ディアフーフ @ 恵比寿リキッドルーム

2011年はフジ・ロックにも参加していたし、それこそ毎年のように日本公演を行ってくれている。サトミ・マツザキ(Vo./B.)とグレッグ・ソーニア(Dr.)夫妻は現在、東京在住ということもあるのだが、しかしポップ/ロック・ミュージックのひとつの理想型として世界中のリスナーや名だたるアーティスト達(デヴィッド・バーンやトム・ヨーク、ザ・ルーツetc.)から称賛を浴び続け、各地を忙しなくツアーして廻るディアフーフなのだからして、やはりそのステージに触れることが出来るのは嬉しい。11月末からスタートした今回のジャパン・ツアーは、大阪、名古屋でのパフォーマンスを経て東京・恵比寿リキッドルーム公演を迎えた。バンドは今後、シンガポールからジャカルタ、香港、ソウルとアジア諸地域を廻り、年明け早々にはニュージーランドやオーストラリアでのステージが予定されている。



東京公演のゲストには、Takehisa KenとHayakawa “C.O.B-hey!! say!!” Shunsukeからなる15年選手ノイズ・ロック・デュオ=KIRIHITOが登場。鋭利にして美しいギターを繰り出すTakehisaと、スタンディング・スタイルで力強く雄弁なドラムをプレイするHayakawaのコンビネーションがいきなりオーディエンスの度肝を抜いた。潜り抜けてきた場数の違いを伺わせる、肩肘張らない自信と集中力。そして自然とフロアに充満してゆく高揚感。Hayakawaは強烈な生ドラムだけでなく、シンセ・パッドをバシバシと引っ叩くプレイで表現世界の奥行きを見せつけてくれた。以前行われたディアフーフとOgre You Assholeのジョイント・ライヴもなるほどという印象だったが、今回のブッキングも見事と言う他にないだろう。アートへの極めて自由なアプローチと、崇高な意志を受け止めさせるオープニング・アクトであった。



さて、転換を経たステージの幕が開き、上手側の袖からサトミ、エド・ロドリゲス(G.)、ジョン・ディートリック(G.)、そしてグレッグが順に登場。ディアフーフのオープニング・ナンバーはソリッドなサウンドで転がり始めるインスト・チューン“Rainbow Silhouette of the Milky Rain”だ。さっそく予測不可能な展開を見せる曲調がスリリングである。続いてはエドとジョンのギターがハーモニーを奏で、次の瞬間には轟音リフを掻き鳴らす“Milk Man”。サトミのウィスパー・ヴォーカルも届けられる。わお、冒頭から2004年のアルバム『Milk Man』の楽曲が並んだ。ちょっと意外だったけれど、筆者はこのアルバムがディアフーフとの出会いの1枚だったので嬉しい。正直に言ってしまえば、演奏そのものは危ういところも多々あるけれど、耳をつんざくような爆音と冒険心に満ち満ちた楽曲の展開、しかし敷居の高さを感じさせないチャーミングなポップ・センスが混在して、これぞディアフーフという時間を練り上げてゆくのだった。



後のグレッグによる説明によって分かったことだが、今回のライヴは『Milk Man』のジャケット・アートワークにも登場するキャラクター「MILK MAN」を手掛けたデザイナー/スタイリストの加賀美健をトリビュートするというアイデアだったらしく、つまりアルバム『Milk Man』の収録曲を中心に進められるということなのである。こちらとしてはすっかり今年リリースされた新作『Deerhoof vs. Evil』中心のライヴだと思い込んでいたので意外だったのだが、もちろん新作を含め他のアルバムからも楽曲がチョイスされていて、結果的にはヴァラエティに富んだセット・リストのパフォーマンスに仕立て上げてくれた。何よりも、パフォーマンスに明確な目的とテーマを掲げたディアフーフのテンションが凄い。特にグレッグ。右脳を左脳でねじ伏せるように、「いや、ここで、こうだ!」といちいち捻りまくったコンマ数秒のタイムラグを伴うフレーズを、ドラム・セットを破壊せんばかりの勢いで組み立ててゆくのだ。彼のプレイを下手の一言で切り捨ててしまう
のは、ちょっと勿体ない。



ライヴ定番曲“The Perfect Me”や新作の“Super Duper Rescue Heads!”などがプレイされる中で、エドも途中、ギターの弦を切ってしまうほどの入れ込みようだ。そこでグレッグによるMCタイム。「イマ、Deerhoofノ問題ハ、アナタカラ見テ左ノギター、死ンダ……ツカレタ? ワタシ、ツカレナイ。ツカレナイ、ジャナイデショ! ウレシイ、デショ! イロンナ色ノ照明、サイコウ。ショウメイサン、オネガイシマス……スバラシイ! デモ暑イ! 次ノ曲ハ、ワカラナイ。アタラシイ曲。デモ、タイトル、ワカラナイ!」



そんなふうに、ひときわ変態的にして華のあるポップな新曲も披露された。“The Tears and Music of Love”を経て、サトミがドラム、エドがベースとパート・チェンジを行い、グレッグが歌うという一幕も盛り込まれる。そして本編のクライマックスはやはり『Milk Man』からの楽曲群である。“Dog on the Sidewalk”のキュートなポップがファンキーに弾け、「今日、今日ノライヴハ、『Milk Man』の曲、タクサン! 次ノ曲ハ“C”! “C”ワカル!?」と最後のナンバーへ。どちらの楽曲も、どこか日本的なフレーズが仄かに見え隠れする。今回ステージで聴いて初めて気付いたけれど、“C”のメイン・フレーズは童謡“ほたるこい”の符割りとメロディの抑揚に近いものを感じる。この辺りは、やはりサトミがバンドに持ち込んだものなのだろうか。アンコールは、ショート・パンツ姿のサトミが跳ね回りながらキュートな振り付きで歌い踊る“Basket Ball Get Your Groove Back”からスタート。ダブル・アンコールで満を持して投下された“Panda Panda Panda”まで、平熱の狂気によって現実をぐにゃりとねじ曲げてしまうような、最高にファンでフリーキーなショウであった。



余談だが、現在ディアフーフはオフィシャルHPにおいて、ライヴ・アルバム“99% UPSET FEELING”をフリー配信中である。グレッグが歌うラモーンズのカヴァー“ピンヘッド”を含め、かなりタイトな好演の音源となっているので、気になる方はぜひダウンロードを。(小池宏和)


セットリスト
Rainbow Silhouette of the Milky Rain
Milk Man
Snoopy Waves
Song of Sorn
Buck and Judy
That Big Orange Sun Run Over Speed Light
Giga Dance
Offend Maggie
The Perfect Me
Desaparecere
Super Duper Rescue Heads!
Let's Dance The Jet
Qui Dorm Nomes Somia
I Did Crimes For You
The Tears and Music of Love
Cyanide Breath Mint
Fresh Born
C
-------------------
(encore1)
Basket Ball Get Your Groove Back
Holy Night Fever
Milking
--------------------
(encore 2)
Panda Panda Panda
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