SAKEROCK @ SHIBUYA-AX

「さようなら今年! サケロック、暮れの元気なご挨拶」と銘打たれた、東名阪ワンマン・ツアーのファイナル。で、年内で脱退するベーシスト田中馨の、SAKEROCKとしての最後のライヴ。公式サイトの星野源の文章によると、田中馨がメンバーに脱退の意志を告げたのは9月の中旬で、このツアーが発表になったのは9月の7日とか8日とかそれくらいだったので、この3本のスケジュールを切った時は、これで最後だとは思っていなかった、ということですね。

というわけで、最後ということで特別だった点。まず、曲数がいつもよりちょっと多めで、ライヴ定番の曲に加えて懐かしい曲も混じったセットリストだったこと。それから、サポートメンバーとかゲストとかなしで、最初から最後まで4人だけでやった、というのも、ちょっと特別だったかもしれない。長くやるワンマンでは、誰かしら加わることが多いバンドなので。あと、11曲目、これ河島英五の曲なんだけど、ハマケンがキーボードを弾き、ベースレスで、田中馨がおそらく人生で初めてヴォーカルをとる、というサプライズもありました。それから、アンコールのラストに“MUDA”をやる前に、メンバーひとりずつ、「今年もお世話になりました」ということと、田中馨の脱退について何か述べる、という、長めのMCがあったこと、も、特別か。田中馨、「11年間、本当にありがとうございます……『ありがとうございます』だなあ……」と、しみじみとつぶやいたあと、「ハマケン、源くん、大地くん、11年間ありがとう。楽しかったです」とメンバーにお礼を言い、「これからは、SAKEROCKのメンバーとしてではないですが、SAKEROCKのおもしろいすてきなアイディアを、自分なりに出して、がんばろうと思います」と、お客さんたちに宣言しました。

逆に、いつもどおりだった点。まず、部室でだべってるみたいな、「客前である」ということが意識されていないような、ぐっだぐだで長い4人のMC。今日も、4回くらいありました。自分がステージ上の4人の仲間だという気持ちにうまいことなれればヘラヘラ笑って楽しめるんだけど、なので僕はそうする術を身につけてはいるけど、そうやって笑いながらも、同時に「これ、そういう事情を知らない人が初めて観たら腹立つだろうなあ」と、いつも思う。あ、でも、過去のツアーの思い出とか(昔、田中馨は島根で泥酔の末、全裸で足湯に入ったとかそういう話)、こないだの大阪で「馨くんと一緒に大阪に来るのは最後だから」と、ハマケン以外の3人で打ち上げのあとバーに行って飲んだ話とかをしていたので、これも「いつもどおり」よりも「最後だから」寄りか。なお、その大阪のバーで、酔っぱらった田中馨、伊藤大地に「伊賀さんって、いいの?」と問うたそうです。伊賀航ね、売れっ子ベーシストでソロ星野源のバックとかもやっている。「何、ジェラシー? ベーシストとしての」とか、星野くんにつっこまれてました。
それから、本編ラストの“生活”の前に、ハマケンが、スキャット……というか一発ギャグみたいなことを叫んで、その言葉を伊藤大地がドラムで表現する、というのを連発で行う、「対決」と呼ばれるおなじみのコーナー、今日も、ありました。9月3日の日比谷野音の時は「ええっもう終わり? ハマケン、まだいいとこ見せてないじゃん!」って驚くくらいあっさり終わりましたが、今日は長めでした。おもしろいのもあったけど、まんなかあたりでハマケン、煮詰まった挙句女性器の関東圏における呼び名を叫んでステージの上からも下からもどひんしゅくを買い、そこからは目に見えて失速していきました。
そして、アンコールの1曲目。これ、我々はSAKEROCKではなく、「カシュー&ナッツ」というロック・バンドである、というていで、ドラム:星ピー(星野)/ベース:イトマン(伊藤大地)/ギター:タナケイ(田中馨)/ヴォーカル:カシュー(ハマケン)というメンバーで、それはもうぐしゃぐしゃな、とても人様からお金をとって聴かせてよいもんではない演奏を、アドリブでくり広げる、というコーナーです。「対決」ほど長いことやってはいないが、あと頻繁でもないが、これも最近おなじみ。で、これもMCと同じで、「事情を把握してない人が観たら、腹立つだろうなあ」と、いつも思います。

