THE BACK HORN×Nothing’s Carved In Stone @ SHIBUYA-AX

ロックに触れるとき、殊更に「LIVEでなければダメだ」という考え方を持つのは好きではないのだけれど、それにしてもこのときばかりは「LIVEである」という感覚にさらされ続け、しかもあっという間に感じられた一夜であった。THE BACK HORNとNothing’s Carved In Stoneの対バン企画。公演タイトルも、それぞれのグループの企画タイトルが合体した『KYO-MEIライブ〜シリウス & Hand In Hand』となっている。今回レポートするのはTHE BACK HORNがトリを務めた東京・SHIBUYA-AX公演だが、これに先行して3/31には大阪でNCISがトリを務める『Hand In Hand & KYO-MEIライブ〜シリウス』が行われていた。

というわけで、早々に熱気ムンムンのオーディエンスがまず迎え撃つのは、NCISである。メンバーの装いも、それぞれに春めいている感じがいい。村松拓(Vo.)はチェック柄のシャツ&ジーンズというラフな格好なのに、どうしてこうもフェロモン全開になってしまうのだろう。大喜多崇規(Dr.)と日向秀和(Ba.)の立て続けに小爆発が起こっているようなリズム・セクションに、生形真一による悲鳴のようなギター・フレーズが噛み付いて、まずは目下の最新アルバムである『echo』から“Truth”を投下。続く“Spiralbreak”では、鋭利な音色とテクニカルなディレイを組み合わせたウブのプレイと、ひなっちの高速ベース・プレイがスリリングな交錯を聴かせてくれる。

控え目な同期サウンドも加わるNCISのパフォーマンスは、しかしそれ以上にロック・バンドの、いや、ロックというジャンルですらなく音の向こうにメンバーそれぞれの顔が見えてしまうほどに、生々しく記名性の高い音像で届けられる。下手をすればエゴの衝突になってしまいかねない個性的な4人が、緊迫しまくった一期一会の音のコミュニケーションを繰り広げ、刺激的な倍音の彼方で何かを掴まえようといつでも躍起になっているのだ。2009年のデビューから既に3作のアルバムを発表しているという創作ペースも衰えることなく、今回のステージではダンサブルな曲調の“Inside Out”、そして切実なエモーションとともに投げ掛けられる、バラバラな思いを繋ぎ止める意志の塊のような“Pride”と2曲も新曲が披露された。

「タイトルについて話をさせてもらうと、shake handじゃなくて手を取り合ってってことで、お互いを受け入れてやってこうってことなんですよ。で、普段は伝えるってことをしなきゃって思ってるんですけど、要するに、俺たちは一生懸命にやってるんで、お前らがもっと全力で食ってかかってこいってことですよ! いけるかAX!!」と煽り立てる村松。その後の終盤3曲の盛り上がり方は尋常ではなかった。このメンバーの顔ぶれの中でそれぞれに居場所を確保すること自体が必死なんだと。だからオーディエンスも相応の熱量で一瞬一瞬に向き合ってくれと。「今を生きる」という手垢のついたフレーズだけでは物足りないほどに、LIVEな実感そのものを共有するステージであった。

急ピッチの転換(本当に早かった)を経て、いよいよTHE BACK HORNが登場である。山田将司(Vo.)が「こんばんは、THE BACK HORNです」とシンプルな挨拶を済ませ、松田晋二(Dr.)の4カウントを合図に“雷電”の念仏のようなトランシーなメロディとメッセージを絞り出してくる。オーディエンスを焚き付けると言うよりは、いきなりフロアごとバンドの世界観の中に呑み込んでしまうような、そんなオープニングになった。岡峰光舟が身悶えするような激しいアクションとともにベース・ラインを繰り出し、真っ赤な照明の中で菅波栄純のギター・フレーズが捩れながらぶっ飛ぶ“罠”も然りである。

3月にリリースされたシングル『シリウス』のカップリング曲“一つの光”が、OIコールを巻きつつ走り出す。LIVEがどうのこうのというよりも、THE BACK HORNにとっては会場の空間内に描き出されるものすべてが、この世に生を受けた苦しみであり、生命の儚さであり、だからこそ生命を慈しむことが出来るという、一貫した表現テーマと共にある。こんなにもあらゆる角度から、あらゆる切り口で、命を語り続けてきたバンドがあるだろうか。あらかじめ悲しみを抱えて生れ落ちた唱歌のようなナンバー“桜雪”の後には、山田の柔らかいアコースティック・ギターと栄純の小気味好いエレクトリック・ギターの音色とが重なる、こちらも『シリウス』のカップリング曲“クリオネ”だ。《強すぎる想いは時々体も心も置いてけぼりにするから》。そんな歌詞の中に、重いテーマと向き合い続けてきた彼らのキャリアを見つけることも出来る。

「まだまだまだまだ盛り上がって行きましょう! いいですかー!!」と松田。“真夜中のライオン”にフロアがどよめきつつ沸き上がりながら、“コバルトブルー”、“刃”と連なってしまう後半は凄まじかった。男性も女性も関係なく、生命の迸りという意味で「雄々しい」シンガロングを繰り広げる。そのとき山田はマイクをフロアに向けていたが、そんな彼が腰を深く落として、上体を反らしながら歌うときのあの姿勢。たぶんキャリアの中で彼自身が最も歌に力を込められる姿勢を編み出していったのだろうけれど、あれを続けるのって下半身(太もも)の疲労が半端ないのではないか、と余計な心配をしてしまう。でも彼は、その歌唱スタイルをやめないのだ。「声が出る」という肉体の実感が、疲労よりも優先されるからだろう。

「ナッシングスとこうして一緒にやれて嬉しいです。手を取り合って、何が起こるか分からない人生を越えるための音楽を、俺たちはやってると思って。そこにみんなが来てくれて、こうして楽しんでくれてる顔を見ると、本当に嬉しいです。ありがとう」。改めて松田はそう語っていた。そして強く、優しく届けられる“世界中に花束を”。更には、まだ何も終わっていない、とばかりに次なるステージへと向かう“シリウス”で完璧なフィニッシュを見せてくれるTHE BACK HORNである。

既にニュースでも報じられているとおり(http://ro69.jp/news/detail/66156)、アンコールでは6/6にニュー・アルバム『リヴスコール』をリリースすることが告知された。松田が「去年1年間で抱えてきた思いを閉じ込めました」と熱く話していたし、期待が高まるところだ。そしてステージでは最後の最後に“無限の荒野”を披露。髪もシャツも自身の汗でずぶ濡れの山田が、仁王立ちでギター・ソロを弾きまくる栄純を肩車で担ぎ上げてしまう。しつこく余計な心配をするが、太ももの疲労に追い打ちをかけていないだろうか。それにしても、細身に見えるのに力持ちだな、山田は。(小池宏和)


セット・リスト

Nothing's Carved In Stone
01: Truth
02: Spiralbreak
03: November 15th
04: Falling Pieces
05: Chain reaction
06: Inside Out
07: Pride
08: Sands of Time
09: Rendaman
10: Around the Clock
11: Isolation

THE BACK HORN
01: 雷電
02: 罠
03: 一つの光
04: 汚れなき涙
05: 桜雪
06: クリオネ
07: 真夜中のライオン
08: コバルトブルー
09: 刃
10: 世界中に花束を
11: シリウス
EN: 無限の荒野
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on