Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール

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インディー・ポップ/ロック・ファンにお馴染みのライヴ企画シリーズ『Hostess Club』。今年2月に、2日間に渡ってファン垂涎の屋内フェス企画として繰り広げられたイヴェント『Hostess Club Weekender』が、その後わずか4ヶ月というスパンで再び開催を迎えた。会場は、第1回目と同じく恵比寿ガーデンホールである。その初日の模様をレポートしたい。

exlovers (14:00〜)

Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール
まずはロンドンの5人組で、デビュー・アルバム『モス』をリリースしたばかりのexloversが登場。美しく気怠いシューゲイザー・サウンドと、青い疾走感に満ちたギター・ポップのいいとこ取りなバランス感覚が絶妙だ。歪んだギター・サウンドの音響といい、がっちりした体型で力強いフィルを入れまくるドラムスといい、この手のバンドとしては演奏面でかなりライヴ映えする魅力を持っている。さらにライヴ映えという点で見逃せないのが、美しい歌声のハーモニーをたなびかせるピーターとローレルの男女ツイン・ヴォーカルである。ローレルの別嬪さんぶり+申し訳程度ながらノリノリでステップを踏む仕草も手伝って、視覚的にも強く惹き込まれる。「初めての来日で、興奮しています。こんなにクールなイヴェントに呼んでくれてありがとう」とローレル。“Blowing Kisses”や“Starlight, Starlight”といったシングル曲はもちろんのこと、新曲まで披露して堂々存在感を見せつけるステージになった。

Cloud Nothings (15:15〜)

Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール
この初日、UK勢が多くを占める中で唯一のUSバンドながら、注目度は随一だったのではないかと思われるクリーヴランド出身のクラウド・ナッシングス。注目の引き金となった大化けの新作『アタック・オン・メモリー』から、いきなりアップテンポなナンバー2発“Stay Useless”と“Fall In”を叩き付ける。スティーヴ・アルビニがプロデュースした新作の爆裂グランジ・サウンドは、生のステージで聴くと思いのほかスッキリとしていたが、その代わりと言うわけではないけれど眼鏡フロントマン=ディラン(クラウド・ナッシングスはもともとこの人のワンマン・プロジェクトだった)による嗄れたロック・ヴォーカルのアタック感は、音源以上の切迫した力強さを受け止めさせてくれていた。この声で歌うためにバンドをやっているんだよ、といった感じだ。何しろ、オーディエンスとしては、いつ誰が抜け駆けするとも知れないようなスリリングなコンビネーション(テンポなどはあって無いようなものだ)に置き去りにされないようにするので必死だし、“Wasted Days”では15分にも届こうかというエクスペリメンタルな爆音インプロに突入してしまうのである(持ち時間が変更されていたせいもあるかも)。ここまでやらなきゃロック・バンドをやっている意味がないよ、と言わんばかりの、衝撃的な新作ライヴだった。

Gaz Coombs (16:45〜)

Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール
元・スーパーグラスのフロントマンであるギャズ。ソロ作『ヒア・カム・ザ・ボムズ』を携えての登場。はっきり言って、メチャクチャかっこ良かった。ステージ上はバンド編成だが、“Bombs”のスペーシー&サイケデリックな音像から同期混じりのパフォーマンスとなっていて、序盤はアルバムの曲順通りに進行する。現代的なサウンドがありながら、ギャズ一流のロックなソング・ライティングが屋台骨を担うというアルバムの作風が、見事に再現されていた。伸びやかで芯の強い歌声も、「ヘーイ……ヘーイ! コニチハー!」と通りの良いMCによってきっちりとオーディエンスを掌握してゆく姿も、さすがに一朝一夕ではいかないベテランの安定感。ステージ終盤、聖性すら受け止めさせるミッド・テンポのフォークトロニカ・ナンバー“Sleepimg Giant”から大名曲“Fanfare”へと至る流れには涙を禁じ得なかった。筆者の世代感覚によるエコヒイキだと思われるのは心外。素晴らしいソロ・キャリアを歩んでゆくはずのギャズに確信を寄せる、そんなパフォーマンスであった。アルバム、未聴の方はぜひ。

Mystery Jets (18:15〜)

Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール
ミスジェって、こんなに人気者だったか?と思ってしまうような、物凄い盛り上がりを見せるステージになった。テキサスはオースティンでレコーディングされたという新作『ラッドランズ』の発表と時を同じくして、ベーシストとしてこれまでバンドを支えてきたカイが離脱、新メンバーのピートが加わった編成。オープニング・ナンバーの“Someone Purer”から、ブレイン(Vo./G./Key)が腕を掲げてオーディエンスにサインを送り、盛大なシンガロングが繰り広げられていった。“Greatest Hits”の「シャラララ……♪」という楽しげなフレーズといい、至る所で合掌が巻き起こる。テムズ・ビートの一翼と語られたデビュー時から、カントリー/ソウルのエッセンスを多分に含めた新作まで、ミスジェの終わることのない放蕩の旅は続いているけれど、こんなふうに彼らの歌が分かち合われる光景に辿り着くということがそもそも、彼らの旅の目的のひとつでもあるのではないか。ブレイン&ウィルの2枚看板ヴォーカルを活かす多彩な楽曲群を並べ立てながら、「ビバ、トーキョー! サイコー!!」と高揚感を露にするブレインであった。大きな期待にバンドが応えるそのステージに触れながら、ミスジェはインディー・バンドの枠を越えて、ポール・マッカートニーかスパークスのように、いつまでも才気溢れるポップ・マエストロとして活躍してゆくのかも知れない、と感じた。

The Cribs (20:00〜)

Hostess Club Weekender 1日目 @ 恵比寿ガーデンホール
初日のヘッドライナー出演に対し、あからさまにギラギラと気合が漲っていたザ・クリブス。登場するなりライアン(Vo./G.)は「Explode!!」とシャウト一閃、新作『イン・ザ・ベリー・オブ・ブレイズン・ブル』から“Chi-Town”を繰り出しながらマイク・スタンドを蹴り飛ばしてしまっていた。セット・リストは新作曲が4割、過去4作のアルバムからもまんべんなく選曲される。ジョニー・マーが抜けて以降もサポートで1名、ギタリストが加わっていて、ますます重厚になってゆくロックンロール・サウンドにとってもちろん大切な役割を果たしていたのだけれど、はっきり言ってバンドの雰囲気にとってはほぼ空気だ(失礼)。それほどに、このぶっ飛んだ兄弟3ピースはキャラクターが固定されている。エフェクターを踏むタイミングなんかめちゃくちゃ適当だし、プレイはドタバタなこと極まりない。何かを捨てている代わりに、ロックンロールの熱狂を確実に掴み取ってしまう3ピース。こんなバンドをサポートするなんて、ほとんど苦行に近いと思う。マー先生のときは、それでもまだ気を遣っていたのだろう。ただ、「コノ曲は、新シイALBUMカラデス」とか「出掛ケルトキハ、傘ヲ忘レズニ」とか、ライアンはやたら日本語MCを頑張っていたし、ゲイリー(Vo./Ba.)は「日本のために歌います」と“Mirror Kisses”を披露してくれた。「1st.ALBUMデ、スキナ曲は、ドレデスカ?」と候補を挙げては“Baby Don’t Sweat”をプレイする一幕もあるなど、ぶっ飛び方の割にサーヴィス精神も発揮されていていたのが素晴らしい。“Be Safe”では映像を使った効果も用いられ、堂々のヘッドライナーであった。最後にはロス(Dr.)も歓喜のダイヴを敢行。

引き続き6/24(日)にはブロック・パーティー、ホット・チップ、ヒア・ウィ・ゴー・マジック、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ、ウィリス・アール・ビールらが出演する。また、11/3・4には早くも第3回となる『Hostess Club Weekender』(@Zepp DiverCity Tokyo)が開催されることも告知されているので、続報に期待していて欲しい。(小池宏和)

exlovers
1. You’re So Quiet
2. Blowing Kisses
3. New Song
4. Starlight, Starlight
5. Just A Silhouette
6. Unlovable
7. This Love Will Lead You On
8. Emily
9. Moth-eaten Memories

Cloud Nothings
1. Stay Useless
2. Fall In
3. Separation
4. Cut You
5. Wasted Days
6. No Sentiment
7. Our Plans
8. No Future/No Past

Gaz Coombes
1. Bombs
2. Hot Fruit
3. Whore
4. Sub Divider
5. Universal Cinema
6. White Noise
7. Simulator
8. Sleeping Giant
9. Fanfare
10. Break The Silence

Mystery Jets
1. Someone Purer
2. Halfd In Love With Elizabeth
3. Serotonin
4. Greatest Hits
5. Saviour
6. Radlands
7. Sister Everett
8. Veiled In Grey
9. Young Love
10. Two Doors Down
11. Lost In Austin
12. Flakes

The Cribs
1. Chi-Town
2. I'm A Realist
3. Cheat on Me
4. Glitters Like Gold
5. Come On, Be a No-One
6. Hey Scenesters!
7. Anna
8. Back to the Bolthole
9. Mirror Kissers
10. Jaded Youth
11. Another Number
12. Baby Don’t Sweat
13. Be Safe
14. We Were Aborted
15. Our Bovine Public
16. City Of Bugs
17. Arena Rock Encore With Full Cast
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