中村一義 @ 日本武道館

中村一義 デビュー15周年記念ライブ 最終公演『博愛博 2012』

中村一義 @ 日本武道館
「みなさんのおかげで15周年を迎えることが出来ました。ありがとうございます! これからも生きていこうと思います!!」と、アンコールを終えた中村一義は満面の笑顔で、高らかに告げていた。デビュー15周年企画として、9月には大阪でBase Ball Bearと、10月には名古屋でサニーデイ・サービス+町田昌弘とそれぞれ共演するライヴ・シリーズ『実演 2012』を繰り広げ、辿り着いた日本武道館での公演は『博愛博 2012』。この『博愛博』という公演タイトルは、2002年の中村一義初のワンマン・ツアー『博愛博 ~haku-ai-haku~』、及びアルバム『100s』リリース後のツアー『博愛博+』にちなんだもの。『博愛博+』のファイナルは2002年11月17日の日本武道館であり、今回のステージは10年ぶりの武道館ということでもある。この日の客入れSEを担当していたのはDJやついいちろうだ。中村一義や100sの楽曲をはじめ、この夜の出演者たちの楽曲も織り交ぜてプレイしていた。中村一義が豪華ゲストたちと共演を繰り広げ、自身の楽曲だけではなくゲスト・アクトの楽曲も披露する、といった『博愛博 2012』の趣旨についても説明してくれる。

そして歓声に包まれながら登場するのは、中村一義とBase Ball Bear。BBBがリフ押しのロックを威勢良くスタートさせ、ステージ中央で飛び跳ねながらオーディエンスを煽る中村一義と共に、オープニングにうってつけのナンバー“1,2,3”だ。続いて、BBBのバンド・サウンドがドライヴ感たっぷりに立ち上がってゆく“LOVE MATHEMATICS”へ。なるほど、《1、2、3……》とカウントアップしてゆく歌詞つながりということで、気の利いた選曲になっている。「高校生ぐらいのときに中村さんの歌を聴いて、救われたファンの一人ですから」と語る、中村と同郷出身の小出祐介。“セブンスター”の2コーラス目を預けられた彼の艶のあるヴォーカルは見事で、《約束だもんな。》のファルセットも美しい。原曲では宙に浮かび上がるようなキーボードのメロディを、湯浅正平がギターでくっきりと再現してみせる。“虹の戦士”を経て、この両者の共演を締め括る一曲は、小出のギター・ストロークから走り始める“希望”。場内の温度がまたぐぐっと上昇してゆく感触があった。

転換中に中村は「次のバンドは、先輩でありながら同志で。“青春狂走曲”と、ボブ・ディランの“ライク・ア・ローリング・ストーン”を聴いて、投げ掛けるような歌を書こうと思って、《どう?》って歌詞を書きました」といったエピソードを紹介する。そこに呼び込まれるのがサニーデイ・サービスと町田昌弘の面々。さっそく前述のエピソードに登場した“青春狂走曲”を、曽我部恵一の歌い出しからプレイする。生活のブルースが小気味好く弾け、続いて“謎”の実験的なアンサンブルをサニーデイ+町田昌弘の顔ぶれが展開してゆくさまも興味深い光景だった。曽我部恵一は中村との親密な関わり合いに触れ「中村くんがデビューしたときは、こんなふうになるなんて思わなかったもんね。未来って、想像もつかないようなことになるんだなって思いました」と余りにも中村一義的なことを語って“NOW”へと向かう。さらに、これは嬉しい“まる・さんかく・しかく”の賑々しいカヴァーと、オーディエンスのクラップが打ち鳴らされる中で披露された“ハレルヤ”が、これぞ中村一義+サニーデイ+町田昌弘という、照り輝くような暖かいヴァイブで、武道館を満たしてゆくのだった。

