雅-MIYAVI- @ 東京キネマ倶楽部

雅-MIYAVI- @ 東京キネマ倶楽部
 冒頭の“WHAT'S MY NAME?”“UNIVERSE”連射で会場一丸となってアガり倒して朦々と熱気漂う中、「東京、もっと来いよ! 全世界のやつらが観てるからさ!」と、フロアのみならず生配信越しにライブを観ているギャラリーまで煽りまくるような雅-MIYAVI-のコールが響き、会場の温度はさらに上昇! その侠気あふれる佇まい、超高速フィンガリングを中心としたアグレッシブなギター・プレイ、ギター・アンプ&ベース・アンプでゴリゴリに歪みまくったセミアコ離れしたサウンド、魂のままに荒ぶる歌声……そのどれもが「一撃必殺サムライ・ギタリスト」と呼ぶべき存在感に満ちている。MIYAVI vs KREVA名義の“STRONG”でスタートした雅-MIYAVI-の、国もジャンルも無用の異種格闘技的コラボ企画シリーズ『SAMURAI SESSIONS WORLD SERIES』の第2弾シングル=フレンチ・エレクトロ界の新鋭:YUKSEKを迎えた“DAY1”リリースを記念して、鴬谷・東京キネマ倶楽部で行われた一夜限りのプレミアム・ライブ。雅-MIYAVI-の言葉通り、この日のアクトはYouTube&Ustream経由で同時中継され、何十年かタイムスリップしたかのような東京キネマ倶楽部の雰囲気のレトロ感とともに、その震撼必至のアクトを国内のみならず世界中にリアルタイムで伝えていた。

 開演時間の18時、まずオープニング・アクトとして登場したのはOKAMOTO'S。雅-MIYAVI-のシングル『WHAT'S MY NAME? e.p.』に日向秀和/TOKIE/KenKen/吉田一郎など錚々たるベーシスト陣とともにハマ・オカモトも参加しているが、同じライブに出演するのは今日が初めてーーということで、彼らもこのステージもロックのサムライ同士の斬り合いのつもりで臨んでいることが、爆裂ロック・ディスコ“青い天国”からいきなり弾けまくるオカモトショウの絶唱ぶりや、ツェッペリンばりのヘヴィに引きずる音像をサビででっかく大空へぶっ放すような“ミスターファンタジスタ”でのオカモトコウキ/オカモトレイジ/ハマ・オカモトの熱演ぶりからもびりびりと響いてくる。“まじないの唄”やルースターズ“恋をしようよ”の60~70sの彼方から脱走してきた荒馬の如きロックンロール・ビートも最高だったが、“青い天国”とともに7/18にリリースしたばかりの両A面シングルのタイトル曲になっている“マジメになったら涙が出るぜ”の、ストレートな8ビートとパヤパヤの果てに目映いサビへ到達していく展開には、これまでのOKAMOTO'Sとば別種のマジックが宿っていたし、彼らにとってアウェイであるこの場所により深く強く刺さってフロアを沸かせていくだけの訴求力を生んでいた。

雅-MIYAVI- @ 東京キネマ倶楽部
 そして19時、ついに雅-MIYAVI-が鉄壁のサポート・ドラマー=BoBoとともにステージに登場! あのセミアコ・ギターを携えてサングラス姿で登場した雅-MIYAVI-が「Are you ready?」と一声かけたかと思うと、彼の右手の指が(誇張ぬきで)目にも止まらぬスピードで弦を叩き始めるーー“WHAT'S MY NAME?”“UNIVERSE”“SURVIVE”とアルバム『WHAT'S MY NAME?』からの楽曲を畳み掛け、「心の中に叫びたいことあんだろ! We're gonna say NO!」とグランジ調のサウンドに乗せて《NO NO NO》と叫び上げる新曲、さらに4つ打ちパンク的な新曲へ……と未発表曲を畳み掛けていく。「From Tokyo to the world! ギターとドラムで、いつも通りロックします。もっともっとアゲていこうぜ!」。ギター探求と自己の表現探求の果てに、爆音超絶セミアコ・ギター+鋭利で正確無比なドラム、というロック修験者のようなフォーマットへ辿り着いた雅-MIYAVI-。世界中のどの「2人バンド」とも「超絶ギタリスト」とも異なるスタイルを、2010年の「再デビュー」以降も彼は真摯に研ぎ澄ませ続けていることが、その1つ1つの音から伝わってくる。リフ兼ベースラインをサンプラーに取り込んで鳴らしながら、速弾きとは別サイドのブルージーなプレイアビリティを見せつける“CHILLIN' CHILLIN' MONEY BLUE$”。「吐き出しちまえよ!」とフロア丸ごと大合唱へと導いた“A-HA”……ギター・プレイヤーとしてのみならず、自分の演奏を「素材」としてさらに上の表現へ昇華するDJ的なセンス、聴き手の衝動の在り処にダイレクトに作用するロック・アジテーターとしての類稀なる資質も、その多彩な演奏を支える要因として不可欠なものだ。

