J @ SHIBUYA-AX

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「行けるかー!」という勇猛果敢なJの扇動に「うぉー!」と沸く大歓声! ひとたび曲がはじまれば、満場のフロアはオイコールとモッシュとダイブが乱れ飛ぶ狂騒空間と化していく――3月21日リリースの最新アルバム『ON FIRE』を引っ提げ、3日のShibuya O-EAST、4日の横浜BLITZとサーキットしてきた『J LIVE 2012 [ON FIRE] -Special 3Nights Circuit-』の最終日。日中には突然のゲリラ豪雨とヒョウに見舞われたこの日だったが、そんな悪天候を秒殺で吹き飛ばしてしまうほどの凄まじい熱狂が、会場となったSHIBUYA-AXには生まれていた。

一夜目目はtricot、二夜目はPay money To my Painをオープニング・アクトに迎えた当イベント。最終日の今夜のゲストは、WHITE ASH。オンタイムの18時ちょうどに登場した彼らは、冒頭から怒涛のビートと鋭利なギターがせめぎ合うカオティックな音塊を解き放っていく。中盤の“Kiddie”では、青白くスパークするサウンドでフロアのハイジャンプを牽引。オーディエンスを背徳的な快楽空間へ引きずり込んでいくようなダークなサウンドとは裏腹に、独特な少年性と伸びやかさを湛えたのび太(Vo/G)のヴォーカルがいい。「初SHIBUYA-AXです。それでJさんと対バンできるなんて幸せです!」と謙虚に語りつつも、憂いと衝動の両方を瑞々しく封じ込めたような重層的なアンサンブルは堂々たる貫禄に満ちていた。終盤では、7月4日にリリースを控えたアルバムの中から新曲を披露。獰猛なリフとビートの応酬を経てメロディアスなサビへと鮮やかに上り詰めていくパンチある楽曲に、ニュー・アルバムへの期待が否応なしに高まる。そしてラストは“And Gypsy”。のび太→彩(B)→剛(Dr)のヴォーカル・リレーでフロアを沸かせ、30分という短い時間ながらも強烈なインパクトを残して4人はステージを後にした。

J @ SHIBUYA-AX
そして18:50、いよいよメインアクト=Jの登場! 「飛ばすぜ!」の号砲から間髪入れずに放たれたのは“Die for you”。イントロが鳴り響くなりオーディエンスがぐぐっと前に押し寄せ、瞬く間に芋洗い状態となったフロアから地鳴りのようなオイコールが沸き起こる。そのまま“go crazy”へ雪崩れ込むと、フロアのあちこちからダイブが勃発。「会いたかったぜー! 今日は3日目、最終日。当然のことながら3つの中で一番アツくなって帰ってもらうぜ! ブチ壊せー!」と“break”へ突入すれば、Jの力強いヴォーカルを「イエー!」という満場のシンガロングが後押しする。さらに“PYROMANIA”では、フロア中のライターが一斉に着火! ズンズンと腹に響くヘヴィなビートがフロアを大きく揺らした頃には、ムンとした汗の臭いが立ち込める場内は早くも絶頂へと到達してしまったかのような熱気に満ちていた。まさに電光石火の勢いでオーディエンスの闘志に火を点け、凄まじい一体感を築いていく圧巻の展開。その鮮やかなパフォーマンスには、何度観ても胸が震える。

「最高のアルバム『ON FIRE』は聴いてくれたか? そっからいい感じの曲を」という紹介から“here we go”へ。Jとスコットが刻む重厚ビートの上で、溝口和紀、藤田タカシの手によるシャープなギターがじわじわと上昇気流を描いていくようなドラマティックな展開で、場内を眩い光の世界へと導いていく。一方“fire”では、ぶっとい火柱が噴き上がるような凄みを湛えたミドル・テンポの音塊でフロアの縦揺れを牽引。疾走チューン“RECKLESS”を 爽快にドライブさせた後のMCタイムでは、フロアから飛ぶ「雨男―!」の声に「そう、オレ雨男だよ」と応えるシーンもあったけど、そんな雨雲すら蒸発させてしまうほどの勢いで天高く燃え上がる業火のようなサウンドが場内のヴォルテージを無尽蔵に上げていくのであった。

