ゼブラヘッド @ SHIBUYA-AX

ゼブラヘッド @ SHIBUYA-AX - pics by Naoaki Nashimapics by Naoaki Nashima
ゼブラヘッド @ SHIBUYA-AX
2011年にリリースされた通算6作目のフル・アルバム『ゲット・ナイス!』を携えての、ゼブラヘッドのジャパン・ツアー最終日。SHIBUYA-AXでの2デイズ2日目であり、関東圏では横浜を含めて3本目というステージだ。新作ライヴという意味では昨年のサマソニ来日があったものの、というかフェス出演を勘定に入れればほぼ毎年のように来日公演を行っているゼブラヘッドだが、支持基盤の頑強さを改めて物語るツアー日程になっていた。開演時間前になって、また雪のちらつく渋谷。そこを幾人かのバンドTシャツが走る。バンドへと寄せられる絶大な信頼感は、例えばこんなふうに形を成すものなのだ。

19:00きっかり、ステージに登場したのは、今回のツアーでサポート・アクトを務めてきたウェールズ出身のエモ・バンド=キッズ・イン・グラス・ハウスだ。彼らも昨夏、3作目のアルバム『イン・ゴールド・ブラッド』をリリースしていたが、こちらのパフォーマンスがいきなりヴォルテージ高かった。激しいアクションを交えながら右肩上がりに昂る歌を届けて来るアレド(Vo.)。そしてヘヴィかつタイトなアンサンブルでメロディアスな楽曲を支えるバンド・メンバーたち。オーディエンスも高らかに間の手を上げ、なぜかFC東京のユニフォームを着込んだゼブラヘッドの面々も乱入してアレドを担ぎ上げてしまう。オーディエンスの好反応ぶりに焚き付けられたかKIGHのパフォーマンスは更にエキサイトし続け、アレドは喉も裂けよとばかりにゼブラヘッドへのエールを贈りながら、最後にはフロアに飛び込んでいった。僅か30分という時間だったけれども、すこぶる濃密なステージになった。

転換中、ステージにはエアバッグのヤシの木のオブジェやドリンク屋台が持ち込まれ、ローディーやスタッフはアロハ・シャツに腰ミノ姿。フロアにはおもちゃの首飾りが投げ込まれている。米西海岸どころかすっかり南国のビーチと化してしまったステージだ。一応もう一度書いておくが、屋外の天候は雪である。シュールというかバカバカしいというか、この日常を軽々と超越してしまう光景がゼブラヘッドなのだと改めて実感する。歓声に包まれてメンバーがいよいよ登場し、新作のオープニング・ナンバーでもある“Black Out”を思い切り良く披露。OIコールを巻き起こし、人の波が渦と化し、さっそくブチ上がる場内である。続いては、マッティ(Vo./G.)が電光石火ギター・フレーズのイントロでオーディエンスの火に油を注ぐ“Two Wrongs Don't Make A Right,But Three Rights Make A Left”だ。メロディック・パンクの瞬発力を最も効果的に活かしたラップ・ミクスチャー。ゼブラヘッドがキャリアの中で磨き上げてきた財産が、一瞬のうちに伝えられてしまうのだった。

“Jag-Off”ではアリ(Vo.)の合図でオーディエンスがしゃがみ込んだ状態からの一斉ジャンプを繰り広げ、“Truck Stops And Tail Lights”では「ここで飲みたい人はいるか? 20歳以上だぞ!」という呼び掛けで男女一名ずつのファンがステージに上げられ、屋台でドリンクを振る舞われている。洋楽バンドらしからぬ「近さ」。いや、邦楽のライヴだってそうそう観られる光景ではないだろう。アリが「今日は、今回のツアーの最後のショウなんだ。マジでありがとう!」と告げれば、ベン(B.)は「日本ハ、ワタシノ、第2ノ、フルサトデス!」と語って喝采を浴びる。相変わらず、「シャ●ハチ、シテクダサーイ」とか「マ●コ、ダイスキー!」とか「チ●コ、チイサーイ!」とか書くこともためらわれるようなお下劣サービスMCを飛ばしまくっていたが、まあそれぐらい、ゼブラヘッドと日本のファンとの絆は深く、強いものなのだ。

