(C)Yosuke Torii開演早々に飛び出したシングル曲“Ahead Of The Light”の、ロック・ギターの化身のような鮮烈なリフと超絶ソロ・プレイ! そして、“STRONG”のアグレッシブなビート感とともにほとばしる闘争心! フロアに吹き荒れる歓喜を、「久しぶりのジャパン・ツアー17本、東京セミ・ファイナルです! 最後までがっつり音を感じて、ビートを感じて、楽しんで帰ってください!」というMIYAVIのコールがさらに熱く煽っていく――2月20日に発売されたシングル『Ahead Of the Light』のリリース・ツアーとして全国17ヵ所(4月13日の沖縄・宜野湾HUMAN STAGE追加公演を含む)を回る、サムライ・ギタリスト:MIYAVI(今回から英語のみの表記になりました)のツアー『Ahead Of The Light tour 2013』のセミ・ファイナル会場=東京・赤坂BLITZには、自らのすべてを懸けてギターで世界と渡り合うアーティスト/ギタリスト:MIYAVIの覚悟と、その音を全身で浴びて歌い踊りながら彼のアティテュードを力強く称えるオーディエンスの熱気とが満ちあふれていた。
激速スラッピング/タッピングや爆音コード/リフなど、セミアコ・ギターを駆使した変幻自在なプレイを聴かせるMIYAVI。そして、今やそのソリッド&タイトな楽曲とサウンドに不可欠な存在となった辣腕ドラマー=BoBoの正確無比で切れ味鋭いビート。「自分にしかできない音楽をやる」「日本から世界を震わせる音楽をやる」という2つの理想の結晶たる「たった2人」のステージでMIYAVIは、バンド・アンサンブルを凌駕するほどの爆発力とスリルを生み出し、ロック・シーンを揺さぶり続けてきた。細美武士(the HIATUS)/KREVA/亀田誠治/上妻宏光/YUKSEKなど、ジャンルもキャリアも国境も越えた錚々たるアーティストたちとのセッションを通して作り上げた名盤アルバム『SAMURAI SESSIONS vol.1』も、真っ向から世界と向き合おうとする彼の真剣勝負な想いそのものだったと言える。

そしてこの日。彼のギター・プレイと絶唱はいっそう一撃必殺の切れ味とインパクトを強めていたし、ループ・サンプラーでリフやフレーズを重ねながらひとり多重爆音を鳴らしていく姿も「ギター大道芸」とはまるで異なる強靭なロック・アクトとしての熱量を放っていた。「今回のツアー通して男多いんですよね。今まで結構女の子が多かったんで、ステージに出てくるとだいたいいつも甘~い匂いがしてたんですけど、今回のツアーは結構すっぱい感じ(笑)」とMIYAVIもMCで冗談めかして話していたが、ヴィジュアル系出身ということもあって、2010年の再デビュー当時は圧倒的に女性ファンが多かったのと比べると、ソールドアウトとなったこの日のフロアには格段に男性客の姿が増えているのがわかるし、1曲ごとに沸き上がる歓声にも野太い力強さが加わっている。震災とその後の収束しない状況への怒りと憤りをアコースティック・ギターの響きに委ねた“SILENT ANGER”(vs 細美武士)、生きる悦びをエネルギッシュに突き上げる“PLEASURE!”(vs H ZETT M)など『SAMURAI SESSIONS vol.1』からの楽曲を披露しつつ、「素晴らしいサムライ・アーティストたちと、音で抱き締め合って、いろんなものを分かち合って作品を作りました。や、ほんと気持ちよくて。なんかもう、セックスより気持ちいいんじゃないかってくらい」とその充実感を語るMIYAVIの姿が、会場の温度をさらにじりじりと上げていく。途中、“CHILLIN' CHILLIN' MONEY BLUES”でサンプラーがバグって戸惑う一幕もあったが、それすらも舞台とフロアの距離を縮める絶好の演出として機能していた。

世界最大の楽器フェス『the NAMM show 2013』の、Gibson/Martinを抜いて全米アコギ・シェアNo.1メーカー=Taylorのブースで、日本人として初めて大トリを務めてきたというMIYAVI。「毎回、海外のフェスのフェス行くたびに『お前らROCKできんのか?』っていう感じで見られてるのを感じるんですけど。でも行って、がっつりROCKしてきて。このギター(TaylorのMIYAVIオリジナル・モデル「M5」)を作ってくれてるデイヴィッドが『君は僕のギター・ヒーローだ』って言ってくれてすげえ嬉しかった」と、熱い想いを語っていく。さらに続けて「沖縄でツアーが終わったら、ロンドンにレコーディングをしに行ってきます」と、今後発表があると思うが、世界デビューへの思いを語る彼の言葉が、BLITZいっぱいの驚きと歓声を巻き起こしていった。そしてその、アルバムからいち早く響かせた新曲の数々がすごい。プリンスを思いっきりハイブリッド&ダイナミックにしたような曲あり、切迫したビートとスクリームが冴え渡る曲あり……といったどのナンバーからも、MIYAVIの「今」のスケール感と訴求力が一発でわかる。
“GANRYU”“SURVIVE”“FURUTISTIC LOVE”そして“DAY 1”でフロア丸ごと狂騒天国へ叩き込んで本編を終えた後、アンコールでは「自分のやってきた過去は否定したくないし。昔の曲もちょいちょいやっていこうかなと思って」と再デビュー以前の“咲き誇る華の様に”“素晴らしきかな、この世界”を披露し、とりわけ女性ファンの高らかな歓声を沸き上がらせていた。秋には再び日本を皮切りにワールド・ツアーを回るというMIYAVI。「音楽で世界中の問題を解決できないけど、人を変えることはできると思ってる。そういう強い音楽を作りたい」「当たり前に日本の音楽が世界中に鳴り響いている時代を作るために――俺たちの世代だけじゃ無理かもしれないけど、次の世代にもつなげていきたい」と大きな視野から自らの現在地を捉え、その表現を真摯に研ぎ澄ませ続ける決意を口にしていたMIYAVI。ラストの“WHAT'S MY NAME?”が、さらなる冒険に満ちた音楽の航海への勇壮な号砲のように、最高にエモーショナルに胸に響いた。(高橋智樹)
[SET LIST]
SE new track#1
01.Ahead Of The Light
02.STRONG
03.new track#2
04.OSSANN OSSANN
05.CHILLIN' CHILLIN' MONEY BLUES
06.SILENT ANGER
07.PLEASURE!
08.new track#3
09.new track#4
10.GANRYU
11.SURVIVE
12.FUTURISTIC LOVE
13.DAY 1
encore
14.Ahead Of The Light(A.g. ver.)
15.咲き誇る華の様に(A.g. ver.)
16.素晴らしきかな、この世界
17.WHAT'S MY NAME?