“Twisted dreams”で濁流のごとく押し寄せるワイルドなサウンドをブチかました後は、スコット以外の3人がステージを掃けてドラム・ソロのコーナーへ。「スコット! スコット!」という声援や打ち込みの音に合わせて、Jサウンドの要とも言える、大陸的なスケールを持ったダイナミックなビートが打ち鳴らされていく。プレイ中に次々と折れるスティックの数が、その凄まじい威力を物語っている。そしてオーディエンスを沸かせ放題沸かせたところで再び3人が登場し、“NOWHERE”からライブは終盤へ。輝かしい未来へ手をかけんとする渇望感に満ちたメロディが歌われた“storm rider”、ハンドクラップ沸き起こる壮絶なダンス空間が築かれた“BUT YOU SAID I’M USELESS”、ドシャメシャビートがハリケーンのように吹き荒れた“Go Charge”と連打して、本編ラストは“BURN OUT”。「全部焼き尽くしてくれ!」の一声からソリッドな音塊が爆発すると、今まで以上に熱のこもったオイコールとモッシュとダイブが炸裂し、強烈なフラッシュライトが場内をビカビカと照らしたところで終幕となった。

J @ SHIBUYA-AX
アンコールでひとりステージに現れたJ。そこで彼はこんなことを語った。自分自身がカッコいいと思える音をどれだけ強く鳴らせるかという想いで今回のアルバムを作り上げたこと。それを踏まえて、もっと皆の傍で鳴るような音を鳴らしていきたいと思ったこと。そして、前に進もうとする気持ちがあって初めて未来は拓けるのだという確信――。そしてメンバー紹介で3人のサポート・メンバーをステージに呼び込んだ後、「いつまでも熱い想いを届けられればいいなと思って作った曲です。よかったら皆も一緒に歌ってください」と届けられた“baby baby”の祈りに満ちたメロディには、真っ赤に燃え上がるサウンドでオーディエンスを力強く牽引していったこれまでの曲とはまた違う、奥深い強さと優しさが宿っていたと思う。そして“Feel Your Blaze”で再び絶頂を築いた後は、7月14日に仙台Rensaを皮切りに行う全国ツアーの告知を経て、“Bring the Light”でフィニッシュ。「次に会うまで何があってもくたばんなよー!」と告げてJがステージを去った後もしばらくアンコールが鳴り止まない場内に再びJが舞い戻り、「また夏に会いましょう!」挨拶する、というピースフルな幕切れで2時間弱に及ぶアクトは大団円を迎えた。

J @ SHIBUYA-AX
やはりJは凄い。今日のライブを観終えて、というかライブ序盤から私の胸を終始襲っていたのは、そんな思いだった。轟々と燃え盛るソリッドなサウンドを放つアーティストも、オーディエンスと固い一体感を築いてカタルシスへ上り詰めていくアーティストも、他にはいる。しかし強靭なサウンドの「その先」にある、輝かしい未来の風景をこんなにも鮮やかに見せてくれる人は、Jを置いて他にいないと思う。それは、「火」という一貫したテーマのもとに、「破壊」と「再生」のメッセージを徹底的に宿したサウンドを確信を持って鳴らし続けてきたJだからこそできることだ。その姿勢に改めて感服させられたし、日々混沌を極めていく今の時代には、こうして私たちを力強く導いてくれるロックンロールが絶対的に必要だと改めて確信した一夜だった。夏のツアーでは、この灼熱の太陽のような万能感あるロックンロールがさらに熱く燃え盛ることだろう。(齋藤美穂)

J @ SHIBUYA-AX
セットリスト
1.Die for you
2.go crazy
3.break
4.PYROMANIA
5.here we go
6.fire
7.RECKLESS
8.Twisted dreams
~Dr.Solo~
9.NOWHERE
10.storm rider
11.BUT YOU SAID I’M USELESS
12.Go Charge
13.BURN OUT
アンコール
14.baby baby
15.Feel Your Blaze
16.Bring the Light
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