SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール

SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - DAVID GUETTADAVID GUETTA
「ソールド・アウトです! 今日来れなかった人の分まで楽しんでいきましょう!」、―DJ MAYUMIのオープニングDJに続いて登場した総合MC=MiChiのコールに、フロアから沸き上がるホットな歓声! 昨年は震災の影響で開催中止となったため、今回が実に3年ぶりの復活開催となったダンス・ミュージック・フェス=『Springroove』。昨日の『PUNKSPRING』と会場(幕張メッセ9・10・11ホール)も、[RED STAGE][BLUE STAGE]の2ステージ制という開催方式も同じながら、オーディエンスの佇まいはガラリと異なる。Tシャツにスニーカーで動きやすさ重視!というフェス定番の出で立ちのオーディエンスよりは、ハイヒールにミニスカワンピに……といったファッション面でも気合いの入った女性客が客層の中核を成すという、まさに唯一無二のオトナの社交場的フェス。13時開場/開演というゆっくりめの時間設定も、後半の超満員状態が嘘のようなスタート時点のスロースターターぶりも、オトナ向けのフェスならではのものと言えよう。前日にはBIGBANG/2NE1/LMFAO/AZEALIA BANKS/KREAYSHAWN/DJ LICCA(Opening DJ)による神戸ワールド記念ホール公演も大成功の『Springroove 2012』、東京公演いよいよ開催!

SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - BOBBY BURNSBOBBY BURNS
SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - AFROJACKAFROJACK
2009年の前回から大きく変わった点は2つ。DAVID GUETTAにBOBBY BURNSにAFROJACKに……といったDJスタイルのソロ・アーティストのみならず、m-floやLMFAOといったDJ主体のアーティストがメイン・ステージにフィーチャーされていたこと(過去にもDJアクトの出演はあったが、第3のステージ=[GREEN STAGE]でのパフォーマンスだった)。そして、BIGBANG/2NE1といったK-POP勢やショーケース・アクトとして登場したエンタテインメント・チーム=OH GIRL!も含め、ダンス主体のアクトをメイン・プログラムに盛り込んでいること――これら2つは見方によっては「大きな1つの変化」でもある。つまり、これまでの「R&B/ヒップホップに特化したブラック・ミュージック・ルーツのダンス・フェス」から「ダンス・ミュージック全般を網羅するフェス」へ変化した、ということだ。そして……他でもないそのボーダレスな狂騒感が、この日の幕張メッセを無上の祝祭感で満たしていた。

SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - LMFAOLMFAO
その「変化」の最も象徴的な存在と言えるのが、この日[RED STAGE]のトリ前を飾ったエレクトロホップ・デュオ――というよりは今や世界が認めるハイパー・パーティー集団=LMFAOだろう。残念ながらDJスカイブルーはヘルニアのため来日できなかったものの、DJに生ドラムとギターを加えた編成でオン・ステージしたレッドフー、“ソーリー・フォー・パーティー・ロッキング”でいきなり沸点越えの歓喜爆裂空間にメッセ丸ごと叩き込み、「今日はスペシャル・デイだ! なんたってエイプリル・フールだからな!」と叫び上げつつ、ゼブラ&ヤシの木の風船とラインダンスとブレイクダンスとスモークが入り乱れる狂騒空間の端々から触れた者すべてをアゲ倒す快楽ヴァイブを放射してみせる。45分のアクトでアンコール的演出2回(!)という展開の中に、文字通りシャンパン・シャワー満載の“シャンパン・シャワーズ”もビキニパンツ一丁のダンスありありの“セクシー・アンド・アイ・ノウ・イット”まで盛り込み、「ここまでやって初めてパーティーなんだ!」的な潔いまでのパーティー道精神を見せつけ、面白いように会場をダンスとシンガロングと熱気で埋め尽くしてみせた。

