『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.2012』 @ 横浜アリーナ(1日目)

アジカンの『NANO-MUGEN FES.』、今年は15日(日)と16日(月・祝)の2日間、1日目は私、2日目は小池宏和が書かせていただきます。なお、NANO-MUGENの公式サイトでは、RO69ライヴレポのレギュラー、高橋智樹が即レポをやっておりますので(ここ数年、毎回彼が書いているのです)、ぜひそちらも併せてご覧ください。
では、時間軸に沿っていきます。

Dr.DOWNER (BAND STAGE)
キヨシ&山田の、主に下ネタと注意事項からなる前説と、これまでのNANO-MUGEN FES.の歴史を振り返る映像と、今年の出演者のコールに続いて、ステージに登場。1曲目“さよならティーンエイジ”の最初の一音が出た瞬間に、「ありゃ」って声に出して言ってしまった。こんなでかいステージ・でかいハコ、明らかに不慣れなはずなのに、なんの違和感もない音の鳴り。堂々としている。ただし、余裕はなく、必死。それはハコのサイズ云々ではなく、そもそもそういう音楽性であり、そういうバンドであるせいだと思うが。つまり、なので、「堂々と必死」な感じ。って、ヘンな形容ですが、でも、本当にかっこいい。あと、声もかれんばかりに叫んでも、一貫してちゃんと歌詞がヒアリングできる、言葉が耳に入ってくるヴォーカル・スタイルなのも、とてもいい。
「どうもみなさんこんにちは。今日は慣れない早起き、6時起き」「神奈川県横須賀市、住んでるところは神奈川県逗子市です。逗子市は今日はお祭り。祭り気分でぶちやぶれ」と、ヴォーカル&ギターの猪股ヨウスケ。まさにその言葉どおりの、「ぶちやぶる」ようなステージだった。4曲目のケツにはギターの高橋“JEDI”ケイタがステージを下りて柵前でソロ弾きまくり、そしてステージ上の猪股とギター・バトル。いきなり超ハイテンションな始まり方です、今年の『NANO-MUGEN』。

MATES OF STATE (ACOUSTIC STAGE)
前説コンビ、今度は喜多と山田で、バンド・ステージの左に設けられたアコースティック・ステージに登場。そのステージの説明をしたり、「みんな集まれ!」と呼び込んだり、さっきの高橋“JEDI”ケイタのギターのシールドは80メートルあると言ったりしつつ(ほんとか!?)、次のアクトを紹介。「アメリカはカンザス州出身の、夫婦でやられてるポップ…デュオ」(by喜多)、MATES OF STATE。最初、SE長いなあ、あとSEにしては音でっかいなあ、と思っていたら、もう演奏が始まっていたのだった。つまり、音が異様にきれい。「CDみたい」というのは必ずしも肯定的な意味合いではない言い方だが、この人たちの場合は誉め言葉です。それぞれの楽器の音がクリア。メロディが美しいし、そのメロディを形作る、ハモリまくりの男女混声ヴォーカルがさらに美しい。幸せな時間でした。

MOTION CITY SOUNDTRACK (BAND STAGE)
ここでまた喜多&山田の前説。「2005年くらいから、『NANO-MUGENに呼びたいリスト』にずっと名前が入っていた。やっと来てくれました!」という紹介で登場。マッド・サイエンティストのようなメガネとヘアスタイルの(アーティスト写真では髪の毛もっとちゃんと立ってるけど、生で見ると限りなく「ぐっしゃぐしゃ」に近いのです)ヴォーカル&ギターのジャスティンから疾風のごとく次から次へとくり出される「これぞエモ」なメロディ、どれもいちいち最高。エモであることに躊躇なしな感じ。今つい「エモ」と書いたけど、バンドの成り立ちや出自などを考えると、ざっくり簡単に「エモ」と言い切っていいのか微妙な気もするが、でもそういう音楽ジャンルとしてのエモというよりも、言葉本来の意味で、すんごいエモーショナル。で、エモーショナルになればなるほど、それと比例してなぜかユーモラスさも孕んでいく感じなのもいい。あと、センチメンタルさも。「ぼくたちはモーションシティサウンドトラックです! ぼくはにほんごをべんきょうしています! ごめんなさい! すこしすこしすこし!」と、ジャスティン。とりあえず、「すこし」という言葉をこんなにハイテンションで叫ぶ人、初めて観ました。

