UNISON SQUARE GARDEN @ 日比谷野外大音楽堂

「野音へようこそ! 今日は舞台監督さんと相談して、予算の都合上できるかどうかわからないですけど、局地的に……雨を降らせるかもしれないので!(笑)」という斎藤宏介(Vo・G)のMCの通り、前日の豪雨に続き、この日も夕方から雨の予報となった東京・日比谷野音。7月9日の盛岡公演からスタートした『“Populus Populus” TOUR 2011 ~3rd album release tour~』の折り返し点にして同ツアーのクライマックスの1つでもある野音ワンマンは即日ソールドアウト&立ち見席まで完売の超満員! 今にも雨の落ちてきそうな空模様と涼しく吹き抜ける夕風すら跳ね返すほどの高揚感の中、気合い十分の鈴木貴雄(Dr・Cho)と斎藤。気合い入りすぎて岡本太郎みたいなアクションでオンステージした田淵智也(B・Cho)。そして……気合い一閃、堰を切ったようにあふれ出す、ポップと鋭利の極みのような3ピース・ロック・アンサンブル! 開演早々、大地が揺れ拳が突き上がりシンガロングが巻き起こる圧巻のロックンロール空間へと野音を叩き込んでみせる。

ツアーの後半7本を残しているのでセットリストのネタバレは控えるが、アンコール含めきっちり2時間の中に“kid, I like quartet”“カウンターアイデンティティ”などアルバム『Populus Populus』全曲を盛り込みつつ、“センチメンタルピリオド”のような必殺曲から“メッセンジャーフロム全世界”など己の世界観/ロック観を極限までオープンにするナンバーまで総動員した、実に挑戦的な内容だった。何より、斎藤の「僕たちも1曲1曲、丁寧に楽しませてもらいますので!」「ヤバいよ! めちゃめちゃ気持ちいいです!」という言葉が表しているように、1つ1つの音を、一瞬一瞬を渾身の力で楽しみきろうとする、3人のアグレッシブなモードが、そのダイナミックな音を最高のエンターテインメントに変えていたのが印象的だった。

UNISON SQUARE GARDENほどロックとポップのギリギリのバランス感を模索しているバンドも珍しい。斎藤の切れ味鋭いロックンロール・ギターにしても、荒々しくベースを振り回しヘッドバンギングしながら躍動感に満ちたベース・ラインを繰り出す田淵にしても、メタルっぽいフレーズが似合いそうな鈴木のセッティング&手数王ドラミングにしても、少しでもプレイヤー志向の方向に振れた瞬間にハードコアな表現になっていく可能性を孕んでいる(し、アンダーグラウンドな場所で支持と居場所を獲得する可能性だって秘めている)。が、彼らはそんな爆発的にスリリングなロックを、あくまで「自分たちの/みんなの『今』を楽しませ輝かせるためのポップ・ミュージック」という一点に惜しげもなく注ぎ込み続けている。パンキッシュな魂と世界への批評精神と反抗心を、斎藤宏介のキュート&ワイルドな「うた」に集約させ、誰もが踊り跳ね歌い回る鼓動としてのビートを叩き出してきたユニゾンの、まさに最終決戦的なアルバムが『Populus Populus』だった。それだけに、ロックとポップを全開放して野音を包み込んでいく3人のダイナミズムは、とんでもない気迫と意志に裏打ちされたものだった。

「僕たちは『Populus Populus』っていう3枚目のアルバムを出したんですけど……」と、終盤のMCでオーディエンスに語りかける斎藤。「僕たちが思う音楽の楽しさとか、音楽に触れることの楽しさとかを形にしたアルバムで。それを感じてもらうためにこうしてライブをやってるんですけど……今日は雨の予報だったのに雨が降らなくて、後ろのほうまでみんなの楽しそうな顔が見えて、本当に嬉しいです! 今日、家に帰ってから、みなさんにお願いがあります。もう一回、『Populus Populus』を聴いてみてください! 今日のライブを観た後なら、きっと新しい発見があるはずです。『Populus Populus』をみんなの遊び場にして、これからも楽しんでください!」……決然と語るその声に、ひときわ熱い歓声が客席から湧き起こる。《いつか僕も死んじゃうけど それまで君を守るよ》と歌う“未完成デイジー”のやわらかで凛としたメロディが、そして“オリオンをなぞる”で流星群のように目映く乱反射する歌とアンサンブルが、3人の決意表明のように日比谷の空に広がっていった。

アンコールでは、「僕たちの言葉は、僕たちの音楽は、君たちのところまで届いただろうか?」と、本編では沈黙を守っていた田淵がブレーキ壊れたように語り始める。「……いや、答えなくていいんだ! どんなに蔑まれても、僕たちは自分の音楽に自信を持つことをやめられない! おまけに自意識過剰ときてる! でも、今日のみんなの楽しそうな顔が、何よりの答えだと思ってる!」という情熱あふれっ放しの言葉に、3000人が熱い拍手喝采で応えていた。「『雨降ったらタオルとTシャツ売れるのにな』なんて黒いことを考えてしまった自分もいたりして(笑)」と話すのはグッズのデザイン担当の鈴木。折しも日比谷公園で行われていた盆踊り大会までネタにして「さっきからバラードの曲やるたびに、盆踊りの音が気になって気になって……盆踊りに負けないくらい、もうひと踊りしてもらってもいいですか?」とさらなる沸点へと日比谷野音を導いてみせたのも痛快だった。結成7年&メジャー・デビュー3年のユニゾンが辿り着いた大きな到達点にして、シーンのど真ん中に風穴を開けて僕らをでっかく揺さぶっていく闘いの輝かしい第一歩と言うべき、充実のアクトだった。まるで終演を待っていたかのようにアンコールで降り出した雨すら、この日のユニゾンの舞台装置のように思えた。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする