JAPAN CIRCUIT vol.49 WEST~山崎共闘編~ @ なんばHatch

昨年、過去3回行われたカウントダウン・ジャパンが大阪で開催できなかったという思いから開催された「JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST~山崎死闘編~」。エレファントカシマシ、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Base Ball Bear、THE BAWDIES、plentyという強力な5組が集結し、大阪の夜を盛り上げたのだが、今年は「山崎共闘編」として開催。去年に負けず劣らずの、くるり、ストレイテナー、andymori、日本マドンナという、個性豊かかつ豪華な4組の出演が実現した。会場のなんばHatchは、チケットソールドアウトの満員御礼だ。

開演時間の17時半に間もなくさしかかろうという頃、本公演プロデューサーであるROCKIN’ON JAPAN編集長の山崎洋一郎がステージに現れ、ROCK IN JAPAN、COUNTDOWN JAPANでもおなじみの前説がスタート。

「このイベントは良いイベントだと思いますので、続けていきたいと思います」と、大阪でのJAPAN CIRCUITの続行が宣言されると、大きな拍手が起きる。続けて、「日本マドンナ、andymori、ストレイテナー、くるり!」と、本日の出演順が発表され、会場内の温度が一気に高まった。


JAPAN CIRCUIT vol.49 WEST~山崎共闘編~ @ なんばHatch
日本マドンナ

まずは、RO69JACKに優勝し、衝撃の登場を遂げた日本マドンナ。“ラップ”とともに、「私たちは耳をふさぎたくなるようなことを歌うと思いますが、今日はみんなの耳を突き破りたいと思います!」と、あんな(Vo・B)がいきなり勇ましいメッセージをぶちかます。「生ぬるい気持ちでバンドができるのが許せない」という怒りをぶつけた新曲“バンド辞めろ”。世界と真っ向から対決するパンクバラード“あるがままに”。「つまんない作家がいまして、人間味がなくて、空っぽで。“村上春樹つまらない”」、「私が音楽をやる道を邪魔するな、“お前を墓場にぶちこみたい”という曲」と、あんなの曲紹介はいちいちダイレクトすぎて、心を鷲掴みにする。

ラストは、三位一体で声を枯らして叫び上げる“田舎に暮らしたい”。どしゃめしゃな轟音の余韻を残し、さささっと走ってステージをあとにした3人。呆気に取られたようなムードのあと、客席にはどよめきが起こっていた。


JAPAN CIRCUIT vol.49 WEST~山崎共闘編~ @ なんばHatch
andymori

二番手は、サードアルバム『革命』がリリースされたばかりのandymori。SEとともに、まず、「どうも、こんばんは、andymoriです」という小山田壮平(Vo・G)のヘルシーな挨拶。“everything is my guitar”、“ベンガルトラとウィスキー”。初っ端から、3人とも楽器とアグレッシヴに戯れ、快調そのもの。客席からの「アルバム買ったよー!」という声に小山田が「ありがとう」と応えたあと、その新作『革命』に収録されている“Sunrise&Sunset”を披露。

「良い夜ですね。今日は山崎共闘編ということで、共に闘いましょう(笑)。誰と闘えばいいのかな?」という小山田の問いかけに、藤原寛(B)、岡山健二(Dr)からは「なんか大きいもの?」「雨?」などと答えが挙がり、和気あいあい。

「andymoriの新ドラマー、岡山健二」という小山田の紹介に続き、「andymoriに入って半年くらい経ちますが、楽しんでやってます」という現状報告が、岡山からされる。

“FOLLOW ME”“すごい速さ”“ユートピア”“投げKISSをあげるよ”と、フレッシュに生命力をまき散らしていく。このあたりで、岡山は上半身裸になっていて、もはや恒例の光景。“andyとrock”“Peace”に続いては、「なんにもない」と突き放し気味に繰り返しながら、確かな光を見出そうとする新曲“在る光”。

小山田「今日は僕らの大好きなバンドのくるりと対バンということで嬉しいです。健二も好きだったんだよね?」。岡山「うん、今も好きです」。小山田「寛とふたりで“ワールズエンド・スーパーノヴァ”やったよね」。藤原「やったね」。小山田「寛がキーボードでね」。と、くるりへの愛を語る。去年の京都音博の思い出も挟みつつ、トリビュートアルバムに収められている“ロックンロール”を披露。岡山のドラムだと、また違う、しっかりと前に足を踏み出すような力強さがある。《大阪の空の下~》と歌った“グロリアス軽トラ”で軽快に締め。


JAPAN CIRCUIT vol.49 WEST~山崎共闘編~ @ なんばHatch
ストレイテナー

たくさんの手拍子に迎えられたストレイテナー。1曲目は“CLARITY”。ギターと鍵盤を操るホリエアツシ(Vo・G・Piano)を筆頭に、シャープでしなやかな演奏で、音像が果てしなく広がっていく。ナカヤマシンペイ(Dr)がドラムセットの上で立ち上がり、スティックを振って客席を煽りまくり、“VANISH”に突入。日向秀和の鬼のようなベースプレイを導入にした“DISCOGRAPHY”と、グルーヴィーなナンバーが続く。「大阪―!」というホリエの叫びに、多数の拳が上がる。

