ホフディラン @ 新代田FEVER

ホフディラン @ 新代田FEVER
『ホフディラン 春のベースまつり 2013』

2012年の春、レギュラーのサポート・ベーシストであるキタダマキが、スケジュールの折り合いが付かなかったことから急遽、名うてのベーシストたちが挙ってホフディランのサポートに駆けつけた。ケガの功名というか転んでもただでは起きないというか、大変な盛り上がりを見せたその『春のベースまつり』が、こともあろうに前回と同じく東京・新代田FEVERにて、めでたく第2回開催の運びとなったわけである。くるり“ワールズエンド・スーパーノヴァ”、andymori“ベースマン”、小沢健二とスチャダラパーによる“今夜はブギーバック”、果ては初音ミクまで、「ベース」「ベースライン」を歌う名曲たちが次々にカット・アップされるオープニングSEに、ワタナベイビーと小宮山雄飛、そして田中元尚(Dr.)、堀内順也(G.)、真城めぐみ(Cho.)らお馴染みのサポート・メンバーが、「BOSE」のロゴに酷似したデザインの「BASS」Tシャツを揃って着用し、姿を見せた。

序盤は、この顔ぶれでベイビーが自らベースを演奏し、歌う“恋する年頃”からの数曲でウォーミング・アップというところ。「今日は、皆さんがお客さんではありません! ホスト/ホステスとして、お客様であるベーシストを盛り上げてください! やってみると分かるけど、ベーシストは大変。まず、来るだけで重い(笑)。来ただけで偉いから、ベーシストは!」とベイビー。自らが用意した、ベーシスト用のお立ち台に乗り上がって煽り立てる。で、後に「わりと玄人ウケがいい」という話題も出ていたけど、ベイビーのベース・プレイが良いのである。ユウヒの歌う“summer time POP!”をぐいぐいと牽引し、“はじまりの恋”ではうねりまくるショルダー・キーボードのフレーズと絡んでみせていた。

ホフディラン @ 新代田FEVER
さて、一人目のお客様ベーシストは、昨年に引き続き登場となった、ニット帽に星条旗シャツのチャットモンチー・福岡晃子だ。さっそく“マナマナ”の“マイ・シャローナ”風ベース・イントロが鮮烈で、今回のイベントが何たるかを教えてくれる。最近はとんと(ベースを)弾いてない、というあっこに、ユウヒが「元尚さんが倒れたときはドラム祭りで」と、期待していいのかどうなのか判断に困る言葉を投げ掛ける一幕も。そして、あっこが「行きますよー!」と景気よく4カウントを放ってからの“どうしてわかってくれないの?”もプレイされる。

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続いて登場したのは、ウエノコウジ。途端にステージ上の「男前度」が跳ね上がる絵面である。なのに、そんなウエノに委ねられるナンバーは“サッポロちゃん”という、観ている側としては爆笑だけれど、悪意しか感じられないチャーミングな選曲。ウエノ自ら「一応、コワモテな感じでやってるからさ」と露骨に困り顔を見せている。でも、ウエノはしっかり黒ラベルの500ml缶を呷りながら登場するというサーヴィス精神を見せていて(自腹で用意して来たらしい)、まんざらでもなさそう。飲み干された後の空き缶は、ベイビーが勝手にオーディエンスにプレゼントしていた。ストレンジな高揚感の中でウエノの喧嘩腰ベースが支える“マッドマン”は、実にスリリングな熱演であった。

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POLYSICSのフミは、バイザーにオレンジのツナギという「正装」で登場。敢えて彼女に“遠距離恋愛は続く”のウキウキ・ポップなグルーヴを委ねるという展開である。ブレイク部では「知り合って長いけど、それまでは会釈だけで、初めて話しかけたのは昨年の9月でした!」というベイビーの告白が挟み込まれる。TOISU!コールも繰り出され、「フミちゃんがPOLYSICSの格好をしてくれてるし、POLYSICSっぽい曲をやろう……いや、俺らの中では、だよ?」とユウヒが前置きして披露されたのは“SUPER DRY”だ。どうも、ゲストのキャラクターにフィットする曲より、意外性をぶつけるような選曲が優先されている気がしてならず、それもこのイベントの面白いところだ。

ホフディラン @ 新代田FEVER
フロアの盛り上がりに負けず劣らず、楽屋は宴会状態で盛り上がっているらしく、ときどき声が漏れ聴こえる。気になって仕方がないベイビーとユウヒ。そこでステージに招かれたのが、Curly Giraffeこと高桑圭だ。「今日は呑んじゃってま〜す♪」と赤ら顔でご機嫌である。RISING SUN ROCK FESTIVALで共演したときの話題として、「丸の内のOLが北海道に来たみたいな、いい年頃の女性たちの、わお〜ん……ていう色っぽい感じの歓声が聴こえた」とベイビーが語る。「うちとは違って……いや、いいや」とか余計なことまで言うから非難囂々だったが、そんな客層とリアクションへの憧れも込みでセレクトされたナンバーは“ふさわしい人”と“ドライブ”。どちらも高桑の艶かしいベース・プレイが映える、アダルトな名演であった。

