とのMCに続いて、ステージにしつらえられた両ゲートからカラフルな民族衣裳を纏ったダンサーや、KREFA CUPのイメージ・キャラクター=クウマン(着ぐるみ)らが勢ぞろい。いやおうなしにワクワク感が高まるなか、アリーナに延びた花道の中から、ついにKREVAが優勝カップを抱えて登場(ヘアが金髪になっている! オーロラ色に輝く銀色衣裳のインパクトも相まってスーパーサイヤ人みたいな凄みが)。
そう、KREFA CUPのディフェンディング・チャンピオンは当然KREVAなのだ。続いて「ショウマンシップにのっとり、威風堂々とたたかいこれまで行われたステージを上回るパフォーマンスをみせるべく威風堂々と戦うことを誓います」というような選手宣誓を行い“今夜、自己最高記録をみせる”という今回のツアーのコンセプト=つまり「今夜は自身にとって戦いの場でもある」ということをあらためて、オーディエンスに知らしめたのである。そして“国民的行事”へと突入! “ストロングスタイル”“THE SHOW”“ファンキーグラマラス”と怒涛の展開、加えてステージからは火煙、キャノン砲からは紙テープが飛び出し、セクシーなポールダンサーが登場したりとイリュージョンな演出もあいまって、満員の1万5千人もバウンスしっぱなし。床がしなり、地鳴りのような歓声が場内を包む。KREVAも会場を見渡しながら思わず「これがすべてオレのファンだと思うとこわいぐらいうれしい」と言っていたが、確かに壮観。“あかさたなはまやらわをん”で、場内の巨大スクリーンに歌詞の字幕が流れたり、合間合間に“競技”の時間を設け、観客の歓声の大きさを観測したりと、オーディエンスが一体となって参加し、楽しめる瞬間が幾時も訪れた。
もちろんこうした演出がサマになるのもKREVAのパフォーマーとしてのゆるぎない土台があってこそ。確かなライミング・スキル、向上を続ける歌唱力、とその土台自体も強靭になってきているが、その土台の地層の厚さと磐石ぶりの一端を知らしめたのが、伝説化しつつある昨年11月の日本武道館第2日目の“ノン・ゲスト”デイであったことは皆さんご存知のとおりだろう(先ごろDVD化されたので、未見の方は是非!)。その流れを汲むパフォーマンスが今夜も登場、シンセサイザー(MOTIF XS6)とサンプリング・マシン(MPC-4000)を駆使し、一人でリアル・タイムで“It’s for you”のトラックを作り上げて披露した。加えて今夜は「自己最高記録を更新する」公演でもあるので、新たな試みも。DJ SHUHOとバックでサンプラーを操る熊井吾郎を交え3ピースによる即興トラック・メイキングが行われた。KREVAは機材を前に、どんな仕組みで音が出てくるのか説明をしながら、一音一音にいとしさと念をこめるようにビートを生み出していたが、そこで鳴らされたのが“音色”。この曲に込められた思いがあらためて浮かびあがり、このコーナーをKREVAのはからいで着席状態で見守っていたオーディエンス達も、思わず立ち上がり、その「音色」を全身で享受した。
アンコールで披露されたのは、“希望の炎”。ベスト盤リリース直後であり、これまでの集大成ともいえるこのツアーで、「総括」のみのにとどまらず「自己最高記録更新」してみせたKREVA。あらためてその原点にある「希望の炎」は、燃え盛るばかりであることを、集ったオーディエンス達は目撃したし、ショウをともに作り上げていく手ごたえにもエキサイトした。応援するだけじゃなく、オーディエンスは共闘者にもなれるんだ、という音楽の楽しみ方の本質をみせつけてくれるショウだったと思う。(森田美喜子)
1.国民的行事
2.ストロングスタイル
3.THE SHOW
4.ファンキーグラマラス
5.H.A.P.P.Y
6.あかさたなはまやらわをん
7.裏切り御免
8.コトバにできない
9.今夜はブギーバック
10.It’s for you
11.ビコーズ
12.音色
13.ひとりじゃないのよ
14.I miss you
15.くればいいのに
16.Have a nice day!
17.イッサイガッサイ
18.アグレッシ部
19.スタート
アンコール
20.希望の炎