そして、この日のフィナーレを飾った、フランスが誇るスーパースターDJ=デヴィッド・ゲッタ! ハウスDJの祝祭感の先に凛としたでっかい高揚の風景を描き出すというか、彼の紡ぎ出すビートとサウンドスケープには常にポップの悦楽と当時に透徹した空気感がプログラミングされている。90年代トランスからサイケ感やアシッド感を取り除いてハイパーな覚醒感だけを「今」のダンス・ミュージックにジャック・インしたとでも言えば、少しはこの多幸感に近いだろうか? 最新アルバム『ナッシング・バット・ザ・ビート』の文字が背後のヴィジョンに踊る中、“スウェット”から1曲1曲高揚感のその先へオーディエンスを時に紳士的に、時にワイルドに誘っていくようなアクト。“ウィズアウト・ユー”など歌モノ・トラックで会場狭しとシンガロングを巻き起こし、ブラック・アイド・ピーズ“アイ・ガッタ・フィーリング”を披露するなどサービス満載。21時過ぎても満員状態だったメッセを見事にクライマックスへと導いてみせた。さらに、デヴィッド・ゲッタの弟分的存在であるAFROJACKのダイナミックなサウンド・マジシャンぶり、その秘蔵っ子=BOBBY BURNSのストイックなビート感……とオランダDJの才気が立て続けに咲き乱れた[RED STAGE]の中盤の流れも、今年の『Springroove』の多幸感にさらなる彩りを添えていた。

SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - 加藤ミリヤ加藤ミリヤ
SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - SHUNSHUN
邦楽アクト勢の中でもMAXのパーティー空間を作り出したのはm-floのTAKU&VERBAL! “come again”に始まって全編ルール無用のノンストップ・セルフ・リミックス的にスリリングに展開するステージの中で、2NE1のCLをフィーチャーした“She's So(Outta Control)”を披露したり、CLと入れ替わりで登場したチアリーダー風ダンサーがあっという間に全員ビキニに変身したり、「実はスペシャル・ゲストを呼んでいます!」というVERBALのコールと同時にあのミゲルくんが登場して幕張メッセ一丸の「消臭力」シンガロングを巻き起こしたり……と多彩な大ネタを駆使してアゲ倒していく。マドンナのようなコスチューム&ヘッドセット・マイク姿でバキバキのダンスと歌を披露してみせたのは加藤ミリヤ。「『Springroove』に出るのは2回目なんだけど……その時に来てくれた人いるかな?」とオーディエンスに呼びかけながら、“RAINBOW”“I miss you”などをしなやかに歌い上げていく。19歳・大阪出身の気鋭ラッパー=SHUNは[RED STAGE]のオープニング・アクトとして登場。アグレッシブなナンバーから清水翔太作曲のクールな楽曲“No More Love”、ゲスト・ヴォーカル=Aliceとともに披露した“X LOVERS”まで剛軟自在な可能性を見せつけていた。

K-POPダンス・アクト勢からは2NE1とBIGBANGが登場。完全洋楽志向のパワフル&クールなトラックを全身で楽しむように渾身のパフォーマンスを展開する2NE1のステージ。“LONELY”“GO AWAY”など代表曲を畳み掛けたステージの中盤にはm-flo・VERBALが登場、今度は2NE1×VERBALバージョンの“She's So(Outta Control)”を披露。30分ほどの持ち時間をハイテンションで駆け抜けてみせた。そして、前日の神戸でヘッドライナーを務めたBIGBANGは[BLUE STAGE]のトリとして出演。冒頭の“TONIGHT”からキレまくりのダンスで終盤の熱気をさらに沸点へと煽ってみせた。途中、「ちょっと待って! (フロアの)みんなのエネルギーがすごすぎて……俺、足りないな!」とファンの歓声を誘ったスンリは、“FANTASTIC BABY”まで終わったところで終演……というところで「俺、帰りたくないんだよね!」とメンバーに呼びかけつつ、舞台に呼び込んだ2NE1と“FEELING”を共演!

SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - AZEALIA BANKSAZEALIA BANKS
SPRINGROOVE 2012 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - KREAYSHAWNKREAYSHAWN
女性新鋭シンガー/ラッパーが集結した序盤も最高だった。「ニホンダイスキ!」とキュートな笑顔を惜しみなく振り撒いていたのは、今や新たなUKポップ・アイコンとなりつつある21歳・ピクシー・ロット。しっとりしたR&B系の曲も大編成ダンサーを擁した“キス・ザ・スターズ”のハウス系ナンバーも、艶やかなヴォーカリゼーションでメッセの巨大な空間へと解き放ち、100万枚アーティストの実力を証明してみせたし、“212”など野性的なトラックをさらに野性的なライムを速射砲のように繰り出すハーレム発のフィメール・ラッパー=AZEALIA BANKSから「ゲンキ?」「チョーコワイ!」(「チョーカワイイ!」のつもりだろう)と日本語MCを連発しながらテクノ系のナンバーからドープなビートまで乗りこなすKREAYSHAWNへと続く若手女性ラッパーの流れは、ダンス・ミュージックの「これから」を照らし出す豊潤な才能の在り処をはっきりと指し示すものだった。(高橋智樹)


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