「俺たちストレイテナーといいます。よろしくお願いします」という力強いホリエの声のあとは、ファンキーな“DONKEY BOOGIE DODO”、最新シングル“VANDALISM”、“瞬きをしない猫”。セクシーで美しいロックンロールアンサンブルに、おもしろいように客席が高騰していく。

「今日は足元の悪い中ありがとうございます」とホリエ。続けて、「昨日の天気予報で、初めて聞いたんですけど、大阪、雨ときどき止む」という予報を見たエピソードを明かし、笑いが起きる。“SIX DAY WONDER”“Toneless Twilight”と、流麗な鍵盤ナンバーをつなぎ、“BIRTHDAY”で爆発。

ここで、テンションが上がりすぎたのか、ステージからメンバーのうめき声が聞こえる。ホリエ「フェスみたいですね」。シンペイの「今、『フェスみたい』って言えばまるくおさまると思ったでしょ」というツッコミに負けず、ホリエは「ビール飲みながらくるり見たいですよね」と言い、客席の賛同を得ていた。

ホリエは「来月シングルが出て、そのあとはアルバムが。もう完成しているので」と今後のストレイテナーの流れを話しつつ、「じゃあここからは激しいのを」。その予告どおり、“SILLY PARADE”、シンペイの雄叫びが何度も轟いた“BERSERKER TUNE”、“Ark”“Melodic Storm”と、うなぎのぼりに激走した。

汗だくでやりきったような清々しい表情の4人。「ああ、もっとやりてぇ」とホリエが笑顔で漏らしつつ、4人で肩を組んで、おじぎ。最高の形でトリのくるりに繋いだストレイテナーだった。


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くるり

期待に膨らんだなんばHatchに登場したくるりは、4度目の武道館ワンマンをはじめ、ここ最近定着していた、岸田繁(Vo・G)、佐藤征史(B)のくるりに加え、BOBO、フジファブリックの山内総一郎という4人編成ではなく、5人編成。ドラムとギターに加えて、女性トランペット奏者という顔ぶれだ。“さよならアメリカ”でスタート。土臭いグルーヴに、トランペットの音色が乗り、大地の匂いが立ち込める。

“ブレーメン”に続いて、佐藤が「みなさん、こんにちは。5人のくるりです。いろいろ思うところもあると思いますが、のちのち明らかになっていくと思います」と口を開く。そして、岸田がここでメンバー紹介。「ギター吉田省念、ベース佐藤征史、トランペット・ファンファン、ドラムス&パーカッション田中佑司。そして俺が山崎洋一郎!」とおどける。新生くるりのラインナップにどよめく会場。

そして、“コンバット・ダンス”。岸田、怪しく踊る。軽快でチアフルな“ワンダーフォーゲル”が楽しい。“RING RING RING”では、岸田がハットを脱ぎ捨て、テンション高くステージを駆けまわる。メガネも取った! ステージを走って一周! ファンファンの後ろで、千手観音のような動きを見せる。アンサンブルに合わせて、ハット片手に不可思議なダンスを繰り広げる。

曲が終わり、「言われたわ、バンド辞めろって」と、日本マドンナの“バンド辞めろ”をネタにする。続いて、「くるりの新しいメンバー達です」と前置きして、再びメンバー紹介。

そして、動きすぎたせいか、「うわー、しんど」とバテている。今日の岸田は、やけに饒舌だし、なんだか振り切れている。新編成のせいなのか。

「バンドはやめませんよ、MCはやめるわ!」「阪神めっちゃ弱いな、おまえら」などと叫び、“リバー”へ。初々しく、穏やかで素朴な手触りの、新しい“リバー”。

そしてまた日本マドンナの曲の話題に。岸田「andymori のベースがめっちゃ村上春樹好きなんですよ」。佐藤「落ち込んでましたね」。

“ばらの花”に続いて、本編ラストは最新シングル“奇跡”。美しく繊細なメロディとどこまでも広がっていく壮大なサウンドスケープが素晴らしい名曲だ。

アンコールの拍手を受け、5人のくるりが再び登場。岸田が、先日ROCKIN’ON JAPANで山崎洋一郎のインタヴューを受けたことに触れ、「くるり、この5人でやっていくことになったんですけど、そのへんの馴れ初めを話してますので、要チェキでお願いします」と話す。

さらに山崎との馴れ初めを明かし、「くるりが“東京”という曲を作ったときに京都まで会いに行きたいと言ってくれたんです。結局東京でインタヴューしたんですけど」というエピソードを話し、最後は“東京”。心を込めた渾身の歌と演奏、新しいグルーヴ。「ありがとう、おやすみ!」と岸田が叫び、5人で並び、客席に挨拶。ステージから去ったあとも拍手がずっと鳴り止まない、最高のエンディングだった。(小松香里)
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