チャットモンチー ゲスト:ねごと、矢野顕子@Zepp Tokyo

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チャットモンチー ゲスト:ねごと、矢野顕子@Zepp Tokyo
チャットモンチー、高橋久美子が脱退し、2人になってから初めてのツアー、「チャットモンチーの求愛ツアー」、仙台・名古屋・大阪・東京のZepp、全4本のファイナル。チャットモンチーが好きなアーティストと一緒にやる、アンコールではそれらのアーティストの曲をカヴァーしたりもする、という企画で、仙台はEGO-WRAPPIN’とトクマルシューゴ、名古屋はCOMEBACK MY DAUGHTERSとハナレグミ、大阪はASIAN KUNG-FU GENERATIONとPeople In The Box、そしてこの東京は、ねごとと矢野顕子が出演。
ステージには白いカーテンっぽい幕が下りていて、その前の中央にクリスマスツリー。で、そのクリスマスツリーが橋本絵莉子、そしてこのツアーのキャラクターの黒いクマ、の着ぐるみが福岡晃子という体で、前説。「橋本絵莉子です。今、みなさんの前に立っているこの木が私なのです」とか言いつつ注意事項を述べ、「それにしても、アッコちゃんが来ないなあ、遅いなあ」「いやあ、遅れてごめん」とクマの着ぐるみ登場。みたいな、小芝居付きでした。

チャットモンチー ゲスト:ねごと、矢野顕子@Zepp Tokyo
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で、まず、ねごと。セットリストは以下。

1.インストゥルメンタル
2.透き通る衝動
3.ループ
4.七夕
5.week...end
6.カロン
7.メルシールー

久々に観ました。で、びっくりしました。えらく演奏がよくなっていて。特にリズム、もっと言うとドラム。白人の優れたロック・ドラマーに時々いるみたいな、前につんのめるようなつっこみ気味のビート。「それ音楽性に合ってるのか?」とか「ほかのメンバーは演奏しづらくないのか?」とか冷静に考えれば言えるかもしれないが、いいじゃねえかかっこいいんだから、と断言したくなるプレイ。それにひっぱられてるのか、それとも別の理由か、ギターとベースのプレイも、いい感じでやさぐれた音になっていた。10年代のオルタナ。かっこいい。で、ヴォーカル&キーボード&音楽的支柱の蒼山幸子だけは超然とわが道をつっ走っている感じなのも、さらにいい。
彼女たちが「閃光ライオット」にエントリーしていた頃、「SCHOOL OF LOCK」に来たチャットモンチーと女の子の応募バンドが電話で話す、という企画があって、その時、実際に話したそうです。その4年後にこうして同じステージに立っている、というのは感無量です、というようなMCをしておられました。
終わったあとロビーに出たら、マネージャーが物販してたので「よくなりましたねえ!」って言ったら、「ってことは、相当久しぶりに観たんですね」と返されました。つまり、もうずいぶん前からよくなっていた、ということですね。失礼しました。

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そして次、矢野顕子。セットリストは以下。

1.ばらの花
2.中央線
3.ツマサキ
4.ラーメンたべたい
5.Don't Speculate
6.ひとつだけ

一応説明すると、1はくるり、2はTHE BOOMのカヴァーで、この方のライヴではわりと定番。4と6は自身の代表曲。5は、yanokamiの一番新しい曲、つまり最後の曲で、12月14日のニュー・アルバム『遠くは近い』に収録されています。
で、3は、そう、チャットモンチーのカヴァーです。このライヴのためにカヴァーした、というわけではなくて、出た時に聴いて気に入って、すぐ自分でもやってみたんだけど、人前で披露する機会がないまま今日に至っていたそうです。ということは、この曲に限らず、気に入るととりあえずやってみる、という習慣があるのではないかと思います、矢野さん。
で。それはもう、すごいもんでした、矢野顕子バージョンの“ツマサキ”。あと、その「すごいもん」だった“ツマサキ”だけではなく、Zepp Tokyo超満員のチャットモンチーのファンのみなさん、1曲目の“ばらの花”からラストの“ひとつだけ”まで、固まりっぱなしだったのが、おもしろかった。演奏中、全員、呼吸をするのもはばかられる、くらいのレベルで、シーンとしている。で、曲が終わると、どーっと拍手。矢野さんがなんか言うと(この方のMC、いつも絶妙におもしろいのです)と、わーっと笑う。で、曲が始まると、またシーン。という繰り返し。とにかく、「うっわあ、すっごいもん聴いている、今」という空気に満ち満ちていました、ホール内が。わかります。特に初めて観た方、無理もないと思います。全然初めてじゃない私も、今回も、もう見事にそうなったので。

チャットモンチー ゲスト:ねごと、矢野顕子@Zepp Tokyo
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そしてチャットモンチー。本編は全7曲、うち4曲が新曲! でした。

1.新曲
2.新曲
3.東京ハチミツオーケストラ
4.新曲
5.世界が終わる夜に
6.バスロマンス
7.新曲

高橋久美子脱退後、新メンバーとかサポートとかなしで、ふたりでライヴをやっている。というのは既に報じられていますね。では、どのようにやっているのか、具体的に1曲ずつ書きます。
1:絵莉子、歌とギターとハープ。晃子、ドラム。……「晃子」って書くと、なんか違和感ありますね。「福岡晃子」か「アッコ」、どっちかですね。次から「アッコ」にします。絵莉子も「エリコ」にします。
2:エリコは歌とギター。アッコはドラムで、タムを叩きまくるジャングル・ビートみたいなリズム。ドラム始めたばかりとは思えない、堂に入ったプレイでした。
3:同じくエリコが歌とギター、アッコがドラム。ここで初めてこっちの耳になじんでいる曲、というわけで、「おお、ふたりだとこうなるのかあ」という新鮮さあり。
4:「チャットモンチー、ベースがいなくなったので、新しいベースを紹介します」(アッコ)という紹介で、エリコがベースを持ち、歌いながら弾く。アッコは左手でスネアを叩きながら右手でキーボードを弾く、というアクロバティックなプレイ。麝香猫みたい。と、これを読んでいるみなさんはもちろん社内でもジャパン山崎洋一郎と井上貴子くらいしかわからない比喩が頭に浮かびました。おふたりもきっと知らないと思います。
5:エリコが歌とギター、アッコがベース、ドラムなし。この曲なので、ドラムなしなの、納得。
6:エリコ、歌とギター。ドラムに戻ったアッコ、最初はタンバリンを振っていて、途中からスティックに持ち替えて、と、忙しそう。あと、この曲あたりから、「あれ、ギターの音、1本じゃない。ループかなんかで2本重ねてる」ということに気づきました、私。もっと前から重ねてたのかもしれませんが。
7:ふたりの担当楽器は前の曲のまま。ただし、エリコはそのギターのループを使いまくり、つまり自分ではあんまり弾かず、出てきたクマの着ぐるみと共に振り付け付きで歌う。

で、アンコールは、「『ふたりのビッグショー』と題しまして」ということで、アコースティック形式で2曲。最初にねごとの“ふわりのこと”、続いて矢野顕子の“ひとつだけ”をカヴァー。“ひとつだけ”では、iPadをリズムマシンとして使用。
そしてラストは、ボーカルでねごとの4人、ピアノ&歌で矢野顕子、そしてアッコはベースを持ち、アッコのドラムの先生でこのツアー4ヵ所とも帯同したというdetroit7の山口美代子がドラムを叩き、“シャングリラ”を演奏。曲をぐいぐいひっぱっていくアッコのベースとエリコの歌&ギターも、ひたすら楽しそうなねごとの4人ユニゾン・ボーカルもよかったが、特に際立っていたのはやはり、矢野顕子の歌&ピアノでした。あと、ザック・スターキーみたいにドラムを「叩く」っていうよりも「しばきまわす」山口美代子のプレイも最高でした。かっこえー、この人。

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で。よかったとか楽しかったとかいう以上に、なんか、すごく感銘を受けたライヴでした、ふたりチャットモンチー。
3人しかいないバンドで、しかもあんなにいいドラマーであり作詞も手がけていたメンバーが去った、というのは、言うまでもなく、危機だ。その危機に面した時に、代わりに誰かを探したり、誰かに頼んだりして、その穴を埋める、という解決法を、チャットモンチーはとらなかった。これまでと違う、別の、新しい生き物になることを選んだ。ということだと、僕は理解しました。
以下、あくまで僕の勝手な解釈ですが、じゃあなんで、穴を埋めることを選ばなかったのか。埋めようとしたって埋まらないからだ。あるいは、埋まったとしても、そしてものすごくがんばってものすごくうまくいったとしても、前とおんなじくらいで、それ以上になる気がしないからだ。だったら、違う生き物になろうとすることの方に、自分たちの未知の可能性を感じたのではないか、と思う。
どっちが大変か。考えるまでもなく、後者だ。そもそも、長年付き合ってきた自分の担当楽器を変えるなんて、なかなかできる選択ではない。もし同じ状況になったら、同じ方法を選びそうなバンド、ほかに思いつきます? 私は思いつきません。そんな勇気、普通、ないと思う。でもそれをやったのはなんでかというと、繰り返しになりますが、そんな大きな決断をできるくらい、その選択に可能性を感じたからだと思います。
そして、その可能性、早くも形になり始めている。と、リアレンジされたこれまでの曲たちを聴いても、新しい曲たちを聴いても、感じた。特に新しい曲たち。歌詞も、メロディも、「ふりきれた」とか「ふっきれた」とか「思いっきり」とか「全開」とか、そういう言葉で形容したくなる強さがありました、どの曲も。

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「2012年のチャットモンチーは、大きい花火を打ち上げようと思っています」みたいなことを、アッコは言っていた。その手始めということか、アンコールで、2月1日にニューシングル、8日にもニューシングル、そして15日にはベスト・アルバム、という3週連続リリースが発表されました。
これからのチャットモンチーから目が離せない。って、そういう「目が離せない」みたいな、いわゆるみんな書きがちな慣用句、私、普段は極力使うのを避けているのですが、本当にそう思ったので書きました。ここからしばらく、ほんとにおもしろい時期に突入しそうです。というか、もうしてます、チャットモンチー。(兵庫慎司)
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