Perfume @ シンガポールSCAPE

Perfume @ シンガポールSCAPE
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国内では今やアリーナやフェスの大会場で揺るぎなき横綱相撲を繰り広げる彼女たちだが、初見参の地でゼロ地点にリセットされた時でも何ら変わらない底力に改めて感じ入ってしまった。世界を強く意識するようになった近年の楽曲では、ダンスもダイナミズムと繊細さの両方を一層グレ―ドアップしたものになり、歌詞も最新曲“Spending all my time”のように英語がメインになるなど、着々と新たな準備が進んでいる様子をうかがわせていた彼女達。それらの下地がきちんと功を奏していた、初の海外ツアーにして盤石のライヴだった。それはもちろん、これまで国内各地で繰り返してきた大胆なアイデアに果敢に打って出る勝負度胸や、観客との親密なコミュニケ―ションを実現する細やかな気遣いなど、長きにわたって蓄積された彼女達自身のステージノウハウが改めて発揮されたライヴでもあった。

会場のシンガポールSCAPEは大きめのライヴハウスといった規模で、彼女達にとってはこのサイズでのライヴは久方の事。まずは、このワ―ルドツアーのために制作されたアタックの効いたインスト曲にのって登場した3人。ヘッドセットマイクを装着した“NIGHT FLIGHT”でまずは四肢を存分に使った大胆なダンスでライヴの幕を切って落とす。曲調に合わせ、表情もキリっとしたクールさで押し通すなど、初お目見えにして至近距離のオーディエンスに対し挑発的なパフォーマンスで始まったライヴは、そのまま立て続けに“コンピューターシティ”“エレクトロ・ワールド”へ。オープニングの空気を緊張感たっぷりのトーンで進めていく強気のステージだが、そこに揺るぎない自信が漲っている点が今のPerfumeだろう。

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ステージ背後にはLEDビジョンやレーザー光線が配され日本の大会場で見せつけるスケール感を醸し出す一方、最初の挨拶に続く“レーザービーム”“Spending all my time”では一層高速化するダンスでPerfumeの高機能ぶりをさらにアピール。一瞬の暗転で白のワンピスカートから赤のセクシーさを強調した衣装に早着替えするなどのサプライズも見せ、場内に着々と「目を離せない」感覚を根付かせていく手法も最早堂に入ったもの。インターバルとして“Butterfly”の映像が流れた後に披露された“edge”は、当然のようにライヴ用のロング&へヴィーバージョン。そこからステージ背後のビジョンが縦3列に割れ、そこにひとりひとりの表情やダンスが映し出されるや、3人がその映像とシンクロしながら一層複雑なダンスを披露するソロコーナーなど、日本のアリーナ会場で万単位のオーディエンスを相手に披露した手法を、ライヴハウスでも惜しみなく投入してくる。こういう振り切れぶりを、初訪問の地でも躊躇無しに見せてくるところがPerfumeだし、なにより3人のダンスが最もアグレッシヴなのもこの場面で、彼女達がとことんまでやり切ろうとしている気概が充分以上に伝わってくる。

後半も、あ~ちゃんは腕をオーディエンスから見て右肩上がりに構えて「ここからは、こういう感じの曲しかありません!」と、叫びだけではなくゼスチャー込みでオーディエンスにそれをアピ―ル。そしてワールドツアーに向けての新たなフィーチャー曲となった”FAKE IT“に突入し、目まぐるしいサウンドとダンスで場内を一気に盛り上げていく。そこからは“ねぇ”“チョコレイト・ディスコ”“ポリリズム”というレギュラー楽曲が続々と披露されていくわけだが、現地のオーディエンスもこれらの曲を熟知しており、「ディスコ!」のかけ声といいポリループ・ダンス直後の手拍子といい、日本での光景と違わないそれがシンガポールでも見事に再現。異国の地と言えども、まさにPerfumeがPerfumeらしさを淀みなく発揮した正攻法の勝利があった、そんな大成功のライヴだったと思う。

