andymori @ LIQUIDROOM ebisu

andymori @ LIQUIDROOM ebisu
「俺らは音楽やっているときが一番輝いている——いや、輝かなきゃいけないと思っているから。今日は思いっきり全てを置いていこうと思います」――そんな小山田壮平(Vo/G)の熱っぽいMCが、深く胸に突き刺さる。それぐらい、切実なエネルギーに満ちたアクトだった。andymoriの約1年ぶりとなるワンマンツアー「FUN! FUN! FUN!」のラストを飾る、恵比寿リキッドルーム2DAYSの2日目。リリース・ツアーでないだけに、新たな試みをしたりキャリア総括のセットリストをしたりとお祭り色の濃いツアーであったが、それ故に決してブレることないandymoriの表現の核が、凄まじい説得力で浮き彫りになっているようなステージでもあったのだ。

全14公演にわたり、くるりのファンファンがゲスト参加している本ツアー。そんなファンファンによる開幕の儀式のようなファンファーレから1曲目“クラブナイト”へ雪崩れ込んだ途端、豪快に突き進むリズムに早くも満場のオーディエンスが波打つ。さらにリフとビートとホーン音が春の嵐さながらの激しさで吹き荒れた“FOLLOW ME”、andymoriの3人+ファンファンの4人による≪バンドを組んでいるんだ すごくいいバンドなんだ≫というハーモニーが真っ直ぐ届けられた“ユートピア”と畳み掛けると、場内の温度はじわじわ上昇。“ボディーランゲージ”“グロリアス軽トラ”の連打で盛大なハンドクラップを巻き起こした頃には、座っているだけでじっとりと汗ばむような熱気が場内に立ち込めていた。「イェイェイェイ、fundymori(ファンディモリ)です!」と挨拶する小山田も、いつになくテンションが高そうだ。

andymori @ LIQUIDROOM ebisu
頭8曲はファンファンを交えた4人編成で、9曲目から22曲目までは3人のみのバンド・セットで、さらに終盤は再びファンファンを招いてと、ザックリ3部構成に分けられたこの日のアクト。アルバム『光』に参加し、そのリリース・ツアーにも帯同していたファンファンだけど、今回は『光』の収録曲だけでなく、過去の楽曲もファンファン込みの編成で数多くプレイされたのが注目すべきポイントだろう。“インナージャーニー”や“兄弟”では大らかに、“Sunrise & Sunset”では軽やかに、“革命”や“everything is my guitar”ではつんのめったリズムで暴走する3人とコントラストを成すように、朗々と鳴り響いたトランペットの旋律。ロードムービーのようにノスタルジックな光景が浮かんでは消えていくandymoriの音世界が、そんな彼女の演奏によってグッと深みのあるものになっていた。さらにスピッツの“恋のうた”と、くるりの“ロックンロール”のカヴァーも4人で披露。プレイ中は満面の笑みで楽器を奏でる彼女の姿がとにかく印象的だったけど、そんなキラキラとした彼女の明るい存在感も、純粋に音を合わせる楽しみを味わい尽くそうとするバンドのオープンな空気感を支えていたように思う。

andymori @ LIQUIDROOM ebisu
で、その反動とも言うべきか、さらに凄みを増していたのが3人のみでのパート。全編3人のアカペラで歌い切った“愛してやまない音楽を”で幕を開けると、続く“ベースマン”から徐々にアグレッシヴなバンド・サウンドへ移行。さらにスロー・テンポのバラード“16”“宇宙の果ては この目の前に”を経て“andyとrock”から再び加速すると、andymori史上最高とも言えるぐらいダイナミックな轟音が炸裂した新曲“MONEY MONEY MONEY”で一気にスパーク――まるで3つの魂が徐々にひとつの塊になっていくようなドラマティックな展開で、この3人で音を鳴らすことの必然性や、溢れてやまない音楽への想いをダイレクトにぶつけていく。「過ぎ去ったあの日」への虚無感と、それを「今」を生き抜く原動力へと変えていこうとする小山田の歌も、みるみる熱を帯びたものになっていく。汗を飛び散らせながら一心不乱に楽器を鳴らしコーラスする藤原寛(B)と岡山健二(Dr)の姿も含めて、「これ以外はあり得ない」というような3人の切迫したパフォーマンスが矢継ぎ早に繰り出されていくさまには、得も言われぬ感動と興奮があった。

気づけば全34曲、2時間ジャスト。あっという間に駆け抜けてしまったアクト。ファンファンを加えて新たな色を帯びた楽曲も、3人のエネルギーを混じり気なしで焼きつけた楽曲も、より壮大で切実なものへと進化しているandymoriの現在地を証明するような、濃密で幸せな時間の連続だった。“MONEY MONEY MONEY”を含め、この日のライヴでは5枚目のアルバムに収録予定の新曲も3曲披露。ライヴ中にメンバーの口から告知されることはなかったが、今年の夏にワンマンツアー「andymori Tour 2013“ALL YOU NEED IS LOVE”」が行われることもすでに発表されている。そう、光の速さで「今」を駆け抜けていくようなandymoriの旅は、ここからまだまだ続いていくのだ。(齋藤美穂)

セットリスト
1. クラブナイト
2. FOLLOW ME
3. ユートピア
4. ボディーランゲージ
5. グロリアス軽トラ
6. 青い空
7. インナージャーニー
8. 恋のうた
9. 愛してやまない音楽を
10. ベースマン
11. 光
12. スーパーマンになりたい
13. ネバーランド
14. サンシャイン
15. Peace
16. 16
17. 宇宙の果ては この目の前に
18. andyとrock
19. 僕が白人だったら
20. クレイジークレーマー
21. サンセットクルージング
22. MONEY MONEY MONEY
23. 兄弟
24. ロックンロール
25. Sunrise & Sunset
26. 革命
27. everything is my guitar
28. すごい速さ
29. Life Is Party
30. 投げKISSをあげるよ
アンコール1
31. teen’s
32. 1984
33. ベンガルトラとウィスキー
アンコール2
34. シンガー
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on