 かつてヴィジュアル系バンドのギタリストからソロに転じ、インディーズ時代からホール/アリーナ・クラスの人気を誇っていた雅-MIYAVI-。しかし、2006年の「武者修行」的渡米を経て、彼は日本人である自分、ギタリストである自分のアイデンティティを真っ向から見つめ直し、やがて現在に通じるソリッドでタイトな、つまりどこにも逃げ道のない表現方法を選んだ。そして、「どこへ行っても他流試合」のようなそのスタイルで、数多のロック・アーティストたちとプレイ・バトルを繰り広げ、どこの国のどんなリスナーに堂々と聴かせられる水準のSAMURAI SESSIONSを体現することで、聴く者すべての「目の前に立ちはだかる壁や境界線」をともに打破していくーー彼のプレイが単に大道芸人的な多芸に終わらないのは、アーティストとしての圧倒的なセンスもさることながら、彼がその音楽を通して、日本の「今」を人生を賭して揺り動かそうとしているからだ。「俺はギターを弾くことしかできないし。ギター弾いて、みんなの背中を押せたらいいなと思ってるし。それが俺の生き甲斐なんで。死ぬまでギター弾いてたいと思います」の言葉に、フロアから熱い拍手が沸き上がる。そんなせっかくの「いい話」を、「BoBoも、ね? 死ぬまで短パンで(笑)」と笑いに変えてみせるのも、雅-MIYAVI-ならではのウィットの形だ。

 フルアコに持ち替えて聴かせた“MOON”のメロウな響き。3.11以降の原発問題に触れつつ「子供たちの未来のために、地球の置かれた問題に、みんなで目を向けて考えていけたらって思ってます」と語ったヘヴィな想いそのままに熾烈に鳴り渡ったハード・バラード“GRAVITY”。そして、まったく新しい形の雅-MIYAVI-のアリーナ・アンセムになりそうな予感と迫力に満ちた“DAY1”の、誇らしいくらいにパワフルなサウンドとビート感。最後は“FUTURISTIC LOVE”でひとり多重演奏炸裂大会に突入! 途方もない開放感と絶頂感をそのループ音とともに残したままライブ終了……と思ったら、アンコールを求める熱い歓声に応えて再びオン・ステージした雅-MIYAVI-とBoBo、そのループを受けてもう1回“FUTURISTIC LOVE”へ。さらに“WE LOVE YOU”“SELFISH LOVE”と「再デビュー」以前の楽曲でフロアをがっつり揺らした後、アンコール最後の“R U READY TO ROCK?”ではステージ上手スピーカー前から反対サイドのステージ下へ、さらに下手側の階段の上にある円形のお立ち台的スペースに昇り……としなやかな獣のように動き回りながら、自分とファンのエモーションを最後の一滴まで完全燃焼させて終了! どこまでも艶やかで闘争心にあふれた、揺るぎない音とロック。「ZEUS」のガムのCMだけでは見えてこない衝撃が、彼のライブには詰まっている。この後マレーシアとロシアでライブを行った後、8月5日『ROCK IN JAPAN FES. 2012』最終日・WING TENT大トリなど夏フェスを回る雅-MIYAVI-。その真価を、今こそ1人でも多くの人に目撃してほしいと思う。(高橋智樹)

雅-MIYAVI- @ 東京キネマ倶楽部
[SET LIST]

01.WHAT'S MY NAME?
02.UNIVERSE
03.SURVIVE
04.UNTITLED #1
05.UNTITLED #2
06.おっさん おっさん 俺なんぼ
07.CHILLIN' CHILLIN' MONEY BLUE$
08.A-HA
09.SHELTER
10.UNTITLED #3
11.MOON
12.GRAVITY
13.STRONG
14.DAY1
15.FUTURISTIC LOVE

Encore
16.WE LOVE YOU
17.SELFISH LOVE
18.R U READY TO ROCK?
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