初の武道館。オープニング。SEの街の音と映像が流れ、だんだんボリュームが上がり、ピークに達したところでフッと音が止まり、その瞬間にせり出し(っていうのか? 舞台の床から上がってくるやつね)から、飛び出るようにステージに現れるYUI。アコースティック・ギターのケースを提げ、そのままステージ中央から伸びる花道の先まで行き、ギターをケースから取り出して抱え、床にアグラをかいて座るおなじみのスタイルで“It’s happy
line”を歌いだす。
聴き入るオーディエンス。歌い終わる。大拍手。でも誰も歓声をあげたりしない。拍手の後はシーンと静まって、次の曲を待っている。武道館みたいなでかい会場だったら、「YUIちゃーん!」とか「最高―!」とかステージに叫ぶお客がいるのが普通なのに。こんだけの人数が、みんなシーンとなって歌に集中してる光景、すげえ珍しい気がする。
と思っていたら、YUI、2曲目“Good-bye days”のAメロで歌い間違え、「やり直し!」と叫ぶ。客席がドッと沸く。これを皮切りに、叫ぶお客もいる、普通なライヴの光景になったけど、それまでの、あのしょっぱなの緊張感がとにかく強烈だった、僕には。
“LIFE”“CHE.R.RY”“I remember you”“Rolling star”“My Generation”などなどほぼすべてのシングルをやってくれた(今調べたら、シングルでやらなかったの“Tommorow's way”だけだった)。おなじみの振り付けありの“Happy Birthday to you you”や、ハンドマイクで歌った“Winter Hot Music”など、ライヴならではの楽しさも色々あった。公式サイトでやってる『YUI RADIO』でおなじみの陰アナ「茂蔵さん」の、「今日来れなかったみなさんから、武道館でYUIにやってほしいことをサイトで募集して、それをYUIにリクエスト」みたいなコーナーもあった(ここはちょっとグダグダでしたが)。
“LOVE&TRUTH”では22人編成のストリングスが登場したし、あと、特筆すべきは映像。最近はこういう大会場のライヴはたいがい後でDVD化されるのが普通で、テレビカメラが何台も入っているのは珍しくないけど、今日の台数はハンパじゃなかった(実際に映像化されるのかどうかは知りませんが)。YUIの歌う姿が、他のアーティストだったらありえないアングルでもって画面上でばんばん切り替わっていくさまは、かなり圧巻でした。
ただし。本当のクライマックスは、最後にやってきた。
二度目のアンコールのラスト、“Thank you My teens”を弾き語りで歌うYUI。キーの最も高いところまでのぼりつめる細い声。切なさと苦しさと喜びと感涙と、もういろんなものが表れた(ように見える)表情。次第に、ライヴが始まった時と同じ、シーンとはりつめた空気になっていく武道館。
歌い終わり、一度ステージを去り、突然またYUIが現れる。で、弾き語りで歌い始めたのは“TOKYO”。途中、感極まったのか、声を詰まらせた時は「がんばれー!」とか声が飛んだが、再び歌い始めるとまたシーンと静まり返り、その1万人近いオーディエンスの歌への集中度及び没入度は、オープニングのあの時を超えるレベルまで行った。
とにかくYUIは緊張していた。キーの高さがぎりぎりの歌が多くて、声が届くかどうかハラハラする場面もあった。MCは、(いつもだけど)基本的にあんまり得意じゃない。その上、奇をてらったことや、驚くようなことや、度肝をぬくようなことは何にもやっていない。にもかかわらず、「ほほえましいもの」や「たのしいもの」や、「心あったまるもの」とかじゃなくて、なんか、すごいものを観た気がした。
20日0:00、COUNTDOWN JAPAN WEST 07/08、12月31日大阪への出演が発表になりました。詳しくはフェス公式サイトを。(兵庫慎司)
YUI @ 日本武道館
2007.11.20