それから。全体の演奏は、アレンジとかはいつもどおりなんだけど、プレイ自体は、やはりというか、いつもどおりじゃなかった。元々プレイヤーとして優れている人たちだけど……ってハマケンもそう言いきっちゃって大丈夫かな、まあいいや、ここはそいうことにしておこう……とにかく、SAKEROCKって楽器を弾く人として優れている4人の集団であって、特にリズム隊のふたりはいわゆる「どこに行くっても通用する」レベルの腕だけど、今日は特にすごかった。曲の頭から最後まで全部ドラムソロみたいな伊藤大地のプレイ、もう、炸裂しまくり。で、その暴れドラムと、本来なら曲のトーンに合わない歪んだ音のカッティングを平気でぶちこんできたりする自由奔放な星野源のギターと、ちゃんと菅がフルで鳴っているんだかいないんだか音程が合ってるんだか合っていないんだか聴くたびに判断に苦しむハマケンのトロンボーン(ああまたこういうことを書いてしまった)の3つを、ひとつの楽曲として力ずくでまとめているのは、めちゃめちゃウネウネ動くのに安定感がハンパない田中馨のベースラインである、ということが、よおくわかるライヴでもあった。ああ、この人がいなくなるの、やっぱ痛いなあ。と、正直、思ってしまった。

ただ、僕個人は、だけど、この田中馨の脱退というのは、納得している。というか、しょうがないと思う。そもそも、ほかでもいっぱいバンドをやっていたり、芝居をやっていたりしているメンバーが集まって結成された、それ以降も、まるで「SAKEROCKだけやる、というのは禁止」というバンド内ルールがあるかのように、それぞれがあちこちでいろいろ活動をしながら続いてきたのが、SAKEROCKである。「SAKEROCKだけにかけます」ということが許されないというか、「SAKEROCKでしか通用しないメンバーはいりません。ほかでも活躍できない人には用はありません」みたいなフシすらある集団である。バンドとしては、かなり特殊だと思う。逆に言うと、音楽面でも生活面でも、「自分はSAKEROCKじゃなくなったらもうどうしようもない」みたいなメンバーはいないわけで、つまり、バンドに頼っていないというか、言ってしまえば「やめても困らない」わけで、それはまあ、やめる人も出るでしょう、と。現に前にひとりやめてるし。野村卓史ね、キーボードの。
というふうに、やめる側の理屈は納得できる。ただ、やめられる側は、当然だけど、痛いと思う。痛いから、じゃあどうするか。という、今後の方針込みでのライヴでもあったのだ、この日は。まず、前述の「対決」も「カシュー&ナッツ」も、今日で最後である、来年からやらない、ということがアナウンスされた。「カシュー&ナッツ」はともかく、「対決」をやめるのってSAKEROCK史上でいうと結構大きなことです。でも、お客さん、「ええっ? ……ああ、そうね、最近『対決』でのハマケン、衰えてたもんね」みたいに、わりとすぐ納得した空気になって、ハマケン、キレてましたが。
って、何が言いたいのかというと、要するに、来年から田中馨の代わりにサポート入れてそのまま続くんじゃなくて、今のこういうSAKEROCKは今年で終わりです。ひとり欠けてもそのまんま、じゃないです。それは無理だし、それだとバンドとして弱るだけだから、来年からもっと抜本的にいろいろ変わります、やりかたを変えます。というライヴだった、ということだ。
具体的にどう変わるのかはまだわからないけど、最後のMCで、星野源はこんなことを言っていた。
田中馨の脱退は、すごくさみしいけど、悲しくはない。元々、ほかでもいっぱいバンドをやっているメンバーで結成したバンドだったし、バンドらしさみたいなものを排除してやってきた、「音楽集団」みたいなありかたを目指してきたバンドだった。でも、いつの間にか、バンドになっていた。“殺すな”って曲をやっていると、「ああ、バンドだなあ」と感じたりする。だから、3人になって、バンドから、もう1回、変な音楽をやる変な人たちに戻るんだと思う。
これ、「いつの間にかバンドになっていたのがイヤだった」みたいなニュアンスでの言葉ではなかった。どっちかというと、逆だった。ただ、事実として、来年からはもう、そういうふうにはやれない。じゃあどうするか。こうやります。という決意表明のように、僕には届きました。

SAKEROCK、今のところ、2012年からの予定は、まだ発表されていない。が、心配してません、私。ただ、楽しみにしています。(兵庫慎司)


SET LIST
1.進化
2.ラディカルホリデー
3.穴を掘る~やっぱ好きやねん
4.菌
5.慰安旅行
6.モー
7.WONDER MOON
8.グリーンランド
9.老夫婦
10.今の私
11.時代おくれ
12.スーダラ節
13.テキカス
14.七七日
15.ホニャララ
16.URAWA-City
17.Goodbye My Son
18.Green Mockus
19.Hello-Po
20.KAGAYAKI
21.OLD OLD YORK
22.インストバンド
23.殺すな
24.サケロックのテーマ
25.生活

アンコール
26.カシュー&ナッツ
27.MUDA
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする