第一回目を「ゼロ」とし、それ以降は「テント」というサブテーマを掲げて武道館ワンマンを行ってきた彼ら。4度目となる今回は「テント③」というわけで、場内に足を踏み入れるなりステージいっぱいに張られたサーカス小屋のようなテントが目に飛び込んでくる。“痛い青”からライブがスタートすると、テントを覆う白い幕が左右に開いてメンバーの姿が露に! そのオープニングだけで幻惑的なプラ・ワールドに引き込まれてしまったが、その後も武道館という大きな会場の特性を活かしたド派手な演出の目白押し。特に「青の運命線」ツアーファイナルをいうことで、青のテーマを徹底的に貫いた楽曲と演出には圧倒された。“静脈”ではステージ前方で青い炎が噴き上がったり、“蒼い鳥”では窓越しに原風景が広がる映像をバックにメランコリックな心象風景が描かれたり。さらにはレーザー光線やサーチライトを駆使しながら、プラならではの永遠に朽ちることない青の世界観で武道館をダイナミックに染め上げていく。
その一方で、青の世界観とコントラストを成すような楽曲や演出も満載。真っ赤なライトの下で血が逆流するようなヘヴィな轟音が吹き荒れた“讃美歌”、オレンジの光と美しいアコギの旋律が観客を温かく包み込んだ“37℃”、ポップなメロディで武道館を心地よく揺さぶった“ガーベラ”など、カラフルな色彩を感じさせるイメージが鮮やかに描かれていく。「武道館―!」「おー!」というコール&レスポンスから曲に雪崩れ込んだ“うわのそら”では、ナカヤマアキラ(G)が操作するPCがフリーズして出だしのエレクトロビートが再生できず、「PCがご機嫌ななめです!」(ナカヤマ)とプレイを一時中断する一幕も。しかし演奏を再開するなり満場のハンドクラップが鳴り響き、ピンクやイエローのレーザー光線が飛び交う煌びやかな祝祭空間へ上り詰めた瞬間は、青の世界の繊細な美しさとはまた違った開放感があって、楽しい。
アンコールでは、ツアーを振り返ってメンバーそれぞれがMCを。サポート・ドラマーを務めてくれたHIMAWARIとknob、そしてスタッフやファンへの感謝の言葉を口にしたナカヤマ、長谷川正(B)に続いて、「ただいまー!」とマイクをとったケンケンに客席から「おかえりー!」という声が飛ぶ。さらに「皆のおかげで戻って来れました。これからは一生ドラマーとして尽くすことで感謝の気持ちを返していきたいと思います」と述べて、有村にマイクリレー。意外にも「ライブでやるのは初めて」というウェーヴをぎこちなく繰り広げ、“ヘイトレッド・ディップイット”“puppet talk”を畳み掛けて大団円!
――と思いきや、エンディング映像に続いて「特報」として、15周年樹念第二弾シングル“くちづけ”が6月20日にリリースされることが告知。本編2曲目でも鳴らされた、ディストーション・ギターと甘美なメロディが絡み合うシューゲイザー直系の新曲の映像が流れる。そして仮面を被ったメンバーとピエロ姿の有村が再びオン・ステージ。最後は“空中ブランコ”で再び夢幻の世界へと引きずり込まれて、2時間半を超えるアクトは終幕を迎えた。
武道館ワンマンという特別な舞台を存分に盛り上げる、手の込んだ仕掛けとキャッチーな楽曲がてんこ盛りだった今夜のアクト。「青い運命線」というツアーテーマも手伝って、濃密なサウンドスケープで聴き手の胸をギュッと締めつけるPlastic Treeの音世界が見事に花開いた、最高のアクトだった。佐藤ケンケンの復帰戦として、万感の思いに包まれたことも今夜のライブをメモリアルなものにしていたと思う。こうして様々な紆余曲折を経験しながらも、空へ向かって枝葉を伸ばしていく樹木のようにしなやかな成長を遂げていくPlastic Tree。その記念すべきデビュー15周年イヤーは、まだ始まったばかりだ。(齋藤美穂)
セットリスト
1.痛い青
2.くちづけ(新曲)
3.メルト
4.エとセとラ
5.讃美歌
6.静脈
7.37℃
8.蒼い鳥
9.ガーベラ
10.うわのそら
11.藍より青く
12.デュエット
13.涙腺回路
14.メランコリック
15.春咲センチメンタル
16.アンドロメタモルフォーゼ
アンコール
17.ヘイトレッド・ディップイット
18.puppet talk
※告知映像(くちづけ)
19.空中ブランコ