KREVA (BAND STAGE)
転換で、ステージ中央にどーんと「KREVA」のロゴ入りのDJブースが設置される……いや、厳密に言うとトラックを出している熊井吾郎、DJでもあるけどKREVAのライヴをサポートする時は「MPCプレイヤー」(えー、なんというか、MPCという機材を操る、ということです)なので、「DJブース」というと語弊あるかもしれませんが、とにかくどーんと設置される。で、登場したKREVA、トラックが鳴り響く中、ブース前で横向いて仁王立ち、歌わず、声も発さず、微動だにせず、そのまま1分くらい経過。で、会場中が「ん?」って空気に包まれてから第一声、「イェイッ、そろそろやるか」と“基準”でスタート。“ストロングスタイル”“成功”とたたみかけ、“成功”のケツであのサイレン(みたいな音。彼のライヴではおなじみ)が響き渡る中、ゆっくりと、それはもうゆっくりと、かけていたサングラスを外す。登場の時のあれといい、いちいち芝居がかってる。大げさ。それが最高。初めて彼のステージを観たと思しきみなさん、もう、完全に呑まれている。
「どうもKREVAです、よろしくお願いします……うしろのほうの人、日本語がわからないみたいなんでもう1回言います。どうもKREVAですよろしくお願いします!」としつこくあおったあと、SONOMIを呼び込み、“ひとりじゃないのよ”“NO NO NO”をデュエット、一気に華やかでやわらかな空気に。そして、「せっかくフェスにきたんだから、みんなで曲を作りませんか? 教えますから、ていねいに。ジャパネットたかたより丁寧に教えますから!」と、曲の後半とサビの「オーオオー、イェーイ、オーイェイ」のメロディとタイミングをフロアに教え(これもキレたり泣いたりしながらほんとしつこくやってた)、一緒に“OH YEAH”へ突入。かなり強引な力技でみんなに歌わせたKREVAだったが、そこでライヴの空気が完全にできあがり、それ以降の“Have a nice day!”あたりでは、特にあおってないのにフロア中一面、腕が左右にスイングしていた。さすが巻き込み王KREVA。

SPACE COWBOY (DANCE STAGE)
KREVA終わりで間髪入れず、バンド・ステージ右のDANCE STAGEでスタート。黒いスーツ姿。NANO-MUGEN関係では常連のアーティストだけあって、オーディエンス、あったかい。フロア、最初っから人がうねって波のようになっている。いや、常連だからってだけじゃない。明らかにうまくなっている、曲の並べかたも、お客さんのあおりかたも、マイクの使いかたも、アゲかたも。SPACE COWBOYのアルバムやアナログはもちろん、大昔にLOOP DA LOOPという名前で出したシングルも持っている、つまりそこそこ熱心なファンとして言うが、このSPACE COWBOY、トラックメイカー/リミキサーとしてはすばらしいけど、客前でのパフォーマンスにおいては、知名度と人気のわりに今ひとつな人だったのです。NANO-MUGENだけでなく、GANBAN NIGHTとかフジロックとかで、私、過去に何度もその事実を確認してきましたが、今回は違いました。一体どうしたんだろう。何かつかんだのかな。特に、自分の代表曲を連発した後半のセット、すんごい気持ちよかった。途中でちらっとアジカンの“ループ&ループ”を一瞬使ってフロアを沸かせたりもした(これは前に来た時もやってましたよね)。

後藤正文 (GUESTReALM)
SPACE COWBOYのケツ2曲ぐらいは、私、4Fの「KIYOSHI’S BAR」ことゲストリアム・コーナーに移って、そこの画面で観ていたのですが、それが終わったらステージにいきなりゴッチが現れる。どよめいて、わーっと集まって、でもスタッフの指示に従って整然と床に座るオーディエンス。で、喜多が書いたという、先ごろリリースが発表されたニューアルバムに入る新曲や“ソラニン” などを、弾き語りでやってくれました。「まだ仮設住宅で暮らしてる人たちがいるけど、報道とかされなくなってる。それを忘れないようにしないと」というようなMCを織り交ぜつつ、全3曲。私、マジに知りませんでした、こんなサプライズあるの。一応ライヴレポ取材で来てるのに知らないって、自分でもちょっとどうかと思うが。でも、ここにいてよかった。

