6月のアルバム『Sing』リリースとほぼ同時に、全国を廻ってきた「GRAPEVINE Tour 2008」。いよいよ10月4日の沖縄公演を残すところとなり、関東では今夜のJCBホールでのライブが最後となった。
“Sing”“CORE”と最新アルバムからの2曲で幕を開け、一段と歓声の高まった “冥王星”や「古い曲をやります」と田中のMCで始まった“想うということ”などの昔の曲を織り交ぜながら、ライブの全体の3分の2が過ぎるまで軽いMCを挟みながらも、ほぼノンストップで進行されたライブ。今夜JCBホールに集まった3000人がGRAPEVINEと一対一で向き合いながら、彼らが奏でる音世界の深淵にじっくりと嵌っていた。
そこで「お〜い、戻ってこいよ!」と田中の一言。ほんと実際、この言葉を聞いたときにハッと我に返ったぐらい、彼らの音に対しては聴く側も真剣勝負になってしまう。聴いてるみんながわーっとひとつになることで一体感を求めるんじゃなく、ひとりひとりが自分に対して向き合う音だったように思える。
それからは「これからゆっくりと盛り上がっていくで」と言っていたのに、実際演奏されたのは、“女たち”“アンチハレルヤ”など、観客も手を挙げてリズムにのっていく曲たちが続く。そんなとこからは、田中の天邪鬼的な精神の一部がリアルに感じられておもしろかった。そして、新旧織り交ぜたセットリストのなかで、歌い手のしての飛躍も感じられた。
おまけにただ単にシリアス路線でいくのではなく、お隣東京ドームでライブをやっていた某アイドルグループに負けへんで、というMCをしたり、アンコールの1曲目が終わったときに始まった、ベースの金戸の“おやつタイム”!には、田中も初めて観るという、ジャ○ビーなど3種類のお菓子を使ったジャグリングを披露するなど、時にはリラックスタイムもあって、音をじっくり聴かせる場面、または身体で体感させる場面などを含め、多面性のあるライブを心から楽しめた一晩だった。(石井彩子)
GRAPEVINE @ JCBホール
2008.09.28