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それにしても、ここまでオーディエンスに「見せつける」ステージを披露していながら、それだけではない、むしろ正反対ともいえるフレンドリーな印象を残すところも彼女達のライヴなわけで、そのコミュニケーション力がしっかり発揮されていたのも頼もしいところだった。冒頭、まずは3人分担で「Thank you all for coming tonight.」「We are very excited for the show!」「Let's have fun!」など英語で挨拶するも、それ以降は例のグダグダ調の日本語と英語のチャンポンになるのだが、言いたいことはしっかり伝えてしまうところが凄い。あ~ちゃんが満面の笑顔で客席を眺めながら「Oh! glasses!」と言えば、オーディエンス自身が今日の眼鏡率の高さに気付いて笑い出したり、その雰囲気から、のっちとかしゆかも自然と「I love Singapore.」「Thank you so much.」といった台詞が飛び出すようになるなど、MC時のカジュアルな乗りを言葉の違う場所でもしっかりと伝えてくる。ちなみに、客席を縦に3分割してのチーム分けで行うコ―ル&レスポンス合戦もいつも通りに行われたのだが、シンガポールのシンボル「マーライオン」にあやかって「マー・チーム」「ライ・チーム」「オン・チーム」と命名していたところも彼女達らしいアイデア。

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そんな「みんなで遊びに来た」感覚をしっかり分かち合いながら、それでも伝えるべきことをきちんと伝える生真面目さも見せる一幕も。前半MCではオーディエンスの中に「英語と日本語、両方分かる方、いらっしゃいませんか?」と訊ねて、挙手してくれた人にマイクを渡し通訳を頼み、そこでは空港で早朝5時に着いたのに多くの人が待っていてくれて感激した話などを披露。一方で、アンコールでの登場時にはビジョンに英訳を映し出し、真摯な表情でじっくりと語りだす。集まってくれたオーディエンスへの感謝の気持ちはもちろん、今回のワ―ルドツアーを支えてくれたスタッフへの感謝の気持ち、そしてこれから世界に向けて努力していこうとする決意、さらにはこれまで日本での活動をサポートしてくれた歴代スタッフへの感謝などなど、沢山の物語をあ~ちゃんが涙を浮かべながらゆっくり、そしてしっかりと語る場面も。それでも最後は「ワールドツアー1stということは2ndもやりたいです。まだまだ満足しておりません。もっともっと大きい会場でやりたい。もっともっとシンガポールの皆さんと長く一緒にいたい!」と強い言葉で締め括る逞しさも垣間見せる。

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そんな流れで始まったアンコールは、まずは春という新たな始まりの季節を歌った“Spring Of Life”に始まり、続いて良き一日を穏やかに締め括るように柔らかなサウンドで聞かせる“心のスポーツ”へと続いて行く。最後は、観客と一緒になって高く手のひらを掲げる“MY COLOR”で言葉の壁を超えた一体感を醸し出し、彼女達にとっての本懐を充分に発揮したライヴは幕を閉じた。
なお、アンコール中にはスぺシャルゲストとして、今回のワールドツアーTシャツを着たドラえもんが登場し、また大きな歓声が沸き起こる場面も(ドラえもんはシンガポールでも1992年から放映されている)。来春から劇場公開されるアニメ映画「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)」の主題歌にPerfumeの新曲“未来のミュージアム”が起用されることが発表される一幕もあり、最後の最後までサプライズが登場する流れだった。

そして、このライヴの模様は日本国内の映画館67館と台湾・台北市の劇場でも生中継されており、約2万8000人が観覧した計算に。世界という舞台を経て一層バージョンアップした3人の姿は、ぜひとも12月28日(金)の「COUNTDOWN JAPAN 12/13」のステージでご確認ください。(小池清彦)

セットリスト
1. NIGHT FLIGHT

2. コンピューターシティ

3. エレクトロ・ワールド

4. レーザービーム

5. Spending all my time

6. love the world

~ Butterfly ~

7. edge

8. シークレットシークレット

9. Dream Fighter

~ P.T.A.のコーナー ~

10. FAKE IT

11. ねぇ

12. チョコレイト・ディスコ
13. ポリリズム

<アンコール>

1. Spring Of Life

2. 心のスポーツ

3. MY COLOR
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