ストレイテナー (BAND STAGE)
前説はもちろん、SEもなく静かに登場。テナー、昨日、渋谷公会堂でアコースティック・アルバム『SOFT』のリリース・ツアーのファイナルを終えたばかりです。RO69でもライヴレポしてます。(こちら http://ro69.jp/live/detail/70309 )。で、私、横浜アリーナのロビーで、ライター長瀬昇から送られてきたそのライヴレポを読んで、RO69上にアップしたばかりのタイミングでテナーのライヴを観ることになったので、「ああーそうかあ、こういうことかあ、長瀬が書いてるの」と、何かものすごく納得のいくステージになりました。アルバム以上に、「この曲、こういう曲だったのか!」という発見がありまくり。特にすばらしかったのは、「メロディックなのに歌謡曲要素ゼロ」なテナーの特質が最大限に表れている(と僕は思っている)“ネクサス”、あと3拍子に生まれ変わった“SIX DAY WONDER”あたりか。
「たぶんここにいる半分くらいの人が、あれ? ストレイテナー思ってたのと違う、と思ってると思うけど」とシンペイ。「アコースティックのアルバムを出してツアーを回っていて、昨日がそのファイナルで、そのまま出ちゃえ、って。普段は、フェスの時は自己紹介みたいなセットリストでやるけど、『NANO-MUGEN』はホームだから。今のストレイテナーのまんまで出れる」と、ホリエ。湧き上がる拍手。ここで曲にいけばいいのに、「でもFEEDERのタカさんは、twitterで、『ストレイテナー観るの楽しみにしてますがフルオンバンドじゃないときいてちょっとだけ残念』って」と付け足すシンペイでした。いや、でもほんと、このライヴ、観てTAKAさんも納得したのではないかと思う。あと、「アジカンからのリクエストで」やった“TENDER”もすばらしかった。

秦 基博  (ACOUSTIC STAGE)
アコースティック・ステージにひとりで登場、「どうも、秦基博です」とあいさつ、アコースティック・ギターをアルペジオで弾きながら、ひとりで“朝が来る前に”歌い出した瞬間、フロア中が「!」となった、のが、見えた気がした。「声、でかっ!」という驚きで。ほんと、ショックなくらい。空を声がとんでいくのが見えるよう。いや、見えませんが、そのくらいのインパクト。昔、奥田民生にインタヴューした時、「ほかのことはともかく、とりあえず声のでかさでは人に負けないようにしている」と言っていた。「こんなにほかのことでも勝ちまくってる人に言われても」と思ったが、それを思い出した。いやあ、大事だわ、声のでかさ。歌の説得力が全然違う。歌い終わって、「改めまして、秦基博です。みんな、楽しんでるんでしょ? 楽しんでるんだと思います。伝わってきてます。秦基博のステージも、楽しんでもらえればいいと思います」とMC。そのあとも圧巻で、ほげーっと聴きほれているうちに、あっという間に終わってしまった。ストレイテナーのホリエに、この曲が好きだって言われたんだけどやる予定がなくて、でもやります、と、ラストに歌われた“アイ”、特にすごいテンションだった。

岩崎愛&Kiyoshi (GUESTReALM)
この時間にゲストリアムコーナーで、上記のふたりにPHONO TONESの宮下広輔も加わった3人で、アコースティック・ライヴが行われたそうです。知らなかった。あとでネットで知りました。

