KING BROTHERS ゲスト:髭 @ 代官山UNIT

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『喧嘩記念日』というタイトルを掲げた対バンイヴェントを5月から行い、これまでに9mm Parabellum Bullet、STRAIGHTENER、THE BAWDIES、 あらかじめ決められた恋人たちへとバトルを繰り広げてきたKING BROTHERS。今回、彼らが『喧嘩』の相手に選んだのは髭。

KING BROTHERS ゲスト:髭 @ 代官山UNIT
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ライヴは髭からスタート。“黒にそめろ”などを演奏した前半の時点で観客は興奮状態となり、“Are you ハッピー??”“テキーラ!テキーラ!”“それではみなさん良い旅を”など、強力なナンバーの連発によってさらに激しい熱気に包まれていった。「ここが代官山だって知ってる? この辺りのマンション、すごく高いんだよ。ちなみに僕は住めないよ。KING BROTHERSは最高だよ。でもなかなか心を開いてくれないんだ。たまに呼ばれたと思ったら『喧嘩』だよ」など、須藤寿(Vo・G)の独特なトーンのMCも絶好調。「このまま喋り続けて、KING BROTHERSの時間を短くする喧嘩の手もあるんだよ」、唐突に口にした斬新な戦術には、皆が爆笑していた。彼らのステージのラストを飾ったのは“ダーティーな世界(Put your head)”。腕を掲げながらタテノリで踊る観客のエネルギーが、フロアを激しく揺らす。「皆と一緒に最高を更新しよう!」と曲中で煽られたが、その言葉通り、とびっきりワクワクするエネルギーが場内一杯に広がった。

SEが大音量で流れ、青色のライトに染まったステージにKING BROTHERSが登場。観客のもの凄い歓声と手拍子が彼らを迎える。「西宮から来ました。KING BROTHERSです。ロックの準備はいいですか? 皆でバカになろうぜ!」、ケイゾウ(Vox.Guitar)が大声で呼びかけ、スタートした1曲目は“ ×××××”。アクセル全開で加速し、シートに身体を押しつけられるような衝撃! シャープに刻まれるビート、鼓膜をビリビリと震わす爆音、ドヤしつけるかのような咆哮が混然一体となって我々を巻き込み、周囲の誰も彼もが完全に理性を失って踊り狂い始めた。2曲目“魂を売り飛ばせ!”の真っ只中では、「踊れない奴には用はない! 全員踊ってくれよな!!」と、ケイゾウが目を血走らせて我々を睨む。ますます火がついた観客が夢中になって身体を揺らすフロアは、ドロドロに沸騰している真っ赤なマグマのようであった。

4人各々が放つ爆音が燃え上がる様が怖いくらいにカッコ良かった“69”。曲中でマーヤ(Guitar.Screaming)がマイクを掴んで「俺が何をしたいか分かるか? 俺の思いつき通りにやってくれるんだよな?」と叫び、観客に持ち上げられながら皆の頭上を歩行する光景が、聖人の行う奇跡のような神々しさを放っていた“マッハ倶楽部”。リヴァーブのかかった歌声と爆音が場内をビュンビュンと巡った“spaceship”。「カモン! カモン!」と我々のアドレナリンを絞り上げ続け、場内がヤバいくらいにビリビリ震えた“黒くぬれ!!”。……もうとにかく超強力なサウンドの連続! あらゆる瞬間がクライマックスであった。

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「西宮から8時間かけて来ました」と、ギター(長方形のボ・ディドリー・モデル。超渋い!)のチューニングをしつつMCを始めたケイゾウ。しかし、決して饒舌ではない彼だけに、話題はあまり続かない。「マーヤのギターを聴こうぜ!」と、すぐにライヴは再開された。ケイゾウとマーヤがモニタースピーカーの上に昇り、ビートをザクザクとギターで刻みながら熱唱した“Sonics / ソニックス”。全身を痛いくらいに刺激する爆音の向こう側からグッと来るメロディが迫ってきた“メッセージ”。曲の後半でタイチ(Drums Power)の回りにケイゾウ、マーヤ、シンノスケ(Bass)が集まり、寄り添うようなフォーメーションで歪んだサウンドをスパークさせる様は感動的であった。

“☆☆☆☆”は、全く予想外の展開を遂げた。「ロックの準備はいいですか?」と叫び、タイチのバスドラムを抱えてフロアへ飛び込んだケイゾウ。続いてライドシンバル、クラッシュシンバル、ハイハット、フロアタム、スネアなども運び込まれ、フロアのど真ん中にドラムがセッティングされちゃった! 観客達に囲まれながらケイゾウ、シンノスケ、タイチが演奏を開始。マーヤはギターを搔き毟りながら観客の頭上にダイヴ。なんとフロア後方のドリンクカウンター(ステージから15メートルくらいは離れていると思う)付近にまで運ばれて行った! 「これがロックンロール!」「まだまだ!」「カモーン!」、雄叫びが聞こえてくるが、フロアは既に常軌を逸したカオスであり、最早どれが誰の声だか分からない。もしかしたら観客の声も混じっていたのかも……。観客に囲まれながらフロアのど真ん中で演奏するケイゾウ、シンノスケ、タイチ達の様子は全く見えない。マーヤは我々の頭上を絶えず泳いで移動。とにかく誰も彼もがゴチャマゼ! こんな状態では何処までが自分の身体なのか分かるはずもない。これは私の足ですか? ごめんなさい、これはあなたの頭でしたね……まさしくそんな感じ。文字通りの「一体感」が生まれていた。

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しかし! この熱気は、まだほんの序の口だったと言う外ない。「スペシャルゲストは何処ですか? 何処からやって来る?」と観客の頭上を漂流しながらマーヤが言うと、ステージ上に髭が登場。KING BROTHERSと髭による“LULU(ルル)”がスタートした。最初は「フロアにKING BROTHERS/ステージ上に髭」という2つのエリアを分担し合う形での演奏だったが、「俺は待ってるぜ! 突っ込んで来てくれ!!」と誘われて、髭の須藤はフロアに向かってダイヴ! それに刺激されたのか、仰向けで漂っていたマーヤは四つん這い体勢となり、観客の頭上を動き回り始めた。難破船のように漂いながら叫び続けた2人が「ありがとう!」「こちらこそ! 初めて会った時から大好きだったよ!!」と抱き合った時、観客は全力で拍手喝采。両バンドの友情を祝福した。「皆で『髭!』って叫べ!」「俺達の町を叫んでくれるか? 西宮!」、場内が一丸となった雄叫びが響き渡り、KING BROTHERSと髭のセッションは終了。危険な余韻を残し、メンバー達はステージを後にした。とんでもない体験……。こんな規格外のライヴは観たことがない。(田中大)
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