エルトン・ジョン @ 日本武道館

ステージ上にはグランドピアノが一台。以上。もちろん凝ったステージセットも無ければ、派手な照明もない。満員の日本武道館においてこれほどそっけないステージは個人的にも初体験だったが、逆に言えばこれほど贅沢な空間なかったのではないだろうか。今年還暦(!)を迎えたエルトン・ジョン、6年ぶりの来日公演はエルトンたった一人のピアノ弾き語りによる、とんでもなく親密で貴重なものとなった。

定刻を10分程過ぎたところでエルトン登場。トレードマークとなった真っ赤なタキシード姿の彼はのっけからご機嫌で、遠めには小柄で陽気な好爺に見える。がしかし、そんなエルトンがピアノに指を置き、声を発した瞬間に度肝を抜かれた。武道館の決して良くない音響の中で、伸びる、広がる、震えて昂ぶる至上のヴォーカル。なんだこの60歳は。

極まれにカラオケが被さる以外は、最初から最後まで武道館はエルトンの声とピアノの独壇場と化していた。1曲目“ユア・ソング”から“ロケット・マン”、“ブルースはお好き?”“フィラデルフィア・フリーダム”……とヒット曲連発のセットリストに、最新アルバム『キャプテン・アンド・ザ・キッド』の曲も織り交ぜながらのトータル28曲。客層もリアルタイマーと思しき熟年層に加えて、子供連れの若い夫婦やカップル等これまた予想外に多様で、60年代から何度も何度もキャリアのピーク・タイムを刻んできたエルトンならではのファン層だった。

あまりに濃密な音楽体験だったせいか、ラストの“サークル・オブ・ライフ”をエルトンが歌い終わる頃にはこっちがぐったりしてしまったが、ステージ上のエルトンは生気みなぎる笑顔で客席に手を振りまくっていた。なんだこの60歳は!(粉川しの)
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