今回のジャパン・ツアーでは、新作『ゲット・ナイス!』の収録曲のうち、公演で披露して欲しいナンバーを事前にアンケートで集計していて、結果1位だった“Get Nice!”と2位だった“Nothing To Lose”が演奏されることが確約されていたわけだが、西海岸メロディック・パンクのカラリとしたポジティヴィティとシンガロング・フレーズが詰め込まれた『ゲット・ナイス!』のヴァイブはやはり素晴らしいものだった。“Nothing To Lose”のどばどばと居直りエネルギーを注入され、魂を鼓舞されてしまう感覚は、10年選手バンドのそれとは思えないほどフレッシュで、出たとこ任せで、どん詰まりの日常からの大きな跳躍を目指している。例えば、雪の渋谷に南国のビーチを作り上げてしまうような跳躍。ゼブラヘッドを聴くということは、平坦な日常を飛び越える希望、我々日本人がわざわざ洋楽を聴くという体験そのものだ。最近、twitterでは《#お前らライブ処女何に捧げたの》というタグがあって、筆者はそれを見るのが好きなのだが、今回のゼブラヘッドでライブ・デビューするとツイートしている人がいて、何かもの凄く羨ましいような気持ちになってしまった。

ゼブラヘッド @ SHIBUYA-AX
コーラスの掛け合いでスタートした、ネガティヴィティをねじ伏せるタフなメロディ“Nudist Priest”を披露すると、天皇杯優勝を祝うという態でFC東京の選手団もステージに呼び込まれる。選手たちはさすがに緊張の面持ちだったが、サプライズにトモダチをパーティに巻き込んでしまうところもゼブラヘッド。そう言えば昨夏のサマソニでは『ゲット・ナイス!』つながりということかダンディ坂野だった。アヴリル・ラヴィーンをカヴァーしたレパートリー“ガールフレンド”も盛り込み、キャリアを見渡すセット・リストでパーティが続く。もう、KIGHの熱演に対して負けん気を発揮したのか、それとも酔っぱらっているのか、とにかくどこが沸点なんだか分からないようなパフォーマンスである。こういうところもやはりラップ・ミクスチャーのベテランらしくないというか、ゼブラヘッドの長所であり短所でもあり。いつの間にかKIGHのメンバーも、ステージ上のドリンク屋台でくつろいでいた。

「アメリカでは、両親にオハヨウゴザイマスって挨拶するときに、FUCK YOUって言うんだよ」などと最後までしょうもないジョークを飛ばしながら、本編ラストは“Playmate Of The Year”、“The Set-Up”と往年の人気曲でフロアを揉みくちゃにし続ける。バンドもファンも、いい加減へばってないんだろうか。それでもアンコールで“Get Nice!”のギター・イントロが鳴り響けば全員が復活してしまうのだから、ライヴというのは本当にマジカルでクレイジーな空間だ。アンコールもしっかり4曲、アリが思いっきりフロアにダイブして、今回のジャパン・ツアーは幕を閉じた。またすぐ来日してくれるだろうか。会場の外に出たら冗談みたいに寒くて、みんな冗談みたいにびしょ濡れのTシャツを笑顔で着替えていたが、雪はもう止んでいた。(小池宏和)
ゼブラヘッド @ SHIBUYA-AX

setlist
01:Black Out
02:Two Wrongs Don't Make A Right,But Three Rights Make A Left
03:Jag-Off
04:Ricky Bobby
05:Postcards From Hell
06:Truck Stops And Tail Lights
07:Hell Yeah!
08:Hello Tomorrow
09:Nothing To Lose
10:Rescue Me
11:Mike Dexter Is A God, Mike Dexter Is A Role Model, Mike Dexter Is An Asshole
12:Nudist Priest
13:Girlfriend Medley
14:Mental Health
15:She Don't Wanna Rock
16:Just The Tip
17:Playmate Of The Year
18:The Set-Up
EN-1:Get Nice!
EN-2:Falling Apart
EN-3:Anthem
EN-4:HMP
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