FOUNTAINS OF WAYNE (BAND STAGE)
「半分カンフー・ジェネレーションです」と、ゴッチと喜多が登場。『The Future Times』の最新号(3号)を今日から配っていることや、思えば、去年のこのNANO-MUGEN FESで第1号を配り始めたこと、ゴッチのソロとしてアナログの7インチシングル「LOST」を作ってこの会場で売っていること、収益は『The Future Times』の制作費に充てること、今回のステージの照明などはすべて太陽光発電の蓄電池でまかなっていることなどを、ゴッチが説明する。「みなさんの買ってくれたチケットにのせたお金が、こういうシステムの開発に使われていきますので。ありがとうございます」とゴッチ。そのあとゴッチ、喜多にツイッター大喜利を振るがスベりそうになったので、というかお題として難しすぎたのに気づいてさっと撤収、次のアクト、FOUNTAINS OF WAYNEを紹介。「前にツアーに参加してくれて、1日キャンセルになっちゃったんだけど、今日は体調万全です」。景気づけにゴッチ、恒例のシコを踏み、バンドを呼び込む。
ファウンテンズ、“BOUGHT FOR A SONG”“DENISE”“SOMEONE TO LOVE”の3連発でスタート。個人的には、日本での出世作となった1999年の2ndアルバム『UTOPIA PARKWAY』収録の“DENISE”が、特にきました。私、当時、BUZZという洋楽も扱う音楽雑誌にいて、インタヴューしたことがあるのです。で、「あなたたちの音楽はほんとにすばらしいけど、MTVで1日中ブリトニー・スピアーズが流れている今のアメリカのマーケットでどう戦えばよいか考えたりします?」ときいたら、「ほんとにさあ、どうすりゃいいんだよお」と正直に弱音を吐かれたことや、その後フジロックのホワイトステージに出た時、ビデオでメンバーを撮っていたスタッフがステージのメンバーの至近距離をうろうろしていてすげえ邪魔でイライラしたことなど、いろいろ思い出しました。そんなことを思い出す必要は全然ありませんが。ただ、「エヴァーグリーン」なんて使い古された言葉をつい用いたくなるこのメロディは、そしてそれらを愚直なまでにそのまんま形にしていくストレートなバンド・サウンドは、やはりすばらしいのひとこと。オーディエンスも同じ思いだったようで、ステージ終了時には、アンコールを求める手拍子が湧き起こった。フェスの途中のアクトがアンコールなんて、物理的に無理なことはわかってても、思わず手拍子してしまったんだと思う。いい光景でした。

PHONO TONES  (GUESTReALM)
これもゲストリアムにて。これはタイムテーブルに書いてあったので、やるの、知ってましたが、ロビーでPC開けてRO69の更新作業をしていて見逃しました。すみません。詳しくは公式サイトの高橋智樹レポを。

FEEDER  (BAND STAGE)
喜多と山田、おそろいの水色のグッズTシャツで登場。「初期のPUFFYみたいでしょ?」と笑いをとる。私もつられて笑いましたが、実は初期のPUFFYがそういう格好だったことを思い出せませんでした。山田、さっきTAKAさんにセットリストを見せてもらったら1曲目が自分が大好きな曲で、今、興奮している、と話す。そして、今年4月にリリースされたFEEDERのニュー・アルバム『GENERATION FREEKSHOW』の日本盤のボーナストラックには、ゴッチが歌う“IDAHO”が入っている、今日も共演はあるのか? というフリもして、フロアの期待を高め放題高めてから、FEEDER登場。
1曲目、音が出た瞬間、横浜アリーナの空気がいきなりはっきりと変わった。すんごいスケールの感の音。“Feeling the Moment”だ。いや、名曲だし代表曲だけど、選曲のせいじゃない。バンドそのものの持つパワーとか力量とかマジックとかそういうのによるものだ、これ。圧倒される。おかしいなあ、初めて観たわけじゃないんだけどなあ。あれ初めてフジ・ロックに来た時だっけ、曲間にTAKAさんがマイクスタンドに止まった赤トンボを見て、「あ、赤トンボ」と言って、「そうだ、このバンドのベース、日本人なんだ」って場がほっこりしたのとか覚えてるんだけどなあ。なんでそういう覚えてなくてもいいことだけ覚えてるのか俺は、さっきから。
とにかく、音の広がり方と立体感がハンパじゃない、どの曲も。途中でゴッチ、ギターを持って登場、共に“Insomnia”をプレイ。続けて“IDAHO”やるかな、と思ったら、ステージを去る。で、後半にもう1回出てきて、やってくれました。

