エイミー・マクドナルド @ USAロサンゼルス/トルバドール(2008.9.23.LA現地時間)

エイミー・マクドナルド @ USAロサンゼルス/トルバドール(2008.9.23.LA現地時間) - エイミー・マクドナルドエイミー・マクドナルド
エイミー・マクドナルド @ USAロサンゼルス/トルバドール(2008.9.23.LA現地時間) - エイミー・マクドナルドエイミー・マクドナルド
昨夏、全英アルバム・チャートの2位でデビューを果たして一躍有名になったエイミー・マクドナルド。デビュー作『ディス・イズ・ザ・ライフ』は全世界で100万枚以上のセールスを達成、日本でも昨年末にリリースされたのだが、イギリスで火がついたものになかなか手を出さないアメリカでは、今年8月にようやく発表された。

この全米デビューに伴うUSツアーのロサンゼルス公演に、足を運んだ。会場のトルバドールは30年以上の歴史を誇る小さなライブハウスで、ザ・バーズからパール・ジャムまで、数多くの大物アーティスト達が初ライブを行った場所として有名だ。現在も注目の新人やイギリス、ヨーロッパで人気の高いアーティストがよく公演を行っている。

会場に足を踏み入れて意外に思ったのが、トラヴィスに影響を受けて音楽を始めたという21歳の新人のショウ にしては、会場を埋め尽くした観客の年齢層が高めだったこと。一番前でステージを囲んでいたのは若い女の子達だったけれど、他は20代後半から30代が大半で、40代の人達の姿も見受けられた。いかにも音楽好きといった様子のどちらかといえば地味な客層に、まだエイミーがここでは「私達だけが先に知っているアーティスト」的な存在であるのを感じた。

10時過ぎ、カラフルなスポットライトが灯るステージに、エイミーと4人のバンド・メンバー達が登場。この瞬間思わず、彼女の凛とした美しさに息を飲んでしまった。ハートのバックルがついた赤いベルトの可愛さがちょっと目立つぐらいで、基本的には手にしたアコギによく似合うかなり素朴な服装なのに、彼女は光っていた。

オープニングは1stシングルの“ポイズン・プリンス”。軽快なリズムに乗せてアコギをかき鳴らしながら歌い出したエイミーの声は、アメリカのシーンで耳にするどの女性アーティストにも全く似ていない。そして、アルバムで聴くよりも数段強い。太く強くどっしりとしていながら、とてもなめらかで美しく、何もかもを飲み込んでしまいそうな包容力があるのだ。

だが、曲が終わって「観に来てくれて本当にありがとう」と言った時の彼女の地声は驚くほどなまっていた。さすがスコットランド出身、歌っている時とはまるで別人だ。けれど一生懸命笑顔で話す愛らしいエイミーに観客は吸い込まれるように耳を傾け、笑い、歓声を送っていた。それで緊張がほぐれたのか、曲を追う毎にエイミーのボーカルはますます強く響き渡り、一緒に合唱している訳でもないのに場内の高揚感がどんどん高まっていく。どの曲もアコギの音を生かしたフォークを基調に作られているが、彼女の個性的な声と歌い回しの魔力で、生まれて初めて耳にするサウンドのような新鮮さを放っている。その声で切々と歌われるのは、『これぞ人生』というアルバム・タイトルが物語る通り、現代を生きるエイミーのリアルなストーリーだ。

「ここではどうか分からないけど、イギリスじゃセレブがものすごく騒がれてるんだ。セレブリティって、昔ならフランク・シナトラとかそういう人達なのに、今のセレブって何なの、あれ? 私達と何も変わりないのにね(笑)」と言って紹介した曲のタイトルは“フットボーラーズ・ワイフ”。誰を指摘した歌かは言うまでもなく、笑い声と拍手が同時に巻き起こる。続いて「イギリス出身だとアメリカの音楽は聴かないんじゃないかと思うかもしれないけど、そんなことないのよ。私、キラーズが大好きなの!」と言ってキラーズの“ミスター・ブライトサイド”も披露してくれた。アメリカのバンドだけれどイギリスの匂いがするキラーズの曲が、スコットランド生まれのエイミーによって再解釈されるという事実が何より面白かったが、テンポもテンションも控えめにした彼女のカバーは、一味違う深い味わいを感じさせる曲として鳴っていた。

アンコールは、これもアメリカの観客に気を配ってくれたのか、ブルース・スプリングスティーンの“ダンシング・イン・ザ・ダーク”。オリジナルよりずっとしっとりとしたカバーで、そこはかとなくイギリスを感じる。彼女の声にはどんな曲も無理なく自分のものにする驚異的な個性があることを改めて知らされた。

続くアルバム・タイトル曲の“ディス・イズ・ザ・ライフ”で会場の盛り上がりは 最高潮に達し、“レッツ・スタート・ア・バンド”で多幸感を場内に浸透させたまま、ショウは幕を閉じた。最後にバンドと並んで深々とお辞儀をした後にあどけない笑顔を見せたエイミーはいかにも21歳だったが、ショウは20年来のベテランのもののようだった。畏れを感じる才能を実に久々に目の当たりにした夜だった。(鈴木美穂)
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