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「次はすごいよ。みんなが、若手ではあいつがナンバー1だからって薦めるんだ。これがベースだってところを見せて貰いましょう!」と呼び込まれるのは、OKAMOTO'Sからハマ・オカモトだ。たっぷりプレッシャーを浴びせかけられ、「順番がおかしいんですよー」と愚痴を零しながら始まったのだが、サイケなビート・ポップの“HAPPY”は高速フレーズが飛び回り、お立ち台の上での正確無比で力強いスラップ・ショットを駆使したソロも盛り込まれる。OKAMOTO'S本体では、縁の下の力持ちといった役回りに徹しているところもあるから、これだけ思うさま実力を開けっぴろげにするハマ・オカモトというのはやっぱり貴重だ。なんといっても、“スマイル”を任されるところに、彼への信頼度が窺える。ああ、ビートルズのサイケ・グルーヴには、ポールの動き回るベースが必要不可欠だったんだなと、そんなことまで連想してしまう素晴らしい一幕であった。

ホフディラン @ 新代田FEVER
ベイビーが再びベースを抱えて歌う“デイドリームビリーバー”のカヴァーを挟み込み、最後のゲストとして姿を見せたのは、盟友・フラワーカンパニーズからグレートマエカワだ。「見て見て!」と、昔ファッション誌の取材で作ってもらったという、お蔵出しのレザー・オーバーオールを身に纏ってゴージャスである。「素肌に皮。レザー・オン・レザー(笑)」と話題を攫い、“怒りの弱者”、そして“JAILHOUSE ROCK”のカヴァーと、ホットなロックンロール・ナンバー連打のクライマックスを形作ってゆく。フラカン“真冬の盆踊り”のヨサホイ・コールも絡め、「使っていないオーバーオールが残っている限り、『春のベースまつり』に出るよ!」「あと10年は出来るな! その間にまた買うしね」とやりあいながら、ユウヒのラップが弾ける“FREE STYLER”までの本編を駆け抜けるのだった。

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「いやあ、楽しかったねえ。帰ったら楽屋があんなに盛り上がってるとは思わなかった」とユウヒが切り出すアンコール。「実はもうひとり、ベーシストが来てます」とここで迎え入れられたのが、満を持して登場のキタダマキである。久々にレギュラーのライヴ・メンバーが揃ったホフで、キタダ・コールを巻き起こしつつ、盤石のアンサンブルを繰り広げる。最後の最後に、この顔ぶれで届けられたのが“ホフディランのテーマ”だから、余計にグッときてしまった。出演者全員が「BASS」Tシャツを着て揃い踏みの挨拶では、グレートがちゃっかりウエノのレザー・ジャケットを拝借したコーディネート。ホフの演奏に次々と異なる息遣いが吹き込まれ、そして名ベーシストたちもホフの曲を通してその実力を披露するという、ライヴならではの貴重な体験が目白押しの一夜だった。(小池宏和)

01. 恋する年頃 /ベース:ワタナベイビー
02. summer time POP! /ベース:ワタナベイビー
03. はじまりの恋 /ベース:ワタナベイビー
04. マナマナ /ベース:福岡晃子(チャットモンチー)
05. どうしてわかってくれないの? /ベース:福岡晃子(チャットモンチー)
06. サッポロちゃん /ベース:ウエノコウジ
07. MY THING /ベース:ウエノコウジ
08. マッドマン /ベース:ウエノコウジ
09. 遠距離恋愛は続く /ベース:フミ(POLYSICS)
10. SUPER DRY /ベース:フミ(POLYSICS)
11. ふさわしい人 /ベース:高桑圭(Curly Giraffe)
12. ドライブ /ベース:高桑圭(Curly Giraffe)
13. HAPPY /ベース:ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)
14. コジコジ銀座 /ベース:ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)
15. スマイル /ベース:ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)
16. デイ・ドリーム・ビリーバー /ベース:ワタナベイビー
17. 怒りの弱者 /ベース:グレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)
18. JAILHOUSE ROCK /ベース:グレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)
19. FREE STYLER /ベース:グレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)

encore
01. LOW POWER /ベース:キタダマキ
02. TO THE WORLD /ベース:キタダマキ
03. ホフディランのテーマ /ベース:キタダマキ
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