転換中に喋り続けるのはさすがに間が持たなかったのか、中村は一旦ステージを後にしたのだが、次の共演者を引き連れて戻って来るなり「伝説だよこれ!」と得意満面である。岸田繁のギター、佐藤征史のベースを両翼に歌われるのは“犬と猫”。そしてドラマーには、「どぉ〜う?」「ドン!」の呼吸を知り尽くした男=トムくんこと玉田豊夢だ。交錯するヴォーカル・フレーズの中、岸田はオクターブを下げてマイペースに歌い上げてゆくのも味がある。自身がセレクトして『最高宝』に収録された“ここにいる”では、「やりたかったんよー、これ」と感慨深そうに漏らす岸田。「コード拾ったりするやん。難しいなあって(岸田)」「だって、演奏するの前提に作ってませんから(中村)」というやりとりにも笑う。この顔ぶれで披露する“ジュビリー”もまたプレミアムだが、「同じタイトルの曲、ありますよね。“ジュビリー”とか(中村)」「大概、うちが後出しやけどね(岸田)」「“ロックンロール”も。やりますか!(中村)」「やるか! どっちでもええよー(岸田)」とプレイされたのは、結局くるりの方の“ロックンロール”であった。それぞれのオルタナティヴな価値観でポップ・シーンを席巻してきた同世代アーティストの共演を締め括るのは、岸田がレコーディングに参加した中村曲“ショートホープ”。ステージの共演で披露するのは、今回が初めてだったそうだ。

中村一義 @ 日本武道館
さあ、最後の共演者、というか3年ぶりの復活を果たす100sの登場である。池田貴史(key)、町田昌弘(G.)、小野眞一(G.)、山口寛雄(Ba.)、玉田豊夢(Dr.)、そして中村一義(Vo.)。ひとりのソングライターの歌をより広く届けるために結集したプロセスを知っている我々にとって、このバンドはやはり成り立ちそのものがロマンチックだ。ファンキーかつ華々しい“Honeycome, ware”を披露すると、続いては“ウソを暴け”。中村が一人で作り上げ、率直なメッセージを乗せた歌を、今また100sが力強く支えている。美しい光景だ。池ちゃんが「ある人から預かってきた」とおもむろに取り出し、中村が「僕の大師匠・大先輩からですね」と読み上げるのは、デビュー15周年に寄せる祝いの言葉と、中村一義ファンへの感謝、そして「中村くんを末永く見守ってください。僕も末永く、見守っていきます」と綴られた、佐野元春からの手紙であった。それに応えるように、佐野元春の“サムデイ”がプレイされるのだが、ここで発揮される100sの地力の高さは凄まじいものがあった。“君ノ声”、“永遠なるもの”とパフォーマンスが続けられる間に、バンドは無敵感と呼べるような力を纏い、中村の歌声も一層力強くなってゆく。近年は封印されていたとしても、中村の歌を支えるバンドとしての100sは永遠だ。佐野元春にとってのザ・ハートランドが永遠なのと同じことだ。“キャノンボール”の《今が二千なん年だろうが》というフレーズは、もちろん2012年も2013年も有効なのだ。池ちゃんが「泣いても笑ってもあと1曲だぞー!」と告げ、“ロックンロール”でオーディエンスの歌声を巻きながら本編をフィニッシュする。

「だから、《「僕は、今、ここにいる」》」って書いたんですけど。皆さんは《宝》だね。年の瀬と言えば(ベートーヴェンの)第9。今日のために書いておいたから(笑)、歌おうか! 歌詞とかいいから!!」とアンコールに応えた中村一義が告げる。出演者全員がステージ上に揃い踏みとなり、オーディエンスと共に大合唱を繰り広げる“歓喜のうた”だ。歌声に満たされる客席には、雪が降り注いでいた。ある一人の抱えた思いが綴られ、歌になる。バンドがそれを後押しする。人々が口ずさみ、大合唱に変わる。そんなときにはふと、あの“ジュビリー”の最終フレーズを思い出したりもするのだ。《息を吸え(真っすぐに)、息を吸え(今すぐに)、声を出せ。》と。(小池宏和)

セット・リスト

中村一義 meets Base Ball Bear
01: 1,2,3
02: LOVE MATHEMATICS
03: セブンスター
04: 虹の戦士
05: 希望

中村一義 meets サニーデイ・サービス+町田昌弘
06: 青春狂走曲
07: 謎
08: NOW
09: まる・さんかく・しかく
10: ハレルヤ

中村一義 meets 岸田繁/佐藤征史(くるり)+玉田豊夢
11: 犬と猫
12: ここにいる
13: ジュビリー
14: ロックンロール (くるりの曲)
15: ショートホープ

100s
16: Honeycome, ware
17: ウソを暴け
18: サムデイ
19: 君ノ声
20: 永遠なるもの
21: キャノンボール
22: ロックンロール (中村一義の曲)

EN: 歓喜のうた

最新ブログ

フォローする