女王蜂 @ 赤坂BLITZ

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女王蜂 @ 赤坂BLITZ
あらゆる熱と思想と感情がうごめいているようでいて、たったひとつの大切な「何か」だけをひたすら結晶化しているようでもある、美しく壮絶なライブだった。女王蜂の初の全国ツアー『孔雀婦人』のファイナルとなる、赤坂BLITZ公演=降臨儀式編。真のオリジナリティとは何か、表現するとはどういうことか、人の心を動かす本当の力とは――そんな、表現者であれば誰しもが直面する命題に剥き身のパフォーマンスで片っ端から答えを提示していくような鬼気迫るエネルギーが、4人の佇まいには迸っていた。

19:08、お馴染みのSE=ザ・ピーナッツの“恋のロンド”に乗せて、やしちゃん(B)/ルリちゃん(Dr)/ギギちゃん(G)が登場。挨拶代わりに赤黒いグルーヴをねっとりと叩きつけ、“砂姫様”の暴力的なアンサンブルへ突入すると、ステージ下手からゴールドのドレスを纏ったアヴちゃん(Vo/Key)がしゃなりしゃなりとオン・ステージ! 羽衣のようなケープをたなびかせながら艶かしいポーズを決め、ドスの効いた低音とファルセットを巧みに繰り出しては、既に熱狂の坩堝と化した満場のフロアを挑発していく。3曲目“鬼百合”では、ゴールドのワンピを脱ぎ捨てシルバーの超ミニスカドレスに様変わり。「(雨天のため)足元が悪いなか、集ってくれてありがとう。皆が欲しいものが私にはわかるわ。ほんまにわかんねんで」というMCから雪崩れ込んだ“デスコ”では、むせ返るような色香と背徳的なムードがマーブル模様を描いてせめぎ合う、未曾有のカタルシスを生み出したのであった。
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バブル期の享楽的なムードを疾走感あふれる爆音に投影させた“バブル”でジュリ扇を縦横無尽に振り回し、「皆がすごすぎて、お気に入りだったスカルプ(ネイル)が1本取れたわ」と告げるアヴちゃんの強烈なカリスマ性は言うまでもないが、彼女をバックで支えるルリちゃん/ギギちゃん/やしちゃんの鬼気迫るプレイヤビリティも素晴らしい。激情あふれるシャウトをブチかましながら全体重をドラムに乗せてヘヴィなビートを叩き出すルリちゃん。青白い炎がメラメラと燃え盛るような鋭利なギターリフをクールに掻き鳴らすギギちゃん。オーディエンスの衝動を底から突き上げるグルーヴィーなリズムをセクシーに弾き鳴らすやしちゃん。そんな3人が時に性急に、時に倦怠的なビート感で紡ぎ出すアンサンブルには、血なまぐさいほどに生々しい匂いが宿っている。頭のてっぺんから足先までデコラティヴに着飾った彼女達が鳴らす音が、こんなにもザラリとした「生」の感触を聴く者にリアルに伝えてくるという事実は、まさに奇跡と言っていいだろう。そして、その突きつめられたビジュアル・イメージと血肉化された音とのせめぎ合いが、オーディエンス1人1人の細胞という細胞を執拗に刺激し、痺れるほどの興奮を生み出しているのである。

メランコリックなピアノの旋律の上でアヴちゃんのファルセット・ヴォイスが切なく響いた“口裂け女”、ミラーボールが輝く中で無重力空間をたゆたうような浮遊感が描かれた“コスモ”、世の中の悪も不条理もすべてを赦し慈しむような壮大な愛の歌が届けられた“棘の海”で、本編終了。“火の鳥”“人魚姫”の連打で再びダーティーで妖艶な狂騒空間へと導かれたアンコールでは、新曲2曲を含む全6曲を披露。「心をこめて」と歌われた大ラス“燃える海”では、約1時間半にわたってカオティックな轟音が押し寄せては消えて行った赤坂BLITZを優しく癒すかのような、荘厳で煌びやかな光の世界が描かれた。
女王蜂 @ 赤坂BLITZ
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曲が終わるたびに「ありがとう」と笑顔で告げたアヴちゃんの姿が忘れられない。さらに「私らは服デコって曲作って、ほんまに自分らの好きなことしかやらない贅沢な毎日を送ってるんだけど。そのおかげで励まされたり涙流したりしてくれる人がいるうちは、絶対辞められへんなと思って」とアンコールで語られた言葉が強く心に残った。「根源にあるのは、好きなことして欲しいし好きに生きて欲しいってことなの」とも言っていたが、猥雑で破壊的で享楽的な女王蜂のロックンロールには、常にリスナーへの溢れる愛と、混沌とした世界に立ち向かうツールとしての自由の精神が、哀しいほどに満ちている。メジャーやマイノリティの枠に捉われることなく「ただ自分達たちが心底やりたい事をやっているだけ」とでも言わんばかりに躊躇なしに放たれる表現は、だからこそ美しく感動的だし、シーン全体の価値観を根底から揺るがす破格のパワーを持ち得たものでもあると思う。それが痛いほどよくわかるアクトだったし、これからも己のポリシーを貫きながら快進撃を続けていくだろう女王蜂の未来に否応なしに胸が躍った、刺激的な一夜だった。(齋藤美穂)
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