アヴリル・ラヴィーン @ 東京ドーム

アヴリル・ラヴィーン @ 東京ドーム - アヴリル・ラヴィーンアヴリル・ラヴィーン
アヴリル・ラヴィーン、最新アルバム『ベスト・ダム・シング』を引っ提げてのワールド・ツアー=ザ・ベスト・ダム・ツアーがついに日本に上陸。

全国7都市を巡回、11公演行われる今回のツアーの中でもハイライトの一つとなるのが、今夜の東京ドーム公演だろう。これまでリリースしてきたアルバムすべてがここ日本で100万枚以上のセールスを記録しているアヴリルだが、初の東京ドーム公演となる。

ふと周囲を見渡してみれば、思い思いのオフィシャル・グッズを手に目をキラキラさせて、アヴリルの登場を待ちわびる女の子の姿が目に入る。とはいうものの、思いのほか男の子も多いし、年齢層も幅広い。“ガール・フレンド”のイントロ映像が流れると同時に「キャー」と数万人の歓声が響きわたる。「ヘイ!ヘイ!ユー!ユー!」おなじみの掛け合いで、場内が一気にヒート・アップ。いよいよショウの始まりだ。

“ガール・フレンド”で初挑戦したというダンス。なんか本来、性に合ってなさそうなダンスを一生懸命やってるとこがカワイイ。というか、生アヴリルを目にして、まず一言目に出てきてしまうのが「カワイイ」という言葉。身も蓋もないけど、言わせてください。スクリーンにアップで映る顔も、肌ツルツルでとにかくカワイイ。ハイトーンなパートを必死に歌い上げているところ、笑顔、ぴょんぴょんステージを駆け回る姿も可愛い。

実にシンプルなセットのステージだけど、バックに掲げられた巨大フラッグだけでステージをアヴリル色に染め上げてしまっている。なにしろそのピンクのフラッグには、ハートと赤いチェックという女の子を魅了してやまない“最強にカワイイ”モチーフを組み合わせたスカルのロゴが描かれている。最強にキュートで、でも一筋縄でいかないハードネスも持ちあわせていて……ある意味アヴリルのチャーム・ポイントをぎゅっと凝縮させているのだ。このフラッグに限らず、アヴリルは、自分の魅力を客観的に見極めて、そしてオーディエンスの期待も受けとめて、セルフ・プロデュースしていく力がとにかく優れている。デビュー時こそ天然児だったのかも知れないけど、それ以降のアヴリルはずっとプロフェッショナルとしてシーンをサバイブしてきた。

かわいいものに囲まれたステージで、パワフルに、心から歌を歌うことを楽しみながら、まばゆいオーラを放っているアヴリル。一方でそのパフォーマンスは、ロックをポップスを、聴き手が自分のものにしてしまえるような魔法をかけてくれる。つまり思わず「アヴリルみたいになりたい」「ああやって歌ってみたい、もっともっと音楽を楽しめるようになりたい」なんて気持ちにさせる、気さくさと等身大の魅力もあるのだ。マジカルなポップ・スター達は、時代の色を塗り替えたり、聴き手を覚醒させ、その人の人生を替えてしまったりするけど、アヴリルも確実にそんなポップ・スターの一人だってことを、オーディエンスの熱狂が証明していた。

まだまだ日本ツアーは続くので、詳しいセットリストは避けるが、アヴリルによるドラム・タイム、アコースティック、ダンス(アクロバティックな宙返りも)、衣装チェンジ、マイク・チェンジ(ちりばめられたクリスタルの色が違う)あり、元気いっぱいのMCにラップにと、さまざまな仕掛けが気持ち良いテンポで繰り出されて、観客を飽きさせない。アンコールでは、夫であるSUM41のデリックが登場、“In Too Deep”をパフォーマンスという、ファンなら見逃せない場面も。

カワイイ、カワイイ書きまくってきたが、その場に居合わせた数万人を一番魅了したのは、彼女ののびやかで甘辛い歌声だ。広音域を自由に操るというタイプではないが、かわりに揺らぎがなく芯が強い。自分が自分であることを貫いていく、という彼女の曲の世界観にぴったり。新作『ベスト・ダム・シング』の中でもひときわ情緒的でピアノの音色が切ないミドル・ナンバー“ホエン・ユーアー・ゴーン”のイントロが流れた瞬間、場内から大きな歓声と拍手が沸いたけど、彼女にとっては新境地ともいえる楽曲。キャリアを積み重ねてきた今だからこそハマるこんなミドル・ナンバーが、多くのオーディエンスから求められている。なんとも心強い光景だった。(森田美喜子)
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