ASIAN KUNG-FU GENERATION  (BAND STAGE)
というわけでトリ、アジカン。THE STONE ROSESの再結成発表以来使っている(んだと思います)SE、彼らの2ndアルバム収録の“Love Spreads”で登場。“夜のコール”“All right part2”と連打、「どうもありがとうございます。今日、すごい雰囲気よくて、すごいうれしいです」と参加者に感謝の言葉を告げ、“迷子犬と雨のビート”“君の街まで”“ループ&ループ”“リライト”と、どんどん曲を続けていく。年々、お客さんがあったかくなっていっていて、うれしいということ。さっきTAKAさんも言ってくれて感激したんだけど(洋楽も邦楽も関係ないのに、自分は日本に来ると「洋楽の人」って扱いになる。そういう壁を壊すのがNANO-MUGENだと思っている、というようなMCがあったのでした)、ジャンルの壁とかなくなればいいと思って続けてきたんで、うれしいということ。いろいろあるけど、この2日間だけは音楽のことだけを考えて、楽しんで、来週からのエネルギーにしてほしいこと。などをさらにMCで告げて、新曲“それでは、また明日”へ。それから“N2”などを経て、「初めて武道館でやった時は楽屋に入れなかった」「サマーソニックではバイトに間違われて楽屋に行きたいって言ったらバイトの楽屋に案内された」「今日はすごい、顔パスだった。ひとえにみなさんの応援のおかげです」などというMCも経て(この「会場に入れてもらえない話」、ゴッチ、ほぼ毎年している気がする)、“アンダースタンド”“君という花”、そして“マーチングバンド”で本編はシメ。
アンコールで登場した時、ゴッチはこの日何度目かの「ありがとうございます」と「ほんとうれしいです」に続いて、こんな話をした。いろんな場所で交流とかが生まれるし、今はいろんなツールもあるし(たぶんネットとかのこと)、そういうので知ることもあるだろうし。やっぱり、音楽を好きな人が増えていくのは、いいなと思うんですよ。ダウンロードの問題がどうとかじゃなくて、順位がどうとかじゃなくて、こういう場所に、音楽を好きな人が集まってくれる間は、自分たちはやっていけると思うし。いい音楽が鳴ってる社会は、豊かな社会だと思うんですよ。
──以上、一字一句正確じゃないが、大意としては、こんなような話だった。訥々とした語り口だったけど、何か、すごい説得力だった。そしてダンサーたちが登場して、“踵で愛を打ち鳴らせ”。さらに“ワールド ワールド ワールド”“新しい世界”。アジカン、明日もあるよな。明日どうするんだろう。と思ってしまうくらい、完璧なアンコールだった。これ以上のアンコール、ないと思う。MCも、曲の並びも、それぞれの曲で歌われていることも、すべて含めて。

東北の復興支援や、脱原発問題に取り組み始めて以降、ゴッチは「ミュージシャンがこういうことをやると、理想主義的すぎると言われる」とか「ミュージシャンはナイーヴ過ぎると言われる」と、取材などで話している。で、「ある意味そのとおりだと思う」と、それを認めてもいる。が、僕がここ数年のアジカンから、後藤正文から感じるのは、それとは正反対のことだ。現実主義。現実に合わせて考え、行動する、という意味での現実主義ではなく、理想がかなわなかったり、思うとおりにならなかったり、明らかに間違っているのにそれが正されなかったりした時に、怒ったり泣いたり絶望に沈んだりするのではなく……いや、するんだろうけど、そこで止まらず、即座に「じゃあどうするか」と考え、アイデアを出し、行動に移していく、という意味での現実主義だ。これ、彼の脱原発に関する活動とかのことだけを言っているのではなくて、音楽活動も含めてそうだと思う。壁にぶち当たった時に、絶望したり腐ったり休止したりせず、じゃあどうすればいいのかを冷静に考え、探り当て、行動に移していく、というような。さっき「ここ数年」って書いたけど、思えばアジカンって、ずっとそういうバンドだった気もしてきた。
だから、その局面ごとで理想が破れている、とも言えるが、理想が破れてもやめない、とも言える。ある意味、現実に何にも期待していないところもあるんだろうけど、でも何にもあきらめていないところもあると思う。で、そんなアジカンの戦い方は、確実に結果を出し続けている、と僕は思う。

2日目は小池宏和がレポしてくれます。17日(火)アップです。ぜひご覧ください